みなさんは、魚料理をどのくらい召し上がっていますか?
「和食の定番といえば魚」というイメージですが、実は日本で食べられている魚の量は、年々減ってきているとのこと。
テレビなどでは「魚が健康にいい」という情報が流れていますし、DHAやEPAなどの名前はご存知の方も多いでしょう。しかし、実際に食卓に上がる機会は、あまり多くないようです。
その理由として挙げられるのが「調理がめんどくさいこと」。
お刺身のパックならともかく、魚をさばいて調理するというのは手間もかかりますし、生ゴミも出ます。
そんな魚を手軽に食べる方法のひとつが缶詰です。今回は、魚の缶詰について分析していきましょう。
目次
日本人の魚介類の摂取量は減少傾向にある
農林水産省が毎年発表している「食料需給表」によると、一人当たりの魚介類の年間消費量は、平成13年(2001年)の40.2kgをピークに減少を続けています。
平成27年(2015年)には、25.8kgと、およそ15年の間に35%も減少しているのです。
価格の差など原因はさまざまですが、調理に関する調査の結果では「できるだけ簡単にしたい」という意見も多いことから、やはり手間の部分は無視できないところでしょう。
この「魚離れ」は特に若い世代で目立っており、厚生労働省の調べによると、10代~30代の1日あたりの魚の摂取量はおよそ40~50g。50代以降になると60~70g程度摂取していますので、やはり食べる機会は減っているのがわかります。
代わりに多いのは肉の摂取量。
上で紹介したグラフでもこの30年の間上昇を続けていますが、10代~30代では1日あたり100~120g程度、50代以降は60~80g程度となっています。
「日本の食卓は魚が中心」というイメージがありましたが、グラフ上では2010年ごろを境に逆転しており、今は「肉が中心の食卓」になっているのもわかりますね。
「魚は食べたいけど、ちょっと高いし……」
「手間がかかるのがなあ……」
という魚料理の悩みを解消できるのが、今回のテーマである缶詰です。
この機会に、見直してみてはいかがでしょうか。
缶詰の添加物と栄養素
どこでも安く買えて便利な缶詰ですが、何となく「手軽なおつまみ」という印象があります。
また、缶詰は非常食としても使われているため
「長持ちする=保存料を使っている?」
というイメージを持つ方がいらっしゃるかもしれません。
また、栄養的に生の魚よりも落ちているというイメージもあるのではないでしょうか。
実際にはどのようなものなのか、調べてみました。
缶詰の製造方法と添加物について
まずは缶詰がどのように作られているのかを、簡単におさらいしましょう。
まずは新鮮な食材を下処理し、調理します。
調理した食材は調味液(果物の場合はシロップ)と一緒に缶に入れ、空気を抜いた状態でふたをして密封。
ここで空気を抜くことで、加熱殺菌の際に缶が膨張するのを防ぐだけでなく、食材の栄養素が酸化などで変質するのを防いでいるのです。
密封した缶を加熱して殺菌し、最後に点検をして、出荷されます。
下処理と調理の段階で、魚なら頭や内臓は取り除いてありますので、生の魚と違って生ゴミが出ないのはメリットと言えるでしょう。
また空気を抜いて加熱殺菌してあるため、開封するまで長期間の保存ができるのが特徴です。
厚生労働省が定める缶詰の規格基準では、
「缶詰などの製造に際して、保存料や殺菌料として用いられる添加物は原則として使用できない」
ことになっています。
調味料などの添加物は使用できますが、保存料については使用されていませんので、安心して食べることができるというわけです。
魚の缶詰の場合、調味料も気になる場合には蒲焼きや味噌煮のような缶詰よりも、水煮の方がさらに添加物が少なくなっています。
あらためて味付けする手間はかかりますが、いつも使っている調味料で味付けできますので、気になる方は水煮缶詰の方が使いやすいですね。
缶詰の栄養素
また、工場自体が漁港や果物の産地などの近くにあることが多く、新鮮な原材料を使っているのも注目です。
工場側の立場で考えてみても、加工する際の輸送費が抑えられるため、できるだけ近い場所を選んだ方がよさそうです。
また、調理についても空気を抜いた状態で加熱殺菌するため、ビタミンやDHA、EPAなどの酸化も防げますし、魚の缶詰なら圧力で骨まで軟らかくなるため、カルシウムなどのミネラルも摂りやすくなっています。
たとえば、生のサバとサバの缶詰を比較してみると、以下の通りになります。
特にカルシウムについては、骨を取り除かなければいけない生の魚と、骨ごと食べられる缶詰の差が大きく出ていますね。
脂質の量は、サバの種類や獲れた季節によってかなり差がありますので、気になる方は缶詰の表示をご確認ください。
メーカーなどによって異なっていることがあります。
血中のコレステロール上昇を抑える働きを持つとされるDHAやEPAは、酸化しやすいという特徴があります。
しかし、空気を抜いた状態で加熱される缶詰の場合は酸化されにくいため、多く含まれているのです。
添加物も少なく、栄養価の高い缶詰。安く買える「おつまみ」だけではなく、普段の食事にも取り入れたいですね。
缶詰を上手に使うための注意点
さて、これまでの缶詰のイメージが変わったという方も多いのではないでしょうか。
ただし、缶詰にはメリットも多いですが、欠点がないわけでもありません。缶詰を上手に使うために、注意点も知っておきましょう。
調理法や材料が限られる
当然のことながら、缶詰は加熱調理をされているものです。また、魚の缶詰の場合は多くの場合、蒸したり煮たりという調理をしてあります。
つまり、刺身はもちろんですが、焼き魚などの料理には向いていません。生の魚と缶詰は、調理方法によって使い分けましょう。
また、魚の種類も限られています。よく見かけるのは「さば」「さんま」「いわし」などの青魚と「鮭」、そして定番の「ツナ(まぐろ)」といったところでしょうか。
缶詰自体は栄養価が高いのですが、調理方法や魚のバリエーションが少ないと、栄養も偏ってしまいます。缶詰だけに頼らないようにしたいですね。
余った時、缶のままの保管はNG!
