まずはじめに、皆さん誤解しがちなことから訂正。
貧血は体の中の血の量そのものが足りない状態ではありません。
正確には”血液の質が低下”している状態というほうが正しいでしょう。
そして、今回のポイントは、電車でクラっとくるあの症状、貧血とは異なる脳貧血かもしれないということ。
でも、気候の変動が激しい今の時期は特に、体調の上がり下がりがある方も多いと思います。
立ちくらみや、立ち続けていて気持ち悪くなったりする方、心当たりがあるかたは必見です。
貧血かなと思われるそんな症状を改善する方法は、貧血か脳貧血かを見定めて、ピンポイントに効果のあるものを選びたいものです。
今回は、貧血の原因と種類、病院にかかる際に受ける診断基準などについてお話しし、症状や状況に応じた改善方法をご紹介します。
目次
貧血の主な原因と種類。基本知識やメカニズム
貧血と脳貧血はその原因が根本的にちがいます。
まず貧血について。
貧血とは、血液中の血色素が低下した状態のことを言います。
貧血は血液の量が不足した状態そのものを指すわけではなく、血液中の成分が足りなくなっている状態のことを呼ぶのです。
一方、脳貧血とは、たとえば血液検査をしたとしても血液中の成分に異常はありません。
つまり、血液の質が落ちる「貧血」ではないのです。
原因は、自律神経のバランスが崩れたり低血圧など。
だから、そんな時に鉄分をがんばって補ったところで改善はみられないのです。
ではまず、貧血とはいったいどんな状態のことを指すのでしょうか。
貧血とヘモグロビン
貧血とは、血液中の血色素が低下した状態で血色素とはヘモグロビンのこと。
ヘモグロビンは健康診断で検査される項目「ヘモグロビンA1c(HbA1c)」でおなじみの方も多いでしょう。
血液は、体中をめぐって、生きる(=体の各器官を動かす)のに必要な酸素やホルモンなんかを運んだり、不要になった老廃物を回収するはたらきをします。
血液は血漿(けっしょう)と血球という成分からできていて、このうちの血球は、赤血球とか白血球とか血小板なんかによってできています。
ヘモグロビンは、血液の中の赤血球の中の成分の1つで、酸素を全身に運ぶのが仕事。
具体的には、酸素とくっついて血液の中を流れ、各器官で不要になった炭酸ガス(二酸化炭素)とくっついてさらに流れて肺に持って帰るという働きをします。
ちなみに、持って帰った不要な炭酸ガスは、おならとかゲップになって体外に出ていくことになります。
そんなヘモグロビン、検査で出てくるのはヘモグロビンA1c(Hemoglobin A1c)ですが、このA1cとは、簡単にいうと、いくつかあるヘモグロビンの分類の1つで、一番成分が多いものです。
健康診断の血液検査では、成分の最も多いヘモグロビンA1cの量を測っていて、健康状態を判断しているのです。
さて、最初に戻りましょう。
貧血とは、このヘモグロビンの量が正常の量よりも減った状態を指します。
ヘモグロビンのお仕事である酸素運搬の仕事量は、ヘモグロビンの量にほぼ比例します。
だから、ヘモグロビンが減るということは、酸素が脳や身体の器官に十分に行きわたらない状態になってしまうということなのです。
つまり、貧血を正しく理解するためのわかりやすい表現は「酸素不足」といえるでしょう。
よくある貧血の分類
この酸素不足になった状態を貧血とよびますが、酸素不足になった原因は赤血球の大きさによって貧血の種類はわけられています。
ちょっと調べた時に出てくる”貧血の種類”は、赤血球の大きさによって分類されたものです。
ウェブサイトによって紹介している種類は異なるのですが、主なものはこちらでしょうか。
- 鉄欠乏性貧血
- 再生不良性貧血
- 悪性貧血
- 溶血性貧血
鉄欠乏性貧血
貧血のうち一番多いのが鉄欠乏性貧血。
統計上の最新の数値を見つけることができませんでしたが、貧血患者のうちおよそ7割がこの鉄欠乏性貧血だそうです。
