インフルエンザのシーズンがやってきましたね。
皆さん今シーズンの予防接種は受診されましたでしょうか。
今シーズンのワクチンは、事情により製造が遅れていて、現時点でのワクチン本数が不足しています。
大事な催しを控えている方などは、なるべく早めに医療機関で受けましょう。
今回は、2017年-2018年の今シーズンのインフルエンザの動向と、ワクチン接種状況などをご紹介します。
目次
ワクチン不足問題
まずは今シーズンのワクチン不足問題から。
厚労省、ワクチンの有効接種を呼び掛け
現在、医療機関ではインフルエンザのワクチンが不足している状況です。
予約が取りにくい、ワクチン不足から予防接種を一時中止している、集団接種を予定していたが延期になったなど、何かしらの問題に直面されていませんか?
ワクチン不足の事態は、10月初旬には、各メディアで話題になりました。
厚生労働省でも、ワクチン不足から、今シーズンは特に、
- 13 歳以上の者が接種を受ける場合には、医師が特に必要と認める場合を除き「1回注射」であることを周知徹底すること
- 昨シーズン以上にワクチンの効率的な活用を徹底すること
ということで、ワクチンを必要量を厳守して効率的に接種しましょうねということを呼び掛けています。
13歳以上は基本1回接種で十分に免疫がつきます。
13歳未満の子供が2回接種である理由は、体が小さいことから、1度に接種できる量が少ないという理由からです。
接種したからといって、100%かからないとは限りません。
それでも、免疫の弱い子供や高齢者などの発症が少しでも阻止でき、かかっても重症化するのを抑えることができたなら、インフルエンザを引き金に肺炎なり死亡するケースや、集団発生の抑制にもつながりますよね。
どこぞのウェブサイトで、「インフルエンザワクチンは打つべき?」とか「医師は受けない」とかいうのがごっそりと出てきます。
一体どちらの極端なケースのみを取り上げて誇張されているかわかりませんが…
いやいや、受けましょう。
もちろん、罹っている病気の種類や、接種前に発熱しているなどの症状がある人は受けられませんが。
副反応が不安という声も聞きますが、他の数ある予防接種においても、任意接種・定期接種の別なく、それぞれ副反応が0%ではありません。
というわけで、今シーズンはワクチンを余分に打たず必要量しっかり守って受診しましょうと注意がでるほど、例年と比べてワクチン本数が減っているというわけでした。
ワクチン不足の理由は
その理由は、ワクチンを製造する業者さんが、途中で製造に失敗したからです。
各ニュース記事では、
「ワクチンに使うウイルス株を選び直し、生産が遅れた。」
とのことですが、その背景は”選んだ株の培養に失敗”というわけです。
インフルエンザのワクチンは、毎年同じものを製造しているわけではありません。
そのシーズンによって流行が予想されているウイルスの型が異なるため、同じ場合もあれば異なる場合もあります。
インフルエンザA型とか、B型とか、新種の型が発見された年は”新型”と呼んでいますよね。
これが”型”。
詳しくはこちらの記事をどうぞ。
この”型”が”ワクチン株”と呼ばれるもので、ワクチンは”ワクチン株”を組み合わせて作られているのです。
毎年流行するだろうと予想されている型は、5月~7月初旬をめどに世界中の流行状況などから検討され、厚生労働省より発表されます。
こんな通達がでるわけです。
出典:厚生労働省通達 平成29年度インフルエンザHAワクチン製造株の決定について(通知)
今シーズンは、
- A/シンガポール/GP1908/2015 (IVR-180) (H1N1)pdm09
- A/香港/4801/2014 (X-263) (H3N2)
- B/プーケット/3073/2013(山形系統)
- B/テキサス/2/2013(ビクトリア系統)
です。
何を言ってるのかわからない、暗号にしか見えない方、名称について詳しくはこちらの記事をどうぞ。
ワクチンの需要と供給
毎年11月下旬ごろには、ワクチンの不足が騒がれます。
それなら本数を増やせばいいじゃない、そう思われている方も多いとは思いますが。
なぜ本数を増やさないのか??
