2017年夏シーズン、まさに今、手足口病がものすごく流行っています。
7月末の現時点で、全国で警報レベルを越える感染が確認されています。
多くは4歳くらいまでの子供がかかるケースがほとんどですが、まれに大人(男性が多い)もかかることがある病気。
今回は、手足口病の基本情報と今シーズンの流行状況をお伝えします。
目次
手足口病の流行状況
まずは今シーズン、手足口病がどれだけ流行っているかをみてみましょう。
国内の流行状況
こちらは感染症情報センターで毎週報告されている手足口病の患者数です。
色の異なる線ごとに、過去10年間つまり2007年から2017年までの1年間の患者数推移を示しています。
2017年のグラフは赤の太線。
横軸は2017年1月の1週目を「1」、2週目を「2」というように週数を表しています。
週数は、聞きなれない・扱い慣れないと思いますので、こちらに週番の早見表を貼っておきますね。
出典:2017年週番号早見表
グラフでは第28週(2017年7月10日時点)までの推移が載っています。
だいたい毎年、6月ごろから患者数が増えていき、7月初旬から7月中旬までにピークを迎え、10月下旬ごろ終息していくといった傾向がわかると思います。
過去10年間の患者数推移をみてみると、2011年、2013年、2016年が夏季に流行したようです。
確かに、特にお子様がいらっしゃるご家庭では、先シーズンも「手足口病が出てる」と噂を耳にする機会はありませんでしたでしょうか。
そして2017年今シーズンの推移をご覧ください。
患者数が2011年のピークにも向かうような勢いで伸びていますよね。
これが、メディアでも連日取り上げられている「大流行の兆し」。
地域別の流行状況
感染症の流行はどの種類でも、地域単位での患者情報をチェックすることが大事です。
なぜかというと、感染症は急に湧いて出るものではなく、必ず感染経路を通じてうつるもの。
感染した人が周りに一人もいなければうつることはありません。
でも感染者がいる場合はうつる可能性は十分あり。
いつもよりも入念に感染予防に力を入れましょう。
さてでは手足口病の地域別の流行情報をみてみましょう。
出典:感染症情報センター 都道府県別病原体別手足口病由来ウイルス、2017年(病原微生物検出情報: 2017年7月28日 作成)
こちらは、2017年1月から7月28日までに、手足口病の原因となるウイルスが地域ごとにどれだけ検出されたかを集計したマップです。
マップは一部です。
コクサッキーウイルスA6と呼ばれるウイルスが最も多く検出されました。
報告数が11例以上のエリアは赤く塗りつぶされています。
はい、そしてこちらも。
こちらが私たちが注意してみたい情報。
それぞれの自治体ごとに、保健所からあがってきた報告数を集計して、その値をこのように公表しています。
出典:東京都保健福祉局 報道発表/平成29(2017)年 > 7月 > 手足口病が流行、都内で警報基準を超える
こちらは今年7月に東京都が出した2017年第27週の報道資料です。
定点あたりの患者数ごとに色分けされています。
この時点で警報レベルにある地域は、
- 中央区
- みなと区
- 文京区
- 台東区
- 墨田区
- 品川区
- 目黒区
- 北区
- 荒川区
- 練馬区
- 足立
- 葛飾区
でした。
当然、各地域の公式ホームページでも注意を呼び掛けています。
練馬区のホームページ(2017年7月31日アクセス)では、地域での患者数と手足口病とはなんぞや!?という情報、そして感染対策が掲載されていました。
出典:練馬区HP お知らせ一覧(保健・医療・健康・衛生) 手足口病の発生が警報基準値を超えています
こちらは練馬区のホームページの例ですが、東京都全体に対して、練馬区のほうが患者数が多いぞということがわかりますね。
一方で、同じ東京都でも患者報告数が0の地域もあります。
油断大敵ではありますが、警報レベルの地域と比べると比較的感染対策への緊張感は低くてOKということです。
さらにもっと身近な情報がほしい方は、区役所・市役所の窓口や、学校や保育園・幼稚園・学童など子供が集まる場での流行情報を問い合わせてもよいかもしれません。
ちなみに我が家のチビが通っている保育園では手足口病が先日2名報告があったと掲示されていました。
地域で5名出れば警報レベルなのに、うちの保育園だけで同時に2名って…
感染者が出たクラスをチェックして、なんと1名は同じクラスだったので、ひぃぃぃぃ!!!!