貧血はヘモグロビンの量が少なくなること。
ヘモグロビンは鉄を主食に作られるものなので、体の中の鉄分が不足するために起こるのが鉄欠乏性貧血です。
無理なダイエットとか、女性の場合は生理だとか妊娠だとか、そういうのも原因になってきます。
再生不良性貧血
再生不良性貧血とは、難病の1つに数えられる病気で、骨髄に何等かの問題が起きて血液そのものを作る能力が低下してしまうもの。
悪性貧血
悪性貧血とは、赤血球をつくるのに必要なビタミンB12が足りなくなることが原因の貧血です。
ビタミンB12はビタミンB群のうちの1つで、身体の中で作られるので、普通は不足することはないと考えられています。
でも、作られる場所である胃を手術で摘出した場合には、当然ですが不足してしまう栄養素です。
溶血性貧血
溶血性貧血とは、赤血球が、新しくつくられるスピードよりも速くに破壊されてしまって赤血球の量が減ってしまうことが原因の貧血です。
この破壊されることを”溶血”とよびます。
と、これらがよく紹介される貧血の種類です。
多くの場合が、鉄欠乏性貧血に該当するので、特に女性は鉄分を多く摂りましょうとよく言われますよね。
もし病院に行った際も、治療方法は食事療法がベースになってきます。
正式な貧血の分類と診断
ここまでが、病院やクリニック・製薬会社のウェブサイトでよく紹介される貧血の種類。
だいたい貧血の分類を知りたければこのくらいが頭に入っていればいいでしょう。
なぜかというと、どの貧血かを診断する方法は自己診断はできず「血液検査」が必須になるのだから…。
でも今は、団体にもよると思いますが、健康診断を実施されている組織が多い時期ではないでしょうか。
健康診断で血液検査もするでしょう?
その結果から、「再検査」になった方は、血液に関する病気かもしれないから、さらに細かい検査をしてくださいねということを意味します。
一般的な健康診断でおこなう血液検査でわかることはこのあとご紹介しますね。
まずは、血液検査によってわかる貧血の種類について。
貧血の分類は、赤血球の大きさによってわけられ、この分け方が割と医療従事者の間では一般的です。
こちらの医学雑誌に掲載されたアルゴリズムがわかりやすかったのでご覧ください。
出典:成田 美和子: 貧血の分類と診断の進め方. 日本内科学会雑誌第104巻第7号, 1375-1382
まず、医師は貧血か否かをヘモグロビンの値で判断します。
で、正常の値よりも少ない場合は「貧血」と判断。上のアルゴリズムは貧血と判断されてからさらに分類するための方法です。
最初にチェックされるのが白血球と血小板。
いずれも、正常の値より低い(血液中の量が少ない)場合は、骨髄に問題がある疾患である疑いがでてきます。
そうでない場合は、さらに網赤血球(もうせっけっきゅう)と呼ばれる値を読みます。
調べてみると何やら小難しい説明がされますが、網赤血球とは、産まれたばかりの若い赤血球のこと。
たくさん産まれているなら、その原因はもしかしたら、既にある赤血球がどんどん破壊されているからかもしれない。
逆に減っているなら、単純に赤血球を作る働きが何等かの原因で低下していると判断できます。
平均赤血球の容積とは、赤血球の大きさです。
大きさによって、貧血の種類が、
- 大球性低色素性貧血
- 正球性正色素性貧血
- 小球性正色素性貧血(小球性高色素性貧血)
この3つにわかれます。
わけわからん名前ですが、赤血球の大きさで3つにわかれてるという理解だけでけっこうです。
念のため補足。
平均赤血球の容積とは
- 「大球性」は赤血球の大きさが大きい。
- 「正球性」は正常の大きさ。
- 「小球性」は小さい
ということ。
- 「低色素性」は色素量が少ない(=低い値)
という意味です。
色素とは、血液検査の値でいうMCHの値のことで、平均赤血球血色素量を現します。
