皆さんは便秘に悩まされたことはありますか?
まさに今という方も、忙しい時そうだったという方、冬の寒い時期は出にくいという方もいらっしゃると思います。
平成25年の厚労省の統計によると、日本人の男性は2.6%が、女性は4.9%、全体では約26人に1人が便秘であることがわかりました。
なお、よく女性の2人に1人は便秘という統計を出しているサイトがありますが、これは恐らく統計情報の読み違い。
便秘でお困りの方は多いと思いますが、そこまで多くないですよ。
今回は、便秘とはそもそもどんな状態のことで、何が原因になっているのか、予防と治療の一般的な知識を紹介してきます!
目次
そもそも便秘とは?
便秘とは次の2つの状態のことを指します。
- 便の水分が足りず硬くなって出にくくなる
- 便の通り道である腸管が何かの原因で狭くなり出にくくなる
人によって差はあるものの、ふつう排便は1日に1回~2回はあるもの。
それが、2~3日出ない、もしくは1週間以上出ない状態が続き、”出なくて辛い”状態のことを便秘といいます。
また、1日1回排便があるものの、毎度便が硬くて量が少なく、まだ出そうな残便感があったり、排便に苦痛を感じる時も、便秘といえます。
一方で2~3日出なくても苦しくない方もいると思います。
本人が苦痛を感じていないのならば…これは便秘ではありません。
便秘の定義
便秘には一応定義があります。
定義がないと便秘に関する研究ができませんからね。
といっても、専門機関によって、その定義は実にさまざま。
日本ではこちらの3種類の定義があります。
日本内科学会
3日以上排便がない状態、または毎日排便があっても残便感がある状態。
日本消化器病学会
排便が数日に1回程度に減少し、排便間隔が不規則で便の水分含有量が低下している状態(硬便)を指しますが、明確な定義があるわけではありません。
問題となるのは排便困難や腹部膨満感などの症状を伴う便通異常=「便秘症」です。
国際消化器病学会(RomeⅢ)
- 排便回数が週3回未満
- 硬便が排便時の25%以上(4回に1回以上は硬い便)
- 用指的排便(指や綿棒などを用いて強制的に排便させる行為)が25%以上
- 努責(排便時に強くいきむこと)、残便感、閉塞感がみられる頻度が25%以上
- 以上の症状が6ヶ月前から少なくとも3ヶ月で基準を満たす場合に慢性便秘
つまるところよく使われているのが国際消化器学会の定義です。
- 便が出にくくて、お腹に溜まった状態が続いて苦しい時
- 排便があっても出きった感がない時
この2通りの状態を指すと思っていただいてよろしいかと。
便秘の原因
便秘のよいは人によってさまざまですが、一般的にはこんなことが原因になるとされています。
- 不規則な食事・生活
- 食物繊維・水分・脂質などの摂取不足
- 低栄養
- ビタミン欠乏症
- 全身衰弱
- 緊張・恐怖・悲しみなどの精神的要因
- 神経障害
- 浣腸や下剤の乱用
- 体質
- 職業性
- 便意を抑制する習慣
職業性とは例えば、
- キャビンアテンダント
- バス・タクシードライバー
- ずっとデスクワークの仕事
が代表といえるでしょうか。
つまり、
- 自分のタイミングでトイレに行ったり水分を取ったりできない仕事
- 休憩や食事、睡眠時間が不規則で生活習慣が乱れやすい仕事
- 腰に負担がかかりやすい不自然な体勢を取ることが多い仕事
- 自分の意志で行動することが不本意に妨げられる仕事
こちらに該当する職業の方は便秘になりやすいです。
便秘になると、腸内で便が腐敗し有害物質ができてしまいます。
便秘で下っ腹が痛くなったり、パンパンに張って苦しくなったり、吐き気をもよおしたりするのは、この有害物質の悪影響なのです。
便秘の種類は大きく2種類
便秘には種類があり、大きくは次の2種類に分類されます。
- 機能性便秘
- 器質性便秘(きしつせいべんぴ)
機能性便秘とは腸管機能の異常による便秘のこと、器質性便秘とは腸管の疾病による便秘です。
簡単にいうと、機能性便秘は生活習慣などが原因で腸に異常がでてしまったことによる便秘、器質性便秘とは何等かの病気が原因の便秘です。
また、薬剤性便秘といって服用している薬が影響する便秘もあります。
薬剤性便秘は、器質性便秘・機能性便秘とは異なり、二次的に症状がでるため、並んで扱われることはあまりありません。