さっそく予防のための手洗いうがい・体調管理をいつもより強化しています…
さてでは警報レベルについて少し。
手足口病の流行基準値とは
よく、「〇〇感染症が警戒レベルを超えました」などという報道を耳にすることがあると思います。
警戒レベルとは、感染症による患者数が「大流行」のレベルに達しており、感染しないよう警戒してくださいというもの。
都道府県ごと、または地域自治体ごとに出されます。
警報が出る基準は感染症の種類によって異なります。
手足口病の場合は、1週間の報告数が定点あたり5.0人。
この「定点あたり」というのは「1つの医療機関あたり」という意味です。
この時、報告が義務づけられているのは、比較的規模の大きな医療機関です。
例えば、インフルエンザで定点あたりの患者数1.0人という場合、指定された医療機関のうち1つの医療機関で、1週間に平均1人のインフルエンザの患者が受診した、ということを意味します。
ちなみに、感染症の種類によっては全数(全患者数)を把握しているものもあります。
全ての患者数を把握するということは、医療機関の大小にかかわらず、すべての医師が、該当の感染症患者を診た時にその数を逐一管轄の保健所に届け出なければならないのです。
感染症の危険度等から届け出のルールが異なるわけです。
さて、そんなわけで、手足口病の定点あたりの患者数5.0人というのは、1つの医療機関で平均して1週間に5名の患者を診たということを意味するのです。
1週間に5人というと少ないように聞こえるかもしれません。
でもそれだけ危険度が高いということを意味するのです。
流行警報・注意報レベルの基準値をご覧ください。
出典:警報・注意報の解説
手足口病の警報開始基準値が定点あたりの患者数5人に対し、インフルエンザは30人、感染性胃腸炎は20人ですね。
インフルエンザの患者が1つの病院に1週間に30名も来たとなれば、大流行じゃない!!!と慌てますよね。
手足口病の5名もそのレベルの流行というわけです。
なお、足口病については、東京都も警報を出しました。
この都全体の警報というのは、警報レベルにある保健所の管轄する人口の合計が、都全体の人口の30%を超えたケースに発令されます。
流行レベルの読み方についてはこちらの記事にも書いておりますのでご参考に。
手足口病の基本知識
手足口病とはどんな病気なのか、ウイルスの種類や症状・対策など基本的な知識をお伝えします。
手足口病とは
手足口病は急性のウイルス性感染症です。
感染症にはいくつか種類があり、原因となる病原微生物には細菌とウイルスと寄生虫とがいます。
手足口病はウイルスが病原微生物というわけ。
感染症の種類につきましてはこちらの記事に詳しく書いておりますのでご参考に。
特に4歳以下の子供を中心に夏季に流行します。
そのうち最も多いのが2歳以下の感染。
小さいお子さんのいらっしゃるご家庭は特に注意したいですね。
手足口病の症状
口の中や手足にプツプツの発疹がでます。
割と全身にドバーッと出るイメージです。
プツプツは水泡性で、つぶれると中から液体が出てくるようなものです。
よく間違えられるのが夏風邪代表のヘルパンギーナ。
手足口病は文字通り手足はもちろん全身に発疹が出ます。
口の中にも出ます。
一方ヘルパンギーナは手足・全身には発疹がでません。
喉の奥の方に白い発疹が出るのが特徴です。
手足口病は、発熱もありますがそこまで高くないといわれています。
高熱が出る場合もありますが。
基本的にはズルズル引きずらずに数日で治るのが特徴です。