これなにかというと、赤血球1個に含まれるヘモグロビンの量です。
そして、それぞれに該当する貧血がこちら。
- 大球性高~正色素性貧血:ビタミンB12・葉酸欠乏による巨赤芽球性貧血、肝障害に伴う貧血、骨髄異形成症候群の一部
- 正球性正色素性貧血:溶血性貧血、急性出血、白血病、再生不良性貧血、腎性貧血、症候性貧血
- 小球性低色素性貧血:鉄欠乏性貧血、サラセミア、鉄芽球性貧血
いろいろありますよね。
ご存じの方も多い白血病も血液の病気というわけですね。
さきほどご紹介した、主な貧血のうち一番多い「鉄欠乏性貧血」は、小球性低色素性貧血に分類されます。
鉄分が足りない、つまり赤血球が足りない、結果、
赤血球の大きさも小さいし、赤血球1個に含まれているヘモグロビンだって少ない
そういうことです。
さて、ここまでが、一般的な健康診断の血液検査のうちの貧血検査でわかること。
ここまでわかった段階で、「この病気の疑いがあるから、再検査しましょうね」となるわけです。
再検査のアルゴリズムも、気になるという方は、こちらの学術記事よりご覧ください。
成田 美和子: 貧血の分類と診断の進め方. 日本内科学会雑誌第104巻第7号, 1375-1382
ついでに、原因別による貧血の分類も軽くご紹介しましょう。
専門用語がありすぎて読めないという方はスルーでけっこうです。
出典:成田 美和子: 貧血の分類と診断の進め方. 日本内科学会雑誌第104巻第7号, 1375-1382
要するに、血液のどの部分の異常によって起こっている貧血なのかということです。
ものすごくかみ砕くと、
- 先天性のものなのか後天的なものなのか
- 血液を作る機能自体の問題なのか
- 赤血球を作る成分になる途中段階の細胞の問題なのか
- 赤血球を作る成分自体の問題なのか
- 赤血球ではない免疫や破壊や感染症なんかの問題なのか
これらによって分類されてきます。
もちろんこれは、ちゃんと検査しないとわかりません。
血液検査でみる項目
どこで調べても一緒ですが念のため。
本文内に検査に使う専門用語をちりばめてしまい、かつ「正常値」と「異常値」をお知らせしておりませんでしたので、こちらでご参考に。
赤血球(RBC)
赤血球は肺で取り入れた酸素を全身に運び、不要となった二酸化炭素を回収して肺へ送る役目を担っています。
赤血球の数が多すぎれば多血症、少なすぎれば貧血が疑われます。
血色素(Hb)(ヘモグロビン)
血色素とは、赤血球に含めれるたんぱく質で、酸素を運ぶ仕事をします。
この値が減少していると、鉄欠乏性貧血が疑われます。
値の基準はこちらです。
(単位 g/dL) | 異常 | 要注意 | 基準範囲 | 要注意 | 異常 |
---|---|---|---|---|---|
男性の血色素 | 12.0以下 | 12.1-13.0 | 13.1-16.3 | 16.4-18.0 | 18.1以上 |
女性の血色素 | 11.0以下 | 11.1-12.0 | 12.1-14.5 | 14.6-16.0 | 16.1以上 |
なお、今回は貧血について取り上げているためスルーしがちですが、血色素の値が逆に高い場合も多血症という病気の疑いが出てくるので要注意です。
ヘマトクリット(Ht)
血液全体に含まれる赤血球の量(割合)のことをヘマトクリットといいます。
この数値が低いと鉄欠乏性貧血が疑われますし、高いと多血症や脱水などが疑われます。
MCV・MCH・MCHC
- MCVは赤血球の大きさ(体積)
- MCHは赤血球に含まれる血色素量
- MCHCは赤血球の体積に対する血色素量の割合
MCVの値が高いと
[list class="li-check li-mainbdr main-c-before"]- ビタミンB12欠乏性貧血
- 葉酸欠乏性貧血
- 過剰飲酒
が疑われます。
