2016年12月に入り、今年も残り1か月を切りましたね。
12月1日、国立感染症研究所より風疹予防が呼びかけられ、啓発用のポスターが公開されました。
呼びかけのテーマは、「成人男性も風しんの予防接種を受けましょう」
風疹は、「1歳の誕生日プレゼントに麻疹風疹混合ワクチンを」と言われるほど、現代では当たり前に摂取させるものですが、30代後半~50代の男性で抗体を持っていない方が実は多いことが問題になっています。
今回は、風疹という感染症の症状などの基本情報とワクチン接種などの予防接種の重要性についてお伝えします。
妊娠を考えている方などはぜひチェックしてくださいね。
目次
風疹とは
風疹とは、発熱・発疹・リンパ節腫腸の症状が特徴の発疹性の感染症です。
症状は子供と大人で異なる
症状は成人になるほど重く、高熱や発疹が長く続いたり、関節痛がひどくなったりします。
子供は発症した場合、症状は比較的軽いものの、
まれに脳炎、血小板減少性紫斑病などの合併症が、2,000人から5,000人に1人くらいの割合で発生することがあります。
風疹の影響でもっとも注意したいのが、妊娠期の感染。
赤ちゃんが障がいを持って生まれるリスクが高くなってしまうのです。
こちらについては後述します。
感染力の強さはインフル以上
感染力もとても強いので、患者1人の周りに免疫がない人がいた場合、5~7人に感染させてしまうともいわれています。
感染しやすいインフルエンザでさえ、同じ条件では1~2人に対してですので、その感染力の強さがよくわかりますよね。
流行時期・潜伏期間・感染経路
春先から初夏にかけて流行しやすく、
潜伏期間は2~3週間(平均16日~18日)です。
感染経路はいわゆる「飛沫感染」。
感染者の咳やくしゃみからうつる場合がほとんどです。
また、感染しても症状がなにも出ない人も15~30%いて、知らないうちに抗体ができますが、その場合本人は何も困ったことになりませんが、感染している間は保菌者なので、他の人への感染源ですよね。
風疹はワクチン接種で防げる病気
風疹はワクチン接種で感染をほとんどなくせるので、産科医療をテーマに流行ったドラマ『コウノドリ』では、
「風疹はこわくない。悔しい病気」
と例えるほど。
ワクチン接種が義務化されていない時代は、1~9歳ごろに発症する子供が多かったものの、近年は多くが成人男性となっています。
それは一体どういうことか?
風疹のワクチン接種は、時代によって回数が1回だったり、そもそも接種する機会がないこともあったのです。
- 平成2年4月2日以降に生まれた人は今と同じ2回接種
- それより年齢が上の人は受けていても1回の人がほとんど
- 昭和54年4月1日以前に生まれた男性は1回もその機会がなかった
平成25年度の調査では、20~40代の男性の約12.3%が風疹の抗体を持っていませんでした。
その内約は、
- 20代:約1%
- 30代:約8%
- 40代:約3%
風疹は1度かかれば2度目はありません。
でも、自分は「風疹にかかったことがある」と思っていても、実は別の病気だったのを勘違いしていたという場合も少なくないとのこと。
心配な方は血液検査で抗体を持っているかどうかを確認するとよいでしょう。
風疹の予防啓発を進める理由
予防接種100%で風疹根絶を目指す理由は、
これから生まれてくる赤ちゃんに障がいのリスクをなくす!
この1点が最重要課題だからです。
この後詳しく書きますが、抗体を持っていない妊婦が風疹にかかった場合、生まれてくる赤ちゃんが障がいを持っている可能性があるのです。
抗体を持っていさえすれば防げる病気なので、感染させられる・感染させてしまう可能性すらもなくすために、社会全体でワクチン接種を意識づけることが重要なのです。
また、ワクチン接種は風疹の自然感染による合併症の予防にもなります。
万が一感染したとしても、重症になることも避けられます。
現在、国をあげての風疹予防啓発に力が入れられていますが、特に成人男性、妊娠前の女性はワクチン接種の重要性をよく認識していただきたいところです。
妊娠後の感染は赤ちゃんに障がいの可能性あり
風疹は、妊娠前に予防することが重要!
