あなたの周りで胃腸炎、流行っていませんか?
胃腸炎と診断がなくとも、下痢や腹痛・胃痛・吐き気・食欲不振などの症状が流行っていませんか?
私の周辺では、最近は子供の保育園で嘔吐・下痢症状が多く出ていました。
保育園や幼稚園、高齢者施設などではすぐ流行るんですよね。
感染性胃腸炎が全国的に流行する時期は秋~冬にかけてです。
でも感染力の強い胃腸炎の原因菌・ウイルスは、一部地域で年間を通じて感染者を出しています。
今回は
- 生活の中でどんな場面でうつるケースがあるのか
- 「嘔吐・下痢が流行っているので気を付けて」と言われたとき何を気を付けたらよいのか
- もしかかってしまったらどんなふうになってしまうのか・回復するまでの道筋
について、教科書レベルの知識から一歩踏み込んだ話を紹介していきます。
目次
胃腸炎の基本知識
一口に「胃腸炎」といっても、原因によっていくつかにわかれます。
胃腸炎の種類
ここで取り上げようとしているのは、菌やウイルスが原因となる感染性胃腸炎。
他には、急性胃腸炎と呼ばれるものもあります。
別の呼び方としては、ストレス性胃炎とか神経性胃炎とか。
これは、文字通りストレスや過度な緊張状態が原因となって、消化機能のバランスが悪くなることが原因の胃腸の不調。
詳しくはまた別の機会に取り上げますが、胃の機能はストレスと深い関係があって、たとえば
- 大事なプレゼン前に胃がキリキリする
- 根詰めてようやく仕事がひと段落したあと、急に胃が痛い
- 緊張でお腹がキュルキュル、トイレに駆け込みがち
こんな症状の時ありませんか?
これらはすべて緊張状態・ストレスがかかった状態によって、胃の機能が低下していることが原因の胃痛です。
急性胃腸炎は、胃腸の中に菌やウイルスが入りこんで不調につながっているわけではありませんので、当然のことながら一時的なもので人にうつることはありません。
一方今回のテーマである感染性胃腸炎は、人から人へと感染します。
感染性胃腸炎の特徴については別の記事でも書いていますので、そちらもご参考いただきながら、簡単に整理します。
感染性胃腸炎の特徴
よく混同されるのが、感染性胃腸炎とノロウイルス。
感染性胃腸炎とは病気の名前で、ノロウイルスとは感染性胃腸炎の原因の1つであるウイルスの名前。
感染性胃腸炎とは、菌・ウイルス・寄生虫が原因で起こる胃腸炎の総称なのです。
感染性胃腸炎の原因
感染性胃腸炎の原因は細菌・ウイルス・寄生虫ですが、これまで確認されていて広く知られているのが、
- ブドウ球菌
- 腸炎ビブリオ
- 病原性大腸菌(例:O157など)
- サルモネラ
- カンピロバクタ
- ノロウイルス(SRSV)
- エンテロウイルス
- ロタウイルス
- アデノウイルス
- クリプトスポリジウム
- アメーバ
- ランブル鞭毛虫
などがあります。
これらの細菌・ウイルス・寄生虫が体内に入ることで感染性胃腸炎の症状を起こし、人から人へ感染するのです。
感染性胃腸炎のうつり方
こちらの「ノロウイルスによる感染性胃腸炎に注意!流行情報と感染症の基礎知識」記事ではノロウイルスに関する教科書レベルの知識は掲載していますが、感染性胃腸炎をおこす一番はじめの原因行動は、汚染された食べ物を食べることによる食中毒から。
よく加熱していない牡蠣や二枚貝、ノロウイルスに汚染された(正確には内臓に蓄積された)状態のまま食べると人の体内で猛威を振るいます。
細菌も同様に、汚染された食品をよく加熱しないまま食べて細菌が体内で大暴れ。
症状として嘔吐・下痢がありますが、口から侵入した細菌やウイルスは胃・腸管をとおって下から排出。
これが下痢。
胃の中で処理できず戻ってきてしまうのが嘔吐。
つまり、下痢や嘔吐したものの中に細菌・ウイルスが含まれているのです。
他の人にうつすケースは、
- 嘔吐した際にはねて飛び散ったものが口から侵入(飛沫感染)
- 嘔吐物を掃除したあと、きちんと洗いきれておらず細菌・ウイルスのついた手で口元を触り侵入(接触感染)
- 下痢便を洗い流す時に飛び散ったものが口から侵入(飛沫感染)