逆に低いと、鉄欠乏性貧血、慢性炎症にともなう貧血が疑われます。
白血球(WBC)
白血球は、白血病という病名から、「人の身体によくないもの」とイメージしている方もいらっしゃるかもしれません。
でもそれは逆。
白血球は、細菌やウイルスなどから体を守る役割をもっていて免疫機能の1つです。
この白血球の値が高い時というのは
- 細菌感染症にかかっている
- 体のどこかで炎症がおきている
- 腫瘍がある
ことが疑われます。
また、たばこを吸っている人も高値となります。
逆に、値が低い(=白血球数が少ない)場合は、
- ウイルス感染症
- 薬物アレルギー
- 再生不良性貧血
などが疑われます。
基準値はこちら。(単位 103/μL)
異常 | 基準範囲 | 要注意 | 異常 |
---|---|---|---|
3.0以下 | 3.1~8.4 | 8.5~9.9 | 10.0以上 |
体調が悪く、医者にかかった時に感染症が疑われた場合、簡易な血液検査をすると思います。
これでわかるのが”炎症反応”。
白血球数でウイルスによるものか細菌によるものかを数値で判断して、適切な薬を処方しているのです。
血小板数(PLT)
血小板は、怪我をした時などに出血すると、出血し続けないように傷口を塞いで止めるはたらきをします。
傷口は時間が経つとかさぶたができていて血は止まりますよね。
あれのこと。
数値が高いと血小板血症、鉄欠乏性貧血などが疑われ、低いと再生不良性貧血、特発性血小板減少性紫斑病、肝硬変などが疑われます。
こちらが基準値です。(単位 104/μL)
異常 | 要注意 | 基準範囲 | 要注意 | 異常 |
---|---|---|---|---|
9.9以下 | 10.0~14.4 | 14.5~32.9 | 33.0~39.9 | 40.0以上 |
いずれの検査値も、今時の健康診断の結果シートには、ちゃんと読み方が書いてありますし、受診した医療機関や担当者に聞けば教えてもらえます。
ここでは、何だか意味がわからなかった血液検査の項目や値も、その値の高さや低さで、いろいろな病気の疑いがわかってくるということを知っていただければOKだと思います。
脳貧血とは?基本知識とメカニズム
さて、ここまで貧血についてお話ししてきましたが、お次は脳貧血について。
同じく”貧血”という名でまぎらわしいのですが、医学的には全く別物。
症状だけみると似ているので、わかりやすく「貧血」と呼んでしまっていますが、メカニズムも治療方法も全くちがうので注意が必要です。
脳貧血の正式名称は起立性低血圧
「脳貧血」自体が正式名称ではありません。
正しくは、起立性低血圧といって、自律神経にかかわる症状が出ている状態のことをさします。
自律神経は、簡単に表現すると、がんばる時と休む時の身体のスイッチを切り替えるのが役割で、そのスイッチというのが、交感神経・副交感神経というわけ。
自律神経のはたらきについては、こちらの記事でもご紹介していますのでご参考に。
この自律神経(交感神経と副交感神経)のバランスが崩れると、だるいとか眠いとか頭痛だとか、そんなちょっとした症状から精神疾患の原因になることまでさまざまな病気にかかってしまいます。
起立性低血圧(=脳貧血)は、それらの不調のうちの1つで、
- 立ちっぱなしで具合が悪くなる
- 急に立ち上がってくらっとする立ちくらみ
こんな症状が特徴です。
電車でよくあるあのクラクラは、たいていの場合がこの起立性低血圧。
この症状は、さきほどご紹介したふつうの貧血ではありませんので、たとえば血液をなんとかしようと鉄分を摂っても改善しません。
起立性低血圧の症状と診断
起立性低血圧は、貧血を起こしている人もなりやすく混同しがちです。
が、問題は血液そのものではなく血圧。
急に立ったり、立ちっぱなしで血液が足元に溜まってしまうことで血圧が急に低下するのが原因ですよね。
