これまでのエネルギーコントロールの考え方だけでなく、糖質量をコントロールして好きなものをもっと自由に食べながら、生活習慣病予防をしていこうとする考え方があります。
その考え方に賛同したパティシエ達が糖質量を減らすことにこだわったスイーツをほかのスイーツと一緒に並べているような光景も珍しくなくなってきました。
スイーツにも選択肢が広がったと言えるでしょう。
今回は、どのような材料を使うことで糖質制限スイーツが実現できるのかをご紹介したいと思います。
目次
血糖値とインスリンの関係を整理。糖質制限の有効性を考える
糖質制限の考え方は、エネルギーの総量ではなく血糖値の上がり方に注目しています。
これは、血糖値が上がると体内で血糖値を下げるホルモンであるインスリンが分泌されることに関係しています。
インスリンは膵臓から分泌されるホルモンで、ヒトが分泌するホルモンのうち、血糖値を下げる働きを持つ唯一のホルモンです。
本来私たちは糖質を摂取すると、それをエネルギーとして利用します。 最小単位であるブドウ糖として血液に存在し全身に運ばれ、エネルギー源として消費さえたり、肝臓や筋肉でグリコーゲンとして貯蔵されたりします。
しかし貯蔵できる量はそれほど多くありませんから、余った分はインスリンによって中性脂肪に変えられ、脂肪組織として蓄えられるのです。
血糖値が急に上がると、インスリンはたくさん分泌されるので、このサイクルが起こりやすい状況を作ることになります。
「スイーツを食べると太る」というメカニズムの一つと言えるでしょう。
さらに血糖値が上がりやすい食生活を続けることは、インスリンの分泌が続くので、分泌する臓器である膵臓に負担がかかります。
そうするといずれインスリンがうまく分泌されにくくなってしまうのです。
もしくはインスリンが分泌されても、身体はインスリンがたくさん分泌されている状況に慣れてしまってうまく血糖値が下がらないという事態にもなります。
このような状態が糖尿病といいますが、
血糖値を意識することが生活習慣病予防にもつながるということがご理解いただけるのではないでしょうか。
そんな血糖値を上がりづらくしてくれるスイーツが「糖質制限スイーツ」です。
糖質制限スイーツの大切な4つのポイント
では、次に実際に糖質制限スイーツを作ったり、食べたり際のポイントを4つ紹介していきます。
この4つを意識することで血糖値の上昇も抑えることができ生活習慣病予防にもつながるはずです。
糖質制限スイーツのポイント1:砂糖を低糖質甘味料に置き換える
スイーツに含まれる糖質のうち、砂糖に由来している分量は多いことはご存じでしょうか?
「甘さ」がおいしさをもたらしてくれる反面、血糖値上昇に直結します。
砂糖(ショ糖)は、単糖類であるブドウ糖と果糖が1つずつ結びついた構造をしています。
この結合を切るだけで速やかに吸収されるため、血糖値が上がりやすいのです。
スイーツから甘さを除去してしまってはおいしさに関わりますが、必ずしも砂糖でなくても甘みを楽しむことはできます。
糖質制限スイーツの場合、多くは「低糖質甘味料」に置き換えられます。
- パルスイート(味の素)
- シュガーカットゼロ(浅田飴)
- ラカントS(サラヤ)
といった低糖質甘味料が、よく使われているようです。
これらの低糖質甘味料は、体内では吸収されないため血糖値を上昇させることのない「糖アルコール」です。
甘さは砂糖と同量で同じ甘味度とは限りませんので、それぞれの製品の説明をよく確認しましょう。
これらはAmazonなどでも容易に入手することができますので、自分でスイーツや料理をする場合にも活用することも簡単です。
低糖質甘味料の調理法
ただし砂糖は、スイーツで単に甘みを与えるだけの働きをしているわけではありません。 砂糖には「水分を抱き込みやすい性質」があります。
この性質は、多くの工程で状態の良いスイーツを作るために利用されています。 たとえば、卵を泡立てる場合。
卵を割り、砂糖とともに泡立てていくときめの細かい、ふわふわとした状態を作ることができます。
スポンジケーキがふんわり膨らむのは、このとき砂糖に助けられて卵が空気を抱き込むから。
低糖質甘味料にはこのような特性はないので、卵を泡立てる際には人肌くらいに温めながらしっかり泡立て、途中からミキサーを低速にしてきめを整えるようにするなど、ちょっとした手間をかけると良いでしょう。
糖質制限スイーツのポイント2:小麦粉の糖質をコントロールする
スイーツの生地で土台となる小麦粉は、糖質の一種であるでんぷんを多く含む食材です。
したがって糖質制限スイーツを作る際には、小麦粉についてもひと工夫が必要となります。
小麦粉については大きく、2つの代替方法があります。
- 小麦ふすまの利用
- ほかの食材の粉を利用
小麦ふすまの利用
通常の小麦粉は小麦の粒の胚乳部分を粉に挽いて使っています。 内側のやわらかい部分のみを使っていますから、真っ白な見た目とクセのない味わいです。
ふすまとは小麦の表皮で、通常なら取り除かれる部分。
これまでであれば、家畜のエサなどに回されていたようなものですが、糖質制限で急に脚光を浴びました。
ふすま粉を使った「ブランパン」などは一部のコンビニでも見かけるようになりましたよね。