- 下痢便の後、トイレ内の壁や便器などに細菌・ウイルスがはね、そこに触れた手で口元を触り侵入(接触感染)
一貫して、感染経路は便または嘔吐物から口から体内に入るケースのみです。
ちなみに、私が経験した感染経路は3つ目。
子供の下痢をシャワーで洗い流していた時に侵入されたと推理しています。
急いでいたタイミングで、うっかりマスクもせず自分が感染する事態に…
つまり、口から侵入しなければうつりません。
インフルエンザのように、咳やくしゃみからうつることはまずないと考えてください。
嘔吐した直後の咳・くしゃみなら別ですが。
インフルエンザについてはこちらの記事もご参考ください。
感染性胃腸炎の拡大を防ぐ・予防する方法として手洗いが一番にいわれるわけはここにあったのです。
また、病院はもちろん、集団生活をする保育園や介護施設などで、嘔吐物の処理方法のマニュアルにマスク・手袋・エプロンが必須であるわけもわかっていただけると思います。
症状のあらわれ方は細菌性とウイルス性で少し異なるので、この後詳しくお話しします。
細菌性・ウイルス性について
では、細菌・ウイルスについて詳しくみてみましょう。
漢字とカタカナだし、何かよくわからないけれども別のもの?と、みなさん恐らくこの程度のイメージではないでしょうか。
感染症は、細菌性・ウイルス性に分けて語られることがあまり多くないため、なじみは薄いかもしれません。
細菌性・ウイルス性とは
まずはウイルスから。
ウイルスによる感染症で良く知られているのが、
- インフルエンザウイルスによるインフルエンザ
- ノロウイルスによる感染性胃腸炎
- デングウイルスによるデング熱
- エボラウイルスによるエボラ出血熱
- MERSコロナウイルスによるMERS(中東呼吸器症候群)
- 各種ウイルスによる風邪症候群
など。
これらは全て、ウイルスが原因で起こる病気です。
一方細菌が原因で起こる病気は、
- 肺炎球菌による肺炎
- 大腸菌による膀胱(ぼうこう)炎
- サルモネラ属菌による食中毒
- 溶連菌による咽頭(いんとう)炎
など。
再三になりますが、原因の菌やウイルスと、それによる病気とは区別してご理解くださいね。
ちなみに、肺炎や咽頭炎などは、ウイルスも細菌も両方が原因となるケースがあります。
感染性胃腸炎も同様です。
だから、「細菌性の胃腸炎」、「ウイルス性の胃腸炎」と区別されるのです。
細菌・ウイルスの特徴
細菌もウイルスもどちらも微生物です。
出典:株式会社東邦微生物病研究所 総合衛生研究所ティー・ビー・エル
違いは、細菌は自分で1つの細胞を持つ単細胞生物で、自己複製能力を持った微生物です。
つまり、自分で栄養をとって増殖できる生きた微生物ということ。
一方ウイルスは、蛋白質に覆われ内部に遺伝子を持つだけの単純な構造をした微生物です。
微生物ですが、いわゆる生命活動が単独ではできない微生物なのです。
ウイルスが増殖する方法は、他の生物の細胞を宿にして複製する方法のみ。
ウイルスに感染された細胞は、ウイルスが増殖して多量のウイルスが細胞外に出てくるため死滅してしまいます。
これが、ウイルスによって胃腸が荒れる理由です。
増殖したウイルスは、また新しい宿を見つけると入り込んで増殖を繰り返すのです。
入り込まれた細胞がまた死滅して…
これが感染のメカニズムですが、ウイルスはこうして次々と新しい細胞に感染し続ける特徴があります。
まったく恐ろしい働きをするものですね。
細菌とウイルスの大きさ
つぎに大きさ。
どちらもものすごく小さく、光学顕微鏡でみないとみえません。
細菌代表で、ブドウ球菌ですと、直径が約0.8~1.0μm(マイクロメートル)。
ウイルス代表で、ノロウイルスですと、直径が約30nm(ナノメートル)。
μm(マイクロメートル)は1mmの1/1,000の大きさ、nm(ナノメートル)はμm(マイクロメートル)のさらに1/1,000の大きさです。
細菌は自分で細胞をもっているため、細胞の中に入り込むことでしか活動できないウイルスよりも大きいのです。