だから、起立性低血圧の診断は、立ち上がった直後に血圧を測定するというもの。
具体的な数値がこちらです。
立位後3分以内に、下記のいずれかがみられたときに起立性低血圧だと診断することになっています。
- 収縮期血圧が20mmHg以上低下
- 収縮期血圧の絶対値が90mmHg未満に低下
- 拡張期血圧が10mmHg以上の低下
収縮期血圧とは上の血圧、拡張期血圧とは下の血圧です。
通常、血圧を測ると2つ数値が出てきますが、血圧の読み方は、この2つの血圧の数値が基準値の範囲内にあるか否か。
基準値はこちらです。
表の中の黄緑色の部分が「正常」「問題ない」と判断できる数値になります。
出典:日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン作成委員会 一般向け「高血圧治療ガイドライン」解説冊子
つまり、「問題なし」とされる血圧が、
- 至適血圧:上120未満かつ下80未満
- 正常血圧:上120~129かつ・または下80~84
- 正常高値血圧:上130~139かつ・または下85~89
このようになっていて、「高血圧」はそれぞれの数値がこれより大きい場合。
低血圧は逆ですが、起立性低血圧の場合は、起立した前後の血圧を比べてその差が先ほどの「低下」の数値です。
ちなみに、至適血圧(してきけつあつ)とは、理想の適した血圧という意味です。
血圧を測定し、さらに症状として、
- 意識の遠のき
- ふらつき
- めまい
- 錯乱
- 霧視
こんなものなどが、起立した後数秒から数分以内に起これば、間違いなく起立性低血圧ですねと診断されます。
ただ、横になったり体勢をかえたりして、血液が滞りなく流れるように促すことでそれらの症状がケロリと治ります。
たちくらみをご経験の方はそうでしょう。
私もよくなりますが、グルグルと頭が回転するような感覚で「あーーーきもちわるい」と一種の酔ったような感覚でその場でフリーズ。
しばらくすると症状はおさまります。
もちろん、ひどい場合はその場に倒れてしまったり失神してしまったりする方もいるので、この後あげる原因として当てはまる方は普段から、急に立ち上がらないとか、長時間立ちっぱなしになる環境は避けるとか、何等かの予防策が必要でしょう。
よく電車で「具合が悪くなった方の救護をしたため遅れております」とかいうことがあります。
全部が全部そうではないと思いますが、満員電車での立ちっぱなしによる起立性低血圧が原因の不調が多いのではないかと、統計はないもののほぼほぼ確信しています。
鉄道会社的には、「(遅延すると大変なんだから)、具合が悪くなったお客様は、無理をせず係員に申し出て(電車を止めなくてもいいように自己管理して)ください」というのが心の声でしょう。
くりかえしになりますが、起立性低血圧の原因は電車の場合「立ちっぱなし」によるものなのですから、一過性のものじゃありません。
わかりやすくいうと、我慢してたって改善しません。
だから、倒れるまで我慢して立っていないで、その場に座り込んでいいですし、途中駅で降りて少し座って休むなりしてくださいね。
起立性低血圧の原因
起立性低血圧になる原因には、急性のものと慢性のものとにざっくりわかれます。
本当は、起立性低血圧の中にも細かく原因によって種類がわかれてきますが、それはここではスルーでいいでしょう。
まずは急性の場合の原因で多い者からご紹介しましょう。
- 循環血液量減少
- 薬物
- 長期臥床(ちょうきがしょう)
- 副腎機能不全(ふくじんきのうふぜん)
循環血液量減少
循環血液量減少とは、そのままの意味です。
女性の場合は月経や、ケガをした時に出血が多かったり、血液の量そのものが減る場合のことを指します。
薬物
薬も原因になりえます。
たとえば、抗うつ薬や利尿薬、狭心症なんかの薬である硝酸薬なんかが該当します。
長期臥床(ちょうきがしょう)