でも、これはヘルパンギーナも同様ですが、口の中にも発疹ができるため、気持ちが悪くて食欲が低下することがあります。
ウイルスは腸管内で増殖するため、胃腸の具合も悪くなりがち。
夏季は特に水分補給に気をつけ、しみにくい&食べやすい&栄養価の高いバナナなどを食べながら様子をみると良いですね。
ゼリーやヨーグルトも良いかもしれません。
感染経路は、接触感染と飛沫感染。
感染者の発疹がつぶれた体液に触った手で目や口から感染するケースや、くしゃみや咳から感染するケースが考えられます。
つまり感染者が出た場合は、極力皮膚の接触は避けること、しつこいくらいの手洗いをすることが大事です。
手足口病の予防策
手足口病は、感染していても症状が出ない不顕性感染も残念ながらあります。
元気な様子でも感染している人がいるかもしれないということ。
こればかりはやむを得ないのですが、できる予防策としては、
- 流行シーズンは手洗いを念入りに
- 発疹が出ている人を発見したら接触をなるべく控える
- 排泄物をちゃんと処理する
この程度しかできませんが、やらないよりはまし。
合併症には髄膜炎や、稀ですが小脳失調症、脳炎などが出るケースもありますので、罹らないにこしたことはありません。
手足口病の病原ウイルスは
手足口病を発症するウイルスはいくつかあります。
感染性胃腸炎を発症するウイルスは、ノロウイルス・ロタウイルスなどいくつかあるのと同じです。
具体的には、
- コクサッキーウイルスA16型
- コクサッキーウイルスA10型
- エンテロウイルス71型
などが病原です。
おやおや、コクサッキーウイルス・エンテロウイルスとは聞いたことがあるような…
夏風邪の代表格であるヘルパンギーナ、この病原もコクサッキーウイルスとエンテロウイルスなのです。
ただし、ヘルパンギーナの病原になるコクサッキーウイルスの型はA群2~8、10、12型です。
エンテロウイルスとは
なにやらエンテロウイルスやらコクサッキーウイルスだとか、A型とか71型とか意味が分かりませんよね。
少しご説明を挟みましょう。
まずエンテロウイルスとは、腸管(entero)で増殖できるウイルスの総称です。
全ての型を合わせると現在67種類もあります。
で、大きく4つに分類されます。
- ポリオウイルス(1〜3型)
- コクサッキーウイルス(A群1〜22型・24型、B群1〜6型)
- エコーウイルス(1〜7型・9型・11〜27型・29〜31型)
- エンテロウイルスXX(68型〜71型)
なお、昔の専門書による分類は、ポリオ・コクサッキー・エコーの3分類でした。
でも微生物学が発達して、どうしてもこれらの3つにはあてはまらないものが出てきた。
仕方がないので、「エンテロウイルスXX」と名付けて、3つとは別の分類もありますよということを示しているわけです。
ちなみに、67種全部が順番に番号がついているかと思いきや抜け番もあるじゃない、とお気づきの方。
よくぞお気づきになりました。
抜け番は、正確には欠番。
下記のウイルス型で重複があったことが理由です。
- コクサッキーウイルスA23型=エコーウイルス9型
- エコーウイルス10型=レオウイルス1型
- エコーウイルス28型=ヒトライノウイルス1A型
レオウイルス・ヒトライウイルスなんて新しいウイルス出してごめんなさい。
別だと思っていたウイルスが実は同じものだったということが後から判明したので欠番になっているのです。
最初に戻りますが、手足口病とヘルパンギーナ、同じウイルスが原因てどういうこと?に対する回答が、同じウイルスでも型が違う別のウイルスだったということでご理解いただけましたか?