まあ、どちらも単位としては桁違いのサイズなのですが、私達ヒトからみると、見えないしとても小さいということが共通していますよね。
こんな小さいものたちがどのくらいで人を病気にさせるのか。
感染者のウイルスの数とうつりやすさ
ノロウイルスに関していうと、このサイズで、平均的に感染者の便にどのくらいいるかというと…
たったの1gの中に約1億個も含まれているといいます。
特に乳幼児では100億個以上。
症状がない感染者でも、1g中に10〜100万個以上が便から排出されていると考えられています。
なお、嘔吐物の中には1g中に約100万個。
それに対して、どのくらいの量が体内に入ると感染するかというと…
なんとノロウイルスの場合、たったの10個以上体内に入るだけで感染、症状が出る可能性があるのです。
そりゃあ簡単にうつるわけですよね。
ウイルスによる感染力が強いというのは、こういうことだったわけです。
一方、細菌による感染は、細菌が大量に他の人の体内に入らなければなりません。
想像したくありませんが、極端な話し、目に見える大きさくらい口にしなければ感染しないのです。
もっぱら、細菌性胃腸炎は汚染した食品からがほとんどと考えてよさそうです。
そもそもどこからやってきた?!
自然界には他にも種の繁栄のために毒素をもっている生物や植物がいたりもしますよね。
フグやサソリ、毒を有するキノコ類などなどご存じのとおりですが。
なんとなく、置かれている自然環境から外敵から身を守るための備えだということはわかります。
でもウイルスや細菌っていったいなんなの?!と思いませんか?
私のこの世で最も嫌うゴキブリもそうですが…
生態系環境などの研究領域は全くの専門外ということもありますが、この世に存在している意義なるものがまったくわかりません。
例えばノロウイルスも。
牡蠣の内臓にノロウイルスが蓄積されていて、それを加熱せず生のまま食べてしまったケース。
そもそも牡蠣にノロウイルスがいるのか?!という疑問が湧きませんか?
ここからは教科書レベルで調べた内容ですが、答えはNO。
牡蠣は外にウイルスを排出する能力を持っていないため、海水中にノロウイルスがいた場合、それを吸い込んで中に溜めてしまうのです。
牡蠣は海水中のプランクトンなどを食べて、浄化したものだけを排出する働きを持っていて、牡蠣がいる海水はキレイだと言われています。
でもウイルスだけは例外だということ。
では、海水中のノロウイルスは一体どこからきたのでしょう???
この答えは、残念ながら未だ解明されていません。
もったいぶってすみません…私も知りたいです…
一説では、海水中のノロウイルスは、汚染された便が下水をとおって海まで流れ出たともいわれています。
ウイルスは処理場では完璧には浄化できないのだとか。
ちょうど流れ出た付近の牡蠣養殖場で、牡蠣が大量に汚染された事実もあるといいますし、海中のウイルスは陸からやってきたのかもしれません。
もやもやしますね…
症状のあわられかた
さて、では感染性胃腸炎の症状のあらわれかたです。
代表的な症状
どちらの感染にしても、共通して嘔吐・下痢症状(軽度の場合は下痢のみ)があらわれます。
これは、体内に侵入した異物を外に出そうとする体の自然な働きによるものです。
同時に高熱も続くのが特徴。
私は8度後半が丸4日間続きました。
その後は微熱微熱微熱…
吐き気もひどく、下痢は続くし食欲も一気になくなります。
よく、症状が出ているときの食べ物が紹介してあるサイトがありますが、実際かかるととてもとても食べられません。
食べたら凄まじい吐き気と胃痛に襲われます。
微生物のせいで胃腸がボロボロなのですから、そこに消化しなければならない固形物が入ってこようものならオーバーワークになってしまうわけです。
ちなみに、細菌性胃腸炎の場合は、血便があらわれることが特徴といいます。
細菌性・ウイルス性で症状は似たようなものですが、区別する必要があるのはなぜかというと、医者が治療をする際に、それぞれによって処方する薬が異なるからなのです。
治療に特効薬はなし
細菌性・ウイルス性で異なる点は治療法。