食物繊維とミネラルを豊富に含み、糖質含有量が少ない小麦ふすまを小麦粉の代用として、一部の小麦粉と置き換えるのです。
ただし小麦ふすまの利用には少し注意点があります。 それは「匂い」です。
この部分はやや苦みがあり、香りもクセがきついのです。
食べ慣れてくると味わいとしてとらえられたり、しっかりとした食感が満腹感を助長してくれたりと、長所もたくさんあります。
ジンジャーやカカオマスをうまく利用してマスキングしながら利用すると良いでしょう。
ちなみに自宅でもふすま粉があれば簡単に作ることができます。
大豆パウダーの使用
大豆を粉にしたものです。 大豆を原料とする粉には「きな粉」もありますので、違いに悩む方もいらっしゃるかもしれません。
きなこは炒った大豆を粉にしたもので、一方大豆パウダーは炒らずに粉にしています。
大豆は植物性たんぱく質が豊富な食材。したがって小麦粉に比べて糖質の摂取量を減らすことができます。
比較的味にクセはなく使いやすいと考えられますが、単体では小麦粉を使った場合と同じような食感や風味にはなりにくいので、小麦ふすまなどと合わせながら利用します。
同じく大豆製品を使ったものに、高野豆腐パウダーもあります。
高野豆腐は豆腐を凍結乾燥させたものですが、高野豆腐パウダーはそれを粉状にしたもの。
こちらはスイーツのみならず、料理の揚げ物の衣などにもよく利用されています。
代替粉を使う注意点
小麦粉はスイーツ作りで骨格を担う役割を果たすことの多い材料です。
小麦粉には「グルテンを形成する」という特性があります。
グルテンとは、いわゆる「麩」の材料になるもので、小麦粉に含まれるたんぱく質です。
グルテンが形成されることで生地に粘りや伸展性が生じ、スポンジや焼き菓子が形成されるのです。
グルテンは、小麦粉以外の粉には含まれません。小麦ふすまにもグルテン形成は期待できません。
したがってそのまま置き換えてしまうと、「生地が膨らまない」といったトラブルが起こります。
膨張剤などを利用して、グルテンの役割を補ってあげる必要があることを覚えておきましょう。
糖質制限スイーツのポイント3:見た目にもこだわる
スイーツといえば欠かせないパートナーに、色とりどりのフルーツがありますね。
果物にも果糖やブドウ糖、ショ糖など消化・吸収の早い糖質は含まれます。
けれど同時に食物繊維も含むため血糖値上昇は緩やかなものも多く、砂糖や小麦粉といった材料と違って極力制限していくという対象にはしません。
バナナやブドウのように糖質含有量が高いものは避けつつ、かんきつ類やイチゴなどは上手に利用していきましょう。
スイーツは見た目を楽しむ要素もありますよね。
気をつけたいのは、できれば生の果実を利用したいということ。
ドライフルーツは味わいも濃く、季節も選ばないため使い勝手が良いのですが、糖質が多いため、使用は避けた方が良いでしょう。
フルーツと同じくスイーツに欠かせない食材であるチョコレート。
チョコレートにも砂糖が含まれていますから、カカオマスが使われることが多くなります。
カカオマスとは、チョコレートを作る工程でできる「チョコレートの素」のようなもの。
発酵させたカカオ豆を焙煎しペースト状にした、甘さを加える前の状態です。 これをタブレット状に固めたものが出回っています。
チョコレートの風味は楽しめますからチョコレート味のスイーツを作る際にはここに低糖質甘味料を合わせて仕上げていきます。
香りが高いので、クセの強い小麦ふすまのマスキングにも役立ちます。
糖質制限スイーツのポイント4:脂肪分の多い材料の使い方
血糖値の上昇を意識して糖質に絞ってお話ししてきましたが、「スイーツを食べると太る」というメカニズムのすべてが血糖値とインスリンによって説明できるわけではありません。
やはり「エネルギーが高い」ということもあります。
しかし糖質制限スイーツでは、生クリームやバターといった脂肪含有量の多い食材については糖質含有量が少なければ制限せずに使用しています。
たとえばナッツ類も糖質が少なく風味や食べごたえがアップするため、多用されます。
糖質を制限した状態で脂肪分にまで制限をかけると、もはやおいしいスイーツを作るのは難しくなるでしょう。
一番避けたい事態は糖質も脂質も多く含有されているというダブルの組み合わせです。
ただ、やはり糖質制限スイーツは思いのほか高脂肪で、エネルギー摂取にはつながるのだということについては、きちんと把握しておく必要があると思います。
いくら糖質が制限してあるとはいえ、度を越した摂取はおすすめできませんので。
まとめ
「スイーツを食べると太る」という永遠の問題点に対し、糖質に絞って回避策を見てみました。
スイーツ摂取で気になるのは
- 糖質
- 脂質
の2栄養素の摂取量がかさむことです。 一番避けるべきはこの両方をしっかり摂取してしまうこと。
その一方である糖質を制限することで、条件を崩したのが「糖質制限スイーツ」なのです。
甘いものを求めて食べるスイーツで、糖質をコントロールするという考え方は画期的ではありましたが、一気に広まり浸透しつつあります。
健康的なスイーツライフを送る選択肢が一つ増えたととらえ、正しく特性を理解しながら利用していきましょう。
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