長期臥床とは、長期間臥床するというそのままの意味ですが、臥床(がしょう)とは、例えば入院などでベッドに横になった状態のことを医学的な言葉でこう呼びます。
長期臥床は、寝たきりになることも少なくなく、そういう問題も抱えているものですが、今回は起立性低血圧の原因の1つとしてのご紹介でした。
副腎機能不全(ふくじんきのうふぜん)
そして副腎機能不全ですが、これは副腎(ふくじん)の働きに不調があるというもの。
副腎は
- 血圧を調整する
- ホルモンの分泌量を調整する
- 自律神経のバランスを整える
- 尿をつくったり老廃物を捨てる
とか、そんなような役割があります。
血圧に影響する機能が不調になるということは、そりゃ起立性低血圧の原因になることはご理解いただけるでしょう。
つづいて、慢性の起立性低血圧の原因で最も頻度の高いものについては下記3つをあげましょう。
- 加齢に伴う血圧調節の変化
- 薬物
- 自律神経機能障害
加齢はご説明なくともご納得いただけるかと。
薬は先ほどと同様。
自律神経の働きに不調があることも、先ほどのお話しから原因としてご納得いただけると思います。
さらに詳しく知りたい方のために、専門文献に掲載されている原因一覧を下記に転記しました。
専門用語はそれぞれ調べてくださいね。
特発性自律神経障害
- 純粋自律神経失調(Bradbury-Eggleston 症候群)
- 多系統萎縮(Shy-Drager 症候群)
- 自律神経障害を伴う Parkinson 病
二次性自律神経障害
- 加齢
- 自己免疫疾患
- Guillain-Barre 症候群、混合性結合組織病、関節リウマチ、Eaton-Lambert 症候群、SLE
- 腫瘍性自律神経ニューロパチー
- Central brain lesions 多発性硬化症、ウェルニッケ脳症、視床下部や中脳の血管病変、腫瘍
- Dopamine beta-hydroxylase 欠乏症
- Familial hyperbradykinism
- 全身性疾患、糖尿病、アミロイドーシス、アルコール中毒、腎不全
- 遺伝性感覚性ニューロパチー
- 神経系感染症(HIV 感染症、シャガース病、ボツリヌス中毒、梅毒)
- 代謝性疾患(ビタミン B12 欠乏症、ポルフィリン症、ファブリー病、タンジール病)
- 脊髄病変
薬剤性及び脱水症性
- 利尿薬
- α遮断薬
- 中枢性α2 受容体刺激薬
- ACE 阻害薬
- 抗うつ薬(三環系抗うつ薬、セロトニン阻害薬)
- アルコール
- 節遮断薬
- 精神神経作用薬剤(Haloperidol、levomepramazine、chlorpromazine 等)
- 硝酸薬
- β遮断薬
- Ca 拮抗薬
- その他(Papaverine 等)
出典:河野 律子:起立性低血圧. 昭和医会誌 第71巻 第 6 号〔 523-529 頁,2011 〕
貧血・脳貧血(起立性低血圧)の治療・すぐできる改善方法
ここまでで貧血・脳貧血の違いがよくわかったと思いますので、それぞれの治療法をご紹介します。
貧血の治療法
貧血といっても、原因によって種類がさまざまですが、最も多いのが鉄欠乏性貧血。
その他の病気が原因だったりする場合は、その病気へのアプローチが必要ですが、鉄欠乏性貧血に関しては、基本的に病院に行くと、食事療法と薬を飲んでの治療がベースになってきます。
自分でできる改善方法は…と言いたいところですが、貧血の診断自体が病院に行って採血してはじめてわかってくることなので、検査結果の数値から貧血の状態と原因とを相談しつつ、的確な治療をはじめていくことになるでしょう。
とはいえ、共通してくる食事療法は、なんといっても鉄分の補給。
具体的には、ヘム鉄が含まれている食材とか、血液を作るための葉酸とかビタミンB12なんかがピンポイントになってきます。