ここまで再三申し上げてきましたが、その理由をご説明しましょう。
妊婦さんが風疹に感染すると、おなかの赤ちゃんも感染するということです。
そうなったら、赤ちゃんが、難聴・心疾患・白内障のほか、精神や身体の発達の遅れといった障がいを持って生まれる可能性があるのです。
これらの障がいのことを「先天性風疹症候群」といいます。
先天性風疹症候群がおこる時期
先天性風疹症候群がおこる割合は、風疹にかかった妊娠時期によって違ってきます。
一番避けたいのが、妊娠初めの12週までに感染してしまうことです。
調査によって幅が大きいので一概に信じてよい確率とはいえませんが、報告されているある数値では、25~90%の割合で先天性風疹症候群が起こることがほとんどです。
その他の報告では、妊娠時期で
- 1ヶ月で60%
- 2ヶ月で80%
- 3ヶ月で50%
- 4ヶ月で20%
- 5ヶ月で15%
というのもあります。
どの報告の数値でも低くはないですよね…
妊娠後の風疹検査はただの状況調査
ちなみに、妊娠すると検診時に血液検査があって、風疹の抗体があるかどうかを検査する機会があります。
その検査でわかることは、
- 抗体を持っているか否か
- 最近、風疹に感染していないかどうか
という事実だけです。
仮に、風疹に感染していることがわかっても、妊娠してしまっていたらどうにもできません。
また、抗体がない(過去にワクチンを打っていない・過去に風疹にかかっていない)場合も、ではこれから予防接種を受けましょうというのはできません。
妊娠後の検査は、先天性風疹症候群がおこる可能性を調べるためのもので、予防するためのものではないのです。
もちろん、抗体がないことは事前に知っておくことで、感染しない努力はできると思います。
人込みをさけるとか、うがい手洗いを徹底するとか。
でも繰り返しますが、ワクチン1本でほぼ100%予防できて、赤ちゃんへの影響もほぼ100%回避できるので、妊婦さんになる前に予防接種を受けてほしいと思います。
予防接種で、自分の感染も赤ちゃんの感染ももちろん、周囲へうつす心配もなくなりますよね。
風疹の予防接種のチェック
風疹の予防接種の重要性がご理解いただけてきたところで、
「自分はちゃんと予防接種を受けているかわからない!」
「昔かかったかもしれないけど…」
という方も多いのかと思います。
予防接種を受けていたとしても、幼いころの記憶はないものですよね。
確かめる手段としてできることは順番に、
- 両親に聞いて確かめる
- 自分の母子手帳を見て接種の記録を確認
- 医療機関で血液検査
となります。
でも、予防接種はたくさんの種類がありますので、覚えていないこともあるかもしれませんし、
「風疹と思っていたけれども麻疹(はしか)の注射だった」
という記憶違いもあるかもしれません。
両親に確かめる
これはまず一番にできることです。
電話でもメールでも良いので、幼いころに自分が風疹の予防接種を受けたかどうか、ダイレクトに聞いてみましょう。
自分の母子手帳を見て接種の記録を確認
ご両親に聞いてもわからなかった場合は、自分の母子手帳を探してもらってください。
母子手帳には、妊娠時の母親の体の状態の記録から、出産後のあなたの成長記録のほか、接種したワクチンの記録欄もあるはずです。
この記録欄をみて、
- 接種した記録があればOK
- 1回しか接種していなかったら医療機関へ
- 接種欄が空欄もしくはそもそも風疹の欄がない場合は医療機関へ
このように対応できます。
1回しか接種していない場合は、抗体価が十分でない可能性がありますので、まずは医療機関に相談してみて、血液検査で交代価を確かめる流れになると思います。
接種欄が空欄または欄なしの場合も同様に、まずは血液検査からになるはずです。
医療機関で血液検査
両親に確認できない、母子手帳もない、
そんな場合は医療機関に連絡をして、抗体があるかどうかの血液検査を受けましょう。
これも自治体によりますが、抗体検査も無料で受けられる場合がありますので、お住まいの自治体・保健所または医療機関で事前に確認してみるといいですよ。
予防接種について
予防接種はもちろん成人でも受けられます。
費用は医療機関によって若干変わってくるかもしれませんが、定期接種の年齢の子供なら、ほとんどの自治体で補助されるので無料、それ以外の年齢の人は原則自己負担という形になります。
自己負担の場合は、大体約8,000円くらいです。
ただし、自治体によっては成人の接種費用の助成が受けられるところもありますので、お住まいの自治体・保健所・医療機関に確かめてみると良いでしょう。
定期接種の年齢をまとめるとこのようになります。
- 1歳児(第1期)
- 小学校入学前1年間の幼児(第2期)
- 2008年度~2012年度までの5年間は、第1期・2期に加え、中学1年生(第3期)あるいは高校3年生相当年齢の者(第4期))
定期接種はたいていが無料で受けられますので、子供が生まれたら、必ず接種を進めることと、家族全員の接種を徹底するようにしましょう。
おわりに
風疹をはじめ、ワクチンで予防できる感染症によって、避けられる障がいをもってしまったり、合併症を併発させてしまうことは大変悲しいことだと思います。
特に、抗体を持っていない世代は、今生まれる子供たちの親・祖父母世代。
お母さん・お父さん・おじいちゃん・おばあちゃんから、これからの時代を生きる子供へ感染させてしまうことは絶対に避けたいですよね。
予防啓発が進むものの、なかなか100%接種に至るのは難しいなと思います。
しかし、例えば、職場で“ワクチン接種の証明書(母子手帳コピーとか血液検査の抗体価の記録とか)”を提出するルールを作ったりすれば予防する人も増えるはずです。
接種費用助成などによって、「ワクチン接種への意識が後回し」になりがちな忙しい世代の抗体保有が進むことを祈っています。
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