出典:大日本住友製薬 健康情報サイト「お通じがスッキリしない:「機能性消化管障害」の原因と症状」
機能性便秘にも種類がある
便秘で悩む人の多くが機能性便秘です。
機能性便秘はその中にもいくつかの分類があります。
それがこちら。
- 一過性便秘
- 習慣性便秘
その名のとおり、一過性便秘とはふだん便秘と縁のない人に急に起きる便秘。
習慣性便秘とは、便秘が習慣化してしまっている状態。
それぞれの特徴を知って、適切な便秘解消方法を実践しましょう。
一過性便秘は一時だけ
例えば、急に過度のダイエットを始めて食事が偏ったり水分が足りなくなったりするケース。
ダイエットは運動を始める人も多いと思いますが、その際は水分をよく摂るように心がけて、食事制限は栄養を考えて行うことが大事です。
便をスムーズに出すために大事なのが、
- 水分
- 食物繊維
- 脂肪(油分)
です。
脂肪はとりたくないとは思いますが、全く絶つと便秘になりやすくなってしまいます。
ダイエットは長期的に健康第一で行うことが大事ですね。
その他には、旅行の時や外泊して普段の生活リズムと変わった時になる便秘。
これも一過性便秘の一種です。
3種類の特徴がある習慣性便秘
一方、習慣性便秘は、一時的ではなく便秘が習慣化してしまった状態です。
これには3種類の便秘があります。
- 弛緩性便秘(しかんせいべんぴ)
- 痙攣性便秘(けいれんせいべんぴ)
- 直腸性便秘
弛緩性便秘
弛緩性便秘は、腸の運動機能や、りきむための筋力が低下したために起きる便秘です。
高齢者や女性によく見られます。
女性は特に産後この便秘になりやすいです。
排便しやすくする方法は、
- 腹筋を鍛える
- 腹部マッサージをする
- 食物繊維や乳酸菌を多く含む食品を食べる
こういった割と一般によく知られる方法が解消につながります。
痙攣性便秘
痙攣性便秘は、下剤を使いすぎたり、ストレスなどで腸が炎症を起こしたりしているときになる便秘です。
腸ががんばりすぎてピクピク痙攣した状態になってしまい、便がとおる道が細くなってしまうのです。
痙攣は、笑いすぎてほっぺがピクピクなったり、パソコンなどで目の使い過ぎで瞼がピクピクしたり、これと一緒です。
便秘の時、コロコロうさぎのウンチみたいな便や、細長い便が出る場合、これは痙攣性便秘かもしれません。
古い便がずっと残ったままになるケースもあり、腹痛を引き起こす原因にもなってしまいます。
痙攣性便秘はストレスが原因である場合が多いです。
大きなストレスがあると自律神経が乱れ、痙攣をおこしやすくなるのです。
痙攣性便秘解消のためには
- ストレスを溜めないようにする
- 自律神経が乱れないようオンとオフをリズムよくする
この2つがとても大事です。
なお、腸が痙攣している状態のため、腹部マッサージは逆効果。
また腸に負担がかかる濃い食事も控えたほうが良いです。
直腸性便秘
直腸性便秘は、腸の機能は正常できちんと便が運ばれているにも関わらず、トイレを我慢しすぎたり、浣腸を多く使ったりすることで排便しにくくなっている状態です。
- 便意を感じにくい
- 上手にいきめない
- 排便時に痛み・違和感がある
- 便がものすごく硬い
- 浣腸をすると下痢しやすい
当てはまる場合は直腸性便秘の可能性があります。
これは、便を出そうという脳の指令が鈍感になっていることが原因です。
改善のためには、規則正しい生活をして、便意を感じたらすぐにトイレに行くよう心掛けることが大事です。
肛門科などを受診すると、毎日同じ時間にトイレに行くようにすることも治療法の1つとして助言されると思います。
器質性便秘は病気の可能性大
器質性便秘は、他の病気が原因で起こっている便秘です。
どんな病気の可能性があるかというと…
- 大腸がん
- 子宮筋腫
- 腹膜炎
- 腸閉塞
- 腸捻転
- 潰瘍性大腸炎
などです。
怖いですよね。
一刻も早い治療開始が重要になります。
生活習慣の改善では治りません。
便秘解消と治療・予防
このように、さまざまな要因とともに種類がわけられている便秘ですが、具体的にどんな予防法と治療法があるのでしょうか。
まずは、機能性便秘の解消から説明していきますね。
弛緩性便秘の予防・治療
前述しましたが、弛緩性便秘は生活習慣を改善することで解消できます。
まずは規則正しい日常生活・食事・排便・適度な運動を心がけましょう。