缶詰を開けたあと、使い切らなかった場合、缶のままラップをかけて冷蔵庫へ……というのは、やめましょう。
これは缶詰の注意が気にもありますが、缶の切り口から金属が溶け出してしまう危険があるためです。
缶の内側は多くの場合コーティングされていますが、開封する際に傷がついていると、そこから溶け出す可能性があります。
使い切れなかった分は、器やタッパーなどに移して冷蔵庫で保管し、1日~2日以内に食べてしまいましょう。
缶詰を使ったレシピ
魚の缶詰を使ったレシピを紹介します。味付けが自由な水煮缶は、普段の料理には取り入れやすく、オススメの食材です。
バリエーションをいくつか覚えておくと、いざという時にも使いやすいでしょう。
サバ缶とたけのこのみそ汁
- 水……3カップ半(700cc)
- みそ……大さじ4
- サバ水煮缶……1缶(190g程度)
- たけのこ水煮……1本(100g程度)
- たけのこは食べやすい大きさに切ります。
- 鍋に水を入れて火にかけ、沸騰したらたけのことサバを煮汁ごと入れます。
- みそを加えたら、沸騰直前で火を止めて、完成です。
サバの水煮缶は、和・洋・中どんな味付けにも合わせやすい食材です。今回は定番のみそ味のレシピを紹介しましたが、しょうゆ味もOK。
洋風ならトマト+コンソメ+キャベツ、変わったところでは白菜キムチ+ごま油という味付けでも美味しく仕上がります。カレーの具にもいいですね。
魚のうま味がしっかり入っている缶の煮汁ごと使えば、だしを取らなくても美味しいので、スピード調理もできます。
鮭缶のクリームパスタ
- 鮭水煮缶(または鮭中骨水煮缶)……1缶(180g程度)
- スパゲティ……1袋(300g)
- 玉ねぎ……1個
- アスパラ……1束
- ホワイトソース……1缶(250g程度)
- 牛乳……1/2カップ(100g)
- バター……大さじ2
- 塩・こしょう……各少々
- 玉ねぎは千切ります。アスパラは一口大に切って、固めに茹でておきます。
- スパゲティを袋の表示通りにゆで、ざるにあげておきます。
- フライパンにバターを入れ、溶けてきたら玉ねぎを炒め、透明になってきたら牛乳とホワイトソースを加えて煮溶かし、鮭煮を缶汁ごと加えて温めます。
- アスパラ、塩、こしょうで味を調えたら、パスタとからめて、お皿に盛り付ければ、完成!
鮭缶は、乳製品を使った料理に使いやすいのが特徴です。
今回紹介したクリーム系のパスタやシチュー、チーズを使ったグラタンなどにはもってこいの食材でしょう。
相性の良い調味料としては、他にマヨネーズともよく合います。もちろん、定番のしょうゆ味やみそ味にも使いやすい食材ですね。
知っておきたい「ローリングストック法」
最後に紹介するのは、備蓄食品としての缶詰について。
災害に備えて缶詰を備蓄するというのは定番ですが、備蓄食品にも賞味期限があります。また、いざという時のため、調理方法などを覚えておくのも大切なこと。
そこで、備蓄食品を普段の食事に取り入れて、古いものから入れ替えていこうという考え方が「ローリングストック法」です。
【出典】4.ローリングストック法について 備蓄の心得 | トクする!防災 | 日本気象協会
まず、普段から少し多めに備蓄食材、加工品を買っておきます。
古いものから順番に料理に使用し、使った分だけ新しく買い足していくことで、常に一定量の備蓄を確保することができます。
このローリングストック法のポイントは「消費しながら備蓄する」という点。
一定の量を常に備蓄しておきながら、消費と買い足しを繰り返すことで、食料の鮮度を保ち、いざという時にも対応がしやすくなるというわけですね。
缶詰を普段の食事に取り入れながら、非常時の備えもできるというのは、まさに一石二鳥。ぜひ覚えておきましょう!
まとめ
今回は、消費量が減りつつある魚を手軽に食べられる「缶詰」について紹介しました。まとめると、以下のようになります。
- 缶詰は「保存料」を使用しておらず、また栄養価も落ちていません。生ゴミが出ないのもメリットです。
- 焼き料理などには使いにくいですが、スープ系やパスタなどには使いやすく、水煮缶は味付けのバリエーションも豊富。
- 残ったら、缶のままではなく、タッパーなどに移して冷蔵庫へ。早めに使いましょう。
- 備蓄の缶詰を普段の食事に取り入れることで、いざという時に備えましょう!
上手に使えば、缶詰は優秀な食材です。まずは魚を手軽に摂れる食材として、また災害の備えとして、いくつか準備しておくのはいかがでしょうか?
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