よくわからんという方は、同じウイルスが原因でも疾患の区別は「症状の出方」で異なる、と理解されていてもいいかもしれません。
ちなみに、シーズンごとに流行する型は異なります。
インフルエンザウイルスと一緒ですね。
エンテロウイルスが原因の感染症一覧
エンテロウイルスが主テーマのようになってきてしまいましたが。
ご参考までに、エンテロウイルスが原因で発症する感染症はこちら。
- 呼吸器:風邪様症状、咽頭炎、ヘルパンギーナ、口内炎、急性気管支炎、肺炎、胸膜痛
- 皮膚:発疹、手足口病(CA16、EV71)
- 神経:無菌性髄膜炎、急性脳炎、神経麻痺(EV71)
- 消化器:嘔吐、下痢、腹痛、肝炎
- 眼:急性出血性結膜炎(CA24、EV70)
- 心臓:急性心筋炎(CB1~6)
参考:東京都感染症情報センター「東京都微生物検査情報(月報) – エンテロウイルス感染症
こんなにあって驚きでしょう。
ただし、同じ型のエンテロウイルスでも異なる症状だったり、違う型のエンテロウイルスでも同じ症状だったりすることもあります。
これは医者でも診断が難しいとされています。
手足口病の治療法
もしかかったらどんな治療法があるでしょうか。
結論から、治療法は対処療法のみ。
基本的には、悪さしているウイルスが体内からいなくなるのを待つしかありません。
手足口病の主な症状は、
- 発熱
- 発疹
それぞれがひどい場合もありますし、軽い場合もあります。
それによって、例えば熱が38.5度以上出て夜も眠れない、高熱のせいで体力低下が著しい。
そんな場合は解熱剤が処方されます。
発疹に対しては、かゆみがひどい時は抗ヒスタミン薬でかゆみを抑える。
抗ヒスタミン薬には飲み薬と塗り薬があります。
市販薬だと、有名なのがアレグラ®やアレジオン®ですね。
小さいお子さんに処方するときは、粉薬やドライシロップ(甘いシロップに薬が溶かしてあるやつ)が使われることが多いです。
ちなみに気をつけたいのが「ステロイド」。
皮膚系の発疹にはステロイドと、なんとなくイメージがある方も多いかもしれません。
でもステロイドはダメ。
ステロイド剤は免疫系に作用するアレルギー疾患用のお薬です。
強すぎる免疫作用を抑えることが目的の薬。
で、手足口病はアレルギーじゃなくてウイルスが原因。
うっかりステロイドを使ってしまうと、身体の免疫機能が低下して、さっさとウイルスを撃退したいところが長引いてしまう恐れがあるのです。
そんなわけで、手足口病は自分の身体の免疫力+ひどい時は薬の力も借りつつで治す方法が主流です。
手足口病になったら学校は?保育園は?
最後に、感染症にかかったら登園禁止・登校禁止などの制限がありますが、手足口病はというと。
日本の学校保健安全法では、手足口病は「学校において予防すべき感染症」として個別に規定はされていません。
もともと、登校・登園(就業)制限は、感染拡大を阻止するための施行です。
でも、手足口病は症状が出ない場合も多く、症状がおさまってからもウイルスが排出されている期間が長いため、その期間ずっと制限をルールとして設けるのは現実的ではないというのが国の考え方です
大人でしたら、感染を拡げないよう注意して外出しても仕事に行っても問題ないと思います。
でも小さいお子さんがかかった場合。
保育園・幼稚園・学童はどうしようと悩む時。
熱が低ければルール上は行ってもOK。
ですが、症状が出ている時は、発疹の痒みがあったり痛みがあったり、発熱もあったり、なんだかんだでとっても機嫌が悪くなり、さらに食欲ダウンだと登校・登園は無理だと判断するケースが多い。
手足口病は数日で症状がなくなります。
理想は、症状がおさまるまでお休みして回復を待つのが良いですね。
おわりに
いかがでしたでしょうか。
皮膚に症状が出る感染症は、痒みや痛みを伴うので、患者本人も見ている方もしんどいものです。
だからできるだけ予防したいところ。
しかし症状が出にくいケースがあったり、夏だと虫刺されと勘違いする場合、夏バテで免疫機能の低下から出る発疹と、同じ発疹でもいろいろあり、正直一見しただけじゃ手足口病だと判断はできません。
高熱が出て発疹が手足やおなかに出るようなら可能性あり。
対処療法しかありませんが、ひどくなった時のために薬を処方してもらいましょう。
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