その理由は、ワクチンが生ものであり、そのシーズン限りしか使えないものだから。
作りすぎると余ってしまって、それらは全て廃棄となってしまい、その分に費やした製造コストが無駄になるわけです。
こちらは、29年7月現在のインフルエンザワクチンの製造量と使用量をグラフ化したものです。
水色の棒グラフがそのシーズンのワクチンの製造本数、赤の折れ線グラフがシーズン中の使用量です。
出典:厚生労働省通達:季節性インフルエンザワクチンの供給について
グラフをみてもわかるかと思いますが、ワクチンが不足している!と言われていたって、需要が供給を上回って本当に接種できない人が続出という事態にはなっていないのです。
とはいえ、今シーズンは、昨年の供給量に比べると少ないですよね。
無駄遣いなく効率よく接種すれば足りなくはならないはずではあるとのこと。
ワクチンができるまで
ワクチンの製造量を増やすのは簡単ではありません。
なぜかというと、単純に製造に時間がかかるから。
毎年型が異なるのと、前もって作っておけないのが最大の理由ですが、もう1点は、製造日から未開封の状態で15か月(インフルエンザワクチンHAの場合)とされているから。
順を追って考えると…
わかりやすくその工程については下図をごらんください。
こちらは、新型ウイルス発見後のワクチン製造までのおおまかなスケジュールです。
出典:厚生労働省
新種のウイルスが見つかってからワクチン株の検証を経て、毎年、流行する型が5月~7月初旬に決定されます。
季節性のインフルエンザの場合は、新型と異なり、ワクチン株の検証期間はやや短くなります。
それから、ワクチンの製造会社が製造工程に入ります。
ワクチンが製造されたら、そのワクチンに問題がないかどうか、念入りにチェックされた後出荷される運びになります。
季節性インフルエンザワクチンの場合、その工程は、このスケジュール感では約4か月でしょうか。
今シーズン、ワクチン株が発表されたのが7月頭。
ちょっと遅かった上に、一部製造に失敗…
さまざまなトラブルがありましたが、毎年10月初旬ごろから各医療機関でワクチン接種の準備が整いますよね。
というわけで、10月初旬にきっちり合わせて用意できたのが最低限の本数だったというわけです。
使用期限が15か月ということで、次年度に持ち越すことはありえない。
以前、某病院にて、使用期限の切れた昨年のワクチンを200名に使用したという事件が問題となりましたが、今シーズンのワクチンは今シーズン製造分で賄うのが基本の基本。
日本は接種率が50%程度ですが、本当はそれが100%に近づいてほしいところ、急に増えてもワクチンが足りないと受けることができないわけで…
需要と供給のバランスを予測するお仕事をされる人々が一番神経を使うだろうと思います。
2017年-2018年シーズンのインフルエンザ流行状況
さてでは今シーズンの流行状況について少し。
インフルエンザの流行シーズンは毎年冬季。
よく見かける「2017年-2018年シーズン」などという表記は、「2017年の11月・12月ごろから2018年の1月・2月・3月ごろ」という意味で使われています。
さて、今シーズンの流行状況はどうなっているでしょうか。
今シーズンは各自治体のホームページを参考に
インフルエンザをはじめとする感染症の発生動向については、国立感染症研究所が全国分をまとめていて、その情報をもとに各都道府県のホームページなどで地域レベルの情報として掲載されてます。
ご参考までに、インフルエンザの流行状況がわかる情報元を。
- 国立感染症研究所 インフルエンザ流行レベルマップ
- 東京都感染症情報センター 感染所発生動向調査
- 各自治体のホームページ内の感染症情報(例:町田市ホームページ:町田市感染症週報)
私が過去に紹介してきた情報のソースは国立感染症研究所がメインでしたが、どういうわけか、2017年第22週(6月7日)時点で更新を一旦終了しますとのこと。
というわけで、全国版の流行状況一覧が閲覧できない状況です。
とはいえ、この手の専門家や研究関連の人以外、普段の生活でインフルエンザの発生動向を把握しておきたい程度でしたら、地域自治体レベルの報告が最もわかりやすく使える情報です。
だって、インフルエンザの感染は、くしゃみが届く範囲のせいぜい3~5メートル程度。
流行シーズンに遠出する場合や普段とは違う人ごみに行く場合などは、その行先の地域の流行情報を調べる必要がありますが、いつも通りの生活圏では、身近な地域レベルの情報が一番。
ここでは、東京都感染症情報センターの定点報告をとりあげてみます。
今年度の流行はこれから
まずは東京都感染症情報センターより。
ウェブサイトに行くと、このような画面が出てきて、東京都全域・各地域ごと・対象期間・比較する過去の年などを選択することで、該当するグラフを出すことができます。
下記は、2017年第43週(2017年10月23日~10月29日)を起点とした年間の発生動向の推移です。
5年間の比較として、過去5年分のグラフを重ねてみました。
出典:東京都感染症情報センター 定点報告疾病 週報告分 推移グラフ
2017年10月末、今シーズンはまだまだ序盤で、流行しているともなんともいえません。
今シーズンの流行予測
前項にも記述しましたが、今シーズンの予想は下記4つとなっています。
- A/シンガポール/GP1908/2015 (IVR-180) (H1N1)pdm09
- A/香港/4801/2014 (X-263) (H3N2)
- B/プーケット/3073/2013(山形系統)
- B/テキサス/2/2013(ビクトリア系統)
つまり、このうちのいずれかが国内で流行するだろうと予想されているわけです。
厚生労働省、国立感染症研究所などは、現時点では、このうちどの型が当たりそうだといったことは何も公表しておりません。
今後、流行が拡大するとともに、どの型が流行っているかがわかってくるわけです。
とはいっても、型が何であれ、かかないこと、かかっても重症化しないこと、感染させないことが大事です。
予想株が大きく外れない限りは、ワクチン接種による予防効果には期待できます。
日本では、インフルエンザのワクチン接種は任意で、その効果に対する疑問の声と接種費用が高いとの声がよく聞かれます。
でも、接種費用の補助などは各自治体や保険団体でありますので、上手に活用すると安く抑えられますよ。
引き続き、今シーズンの流行状況と予防接種の受診状況には目が離せませんね。
インフルエンザに関連する記事はこちらにも。
おわりに
インフルエンザへの感染は、集団感染による医療費拡大が実は裏で大きな問題です。
ワクチンによる費用対効果が高いことから、任意ながら毎年接種が推奨されている。
謎の反対論を唱えている方、「かかったことなんて一度もない」と豪語されている方、それはけっこうなことです。
感染症は、免疫の弱い状態にとってもきいてきます。
今年は仕事がきつくて身体の調子が悪いなとお感じの方、子供を生んで自分も子供も気を付けなきゃと思っている方やその祖父母など、職業柄外部の人たちとの接触が多い方などは、ワクチン接種への意識を少し強めに持っていただけたらいいのではないでしょうか。
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