逆に、コーヒーとか牛乳を飲みすぎるとかも逆効果なのでご注意ください。
もしも貧血になったなら、身体が欲するもの以外の食品は、そもそも「食べる気が起きない」ように体の本能が働きます。
だから、気が向かない・食べたくないなと思うものは基本「その症状の改善には向かない」食品だと思えばいいでしょう。
- 3食欠かさずバランスよく食べること
- 消化吸収をよくするために胃の状態を良くする
つまり健康な生活をしましょうということです。
脳貧血(起立性低血圧)の治療法
起立性低血圧は、症状が軽度の場合から重たい場合まで人によってさまざまです。
だから、医療者向けのガイドラインでは、その段階に応じたアプローチを行うよう書かれています。
アプローチは次の1~4段階。
- 原因の除去
- 生活指導
- 薬物療法
- その他の対処法
原因の除去とは、具体的には、起立性低血圧を起こしやすい薬を見直すこと。
そして生活指導では
- 急な立ち上がりを控える
- 誘因になりやすいアルコールを控える
- 脱水にも注意する
- 食べ過ぎにも注意する
このようなことを教わります。
ここまでのアプローチでも症状が改善しない時は、次のステップ、薬物療法へ。
それでもダメな時は、まだ確実な治療法とはいえないけど試してみることができる!レベルの方法が用いられることになります。
ステップ1から3までは、症状の段階で、ガイドラインのことばでいうクラスⅠ・クラスⅡが該当してきます。
具体的なクラスⅠ・クラスⅡのアプローチはこちらの表をごらんください。
出典:河野 律子:起立性低血圧. 昭和医会誌 第71巻 第 6 号〔 523-529 頁,2011 〕
と、病院に行った時の治療方法はこのようなかんじですが、軽い症状の場合、私もそうですが、わざわざ病院に行かない方が多いのではないでしょうか。
そんな方へ、自分ですぐできる改善方法と予防方法をご紹介しましょう。
症状が出た時はぜひ試してみてください。
症状が出た際の改善方法
- できれば横になって、頭の位置を足よりも下げる *場所がないときは、座って頭を下げ、膝を抱えるような姿勢になる
- 身体を締めつけているものがあれば緩める(ベルト・ブラジャー・服のボタン・靴・靴下…)
- 冷汗をかいたり手先が冷たくなるので、上着や毛布で温める
- 突然倒れてしまったら、怪我がないかチェックする
- 意識がしっかりしていても、体調が落ち着くまで動かない
今すぐできる予防方法
- 急に起き上がったり、急に立ち上がったりせず、起立の動作はゆっくりと
- 適度な運動・ウォーキングを意識してみる(特に下半身の強化)
- 朝食をきちんと食べて、水分も十分にとるようにする
- 過食は避けるようにして、適正体重を守る
- お風呂はぬるめ・ゆっくりとつかる
- 睡眠を十分にとる
- 便秘や下痢に気をつける
電車でクラっと、立ち上がりにめまいが辛いなど、症状に悩まされている方は、ぜひちょっとの意識を心がけてみてください。
おわりに
脳貧血と貧血の違い、知っていただけたでしょうか。
季節の変わり目で天候が安定しないことも体調不良の原因になりますし、たまっていた疲れが出やすい時期でもあります。
そんな状態の方が多い中での、たとえば電車通勤でも、臭いがムッときたり息苦しくなったり、そんな経験は少なくないのではないでしょうか。
今回の記事では、細かくいろいろご説明しましたが、
- 立ちくらみや立ちっぱなしによる体調不良は、血液が足りないことが原因ではないから、鉄分補給はあまり的を得た改善法ではないよということ
- 脳貧血(起立性低血圧)っぽい症状が出たら、そのまま我慢しても何も改善しないので、その場に座り込む・横になるを徹底すべし
これを知っていただければ私は満足です。
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