食事の面でいうと、厚労省はこちらのポイントに注意して取り組むよう呼びかけています。
- 食物繊維を多く含む食品を積極的に食べましょう
- 冷水・冷牛乳を適切に摂って、胃・大腸の反射を促しましょう。
- 適度に脂質を摂りましょう。脂質に含まれている脂肪酸が大腸を刺激します。
- 適度の香辛料やアルコール・酸味類・エキス分(肉・魚のうま味分)は、排便を促します。
- 糖分の多い食品は、腸管内で醗酵しやすく大腸運動を高めます。糖分の多い食品には、はちみつ・砂糖・水あめなどがあります。
- パインアップル・いちご・りんご・牛乳・ヨーグルト・プルーン・梅干など有機酸を多く含む食品を積極的に摂りましょう。
- 腸管内で醗酵し、ガスを発生させやすい豆類・いも類・かぼちゃ・くりなどを摂りましょう。
また、水分を十分とること、朝食を食べること、便秘薬をできるだけ使わないようにすることが、その後の排便リズムをよくするために大事です。
痙攣性便秘の予防・治療
痙攣性便秘はストレス性のものが多く、若年者や中年女性に多くみうけられます。
予防や治療には、弛緩性便秘同様、まずは規則正しい日常生活・食生活が大事です。
そして、過労やストレスの原因がわかっていればそれを取り除くようにしましょう。
例えば、ストレスがかかっている職場から離れることで解消する場合もあります。
便秘のために離職というのは現実的ではないかもしれませんが、ストレスを溜めないように、新しい趣味を見つけてみたり、ストレスのかかる場所にはできるだけ長く居ないようにして休息時間をたっぷりとるようにするとか…
置かれている環境によってさまざまな解消法があるかとは思いますが、一環したストレス解消が改善のポイントです。
ただし気を付けたいのが、
- 運動を避ける
- アルコールを避ける
この2つ。
腸に負担がかかる方法はNGです。
食事の面でいうと、厚労省はこちらのポイントに注意して取り組むよう呼びかけています。
- 酸味・香辛料・アルコール飲料・カフェイン飲料・エキス分などの刺激性食品は避けましょう。
- 硬い食品・濃い味付け・炭酸飲料・過食などによる物理的刺激は避けましょう。
- 脂質の摂取は控えましょう。特に揚げ物は控えましょう。
- 過熱・過冷の食品摂取量は控えましょう。
- ガスを発生させやすい食品は控えましょう。
- 食事量を確保しましょう。
直腸性便秘の予防・治療
先ほど改善法は割と詳しく書きましたが、直腸性便秘は、排便の習慣を取り戻すところからスタートです。
溜まっている便をまずは便秘薬で全部出したあとに、自然と排便ができるよう、我慢は絶対にせずに「もよおしたらトイレに行く」を習慣づけましょう。
食事は弛緩性便秘と同様のポイントに注意すればだんだんと改善されますよ。
器質性便秘の予防・治療
ここまで機能性便秘の治療法と予防で注意することなどをお話ししました。
機能性便秘は生活習慣によるものが原因であるため、それを直せば改善につながります。
一方、器質性便秘は、結腸癌・直腸癌・イレウスなどの腸管における気質的な疾患の根本的な治療が必要です。
とはいえ、器質性便秘であるかどうかわからないことが多いと思います。
器質性便秘は、別の疾患が原因のため、次のような症状が便秘と共に現れることが多いと言われています。
- 吐き気や嘔吐
- 激しい腹痛
- 便に血や粘液が混じる
- 発熱
- 何も心当たりがないのに急に便秘になる
こんな症状が出ながら便秘が続く場合は、専門機関に受診して判断をあおぎましょう。
自己判断は絶対に辞めてくださいね。
原因となっている病気の治療が必須ですので、機能性便秘の解消法をどんなに試しても具合が悪く便秘が治らない場合は、すぐに病院へ直行してください。
おわりに
今回は便秘の種類と原因について簡単にご紹介しました。
解消法は調べるとさまざまに出てきますが、基本はどれも同じです。
大事なのは便秘の種類をきちんと自分でわかっていること。
もしかしたらただの便秘といえども、他の病気の可能性もあります。
便秘の種類によって、逆効果な解消法を続けているケースもあります。
まずは便秘の基本からご理解いただけると改善に一歩近づくはずですよ!
便秘で本当に悩んでいる方は参考にしてください。
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