細菌には抗生物質が効きます。
ウイルスには抗生物質が効きません。
つまり、どちらが原因の微生物かがわからなければ、正しい薬の処方ができないのです。
病院を受診すると症状を聞かれますよね。
吐き気・下痢・嘔吐・食欲なし・胃痛・発熱…
吐き気と下痢あたりで、医者はピーンときます。
心当たりはあるかどうか聞かれます。
周りに下痢している人がいるとか、保育園・幼稚園で胃腸炎が出ているとか。
その後検査。
熱が高く出るため、インフルエンザも疑われます。
インフルの検査、炎症反応検査(症状の重さ)、胃腸炎の種類を判別する血液検査。
症状によって前後すると思いますが、おおむね3種類です。
血液検査とインフルの検査は鼻の奥の粘液から。
その結果から診断が下り、治療開始です。
専門病院(消化器系の病院)にかかった場合は、便の検査と超音波検査もするかもしれません。
その検査では、なんの微生物がどれだけ体内にいるか、胃腸の状態が実際にどうなっているかを調べることができます。
まず、重症度にもよりますが、早く治したかったら治療には絶食が一番。
脱水症状さえ防げればよく、ポカリなど消化によい飲み物さえ飲んでいればOK。
重度の場合は水分もとれないケースもあります。
その場合は点滴の出番です。
体内の微生物が外に出きって症状がおさまるまで、整腸剤と水分補給で対処するのが基本です。
回復するまでの期間は人にも重症度にもよりますが、私が軽症だといわれて約1週間動けませんでした。
下痢・胃痛がひどかったのは約2日、同時に気管支炎もやっていたため、そちらも辛かったです。
流行時の気を付け方
基本の予防法は手洗いです。
でも実際予防は大変。
前述のとおり、特にウイルスの感染力が凄まじいからです。
ウイルスや細菌はものすごく小さいので見えませんし、どこについてるかわかりません。
でも、特に小さいお子さんがいる家庭では食品の加熱は十分注意していますので、食べたものから発症する可能性は低いと思います。
ともすれば、保育園や幼稚園、高齢者施設に通うご家族がいればそこから。
免疫力の低い子供や高齢者が集まる密閉空間で感染が拡大する可能性が最も高いのです。
もちろん、施設でも十分わかっていますので、流行時期はもちろん、症状があるお子さんが出た場合は警戒意識レベルがググッと上がって、
「胃腸炎やその症状が出てますので注意してください」
と注意喚起されます。
でも、注意しろといっても何を…と思う方もいらっしゃるかもしれません。
まず、感染経路は便か吐物からというのを頭に入れて、
- 便の処理の時にはたとえ症状が出ていなくてもせめてマスクをする
- 普段は何回か使うハンドタオルを1回で洗濯
- 帰宅したらいつもより念入りに手洗いする
- ものすごく流行している場所から帰ってきたら服も全部着替える
- 乾燥した空気中は例えば嘔吐したら飛び散りやすいので、室内の空気を入れ替えた上で加湿する
できることといったらこの程度でしょう。
ちなみに、咳やくしゃみからうつることはありませんので症状が出ていてもうつさないためにマスクをするのは見当違いです。
普段の生活の中で、見えない微生物ごときに気を付けるのはとても大変だと思います。
でもせめて、身近な流行情報には敏感になっていただき、できる範囲の予防をおすすめします。
それでもうつる感染力にはもう拍手です…
おわりに
経験者だからこそいえる感染性胃腸炎の恐ろしさ。
少し伝わりましたでしょうか。
会社では就業制限を設けているところもあると思います。
診断書があれば有給休暇扱いになるケースもあり、各々会社に確認してくださいね。
お仕事に穴をあけるのは厳しいかと思いますが、実際かかると仕事どころではない体調になりますので、一刻も早い回復に努めましょう。
軽度の症状でも、例えば下痢が続いている場合はまだ体内に微生物がいるということ。
無理して出ていくと集団感染の原因になりかねませんので、マナーを守って回復に努めましょう。
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