日本は高齢化が加速し、団塊の世代が70歳を迎える2025年は「2025年問題」として、医療費の急増や死亡者数の増加、介護に関連する様々な問題が散見されることが予想されています。
現代は医療が発達し、65歳の”高齢者”と呼ばれる世代になっても元気な方がとっても多いため、若い世代はもちろん本人すら”介護”のイメージが湧かないかもしれません。
日本は”健康寿命”が世界一。
これは大変誇れることで、栄養バランスの良い日本の伝統的な和食や勤勉な性格の多い日本人だからこその功績といえます。
でも健康寿命が長いということは、つまり病気にかかったり体が弱って不自由になった時の年齢が他の国よりも高齢だということ。
施設に入所できたなら1日中サポートの手はありますが、変わらず自宅で生活を続ける場合は、国の給付の範囲内のサポートを受けたとしても、日常生活に必要な”買い物”、”洗濯”、”掃除”、”食事の支度”など、外部の手だけでは足りないケースがほとんどです。
そんな手助けをするのはたいてい家族。
娘、息子が担うケースが多いです。
高齢の方の介護となると、今では90歳近い方を70代で介護するなんてことはよくあることなのです。
これが老々介護というやつですね。
家族で助け合うのはもちろん何も問題ないことですが、サポートする人も高齢ですから、思わぬところでケガをしてしまったりして、自身も介護が必要になってしまうなんてことも、実は稀なことではありません。
今回は、現代の介護の現状について、統計情報を参考にみてみましょう。
介護を必要とする高齢者が増えている
現在日本では急激な高齢化の加速により、65歳以上の方で介護を必要としている人の数が年々増加しています。
介護を必要とすることを「要介護」と呼び、どのくらいの介護が必要なのかを、そのレベルごとにわけたのが「介護度」。
介護度の目安
介護度には、介護予防のための給付が受けられる”要支援1・2”、介護のための給付が受けられる”要介護1~5”と全部で7段階にわけられています。
出典:社会医療法人長生会・社会福祉法人悠人会「要介護度認定区分と支給限度額」
審査の基準は、日常の動作や生活環境(独居か否か等)などから総合的に判断されます。
審査の流れやどんな内容かといったことも気になる方がいらっしゃると思いますので、そちらは後にお話ししますね。
あくまでも、要介護認定を受けた人の中での割合にはなりますが、介護度別の人数が年間どのくらいいるのか、過去の推移がこちらになります。
高齢人口が増加しているため自明のことではあるかもしれませんが、介護度ごとに推移をみてみると毎年人数が増加していることがわかります。
これは私の感覚的なことで、認知症の度合いによっても違ってくるかとは思いますが、あまり認知症が進行しておらず、有している疾患と加齢による身体機能の低下から、日常生活にほんの少しサポートが必要になっている方(立ち上がる際、トイレでズボンを下す際など)は、もしかしたらすでに要介護2くらいの判定が出るレベルかもしれません。
ちょっとしたサポートだけなので、夫婦で暮らしていたらどちらかが少し手を貸せば済む状態で、介護認定を受けていないケースも多いと思います。
でもそんなちょっとしたサポートが、徐々に負担になる時が必ず訪れます。
サポートが軽く済む状態でも、例えば、歩行の際に転倒が起きたら、それがきっかけで寝たきりになる場合も考えられます。
実際に、介護が必要になった原因をみてみると、”認知症”、”脳血管疾患”、”高齢による衰弱”、”関節疾患”にならんで、”骨折・転倒”の割合が高いですね。
転倒はある日突然のことですから、少しずつ悪化する症状と異なり、サポート体制の準備ができません。
つまり”予防”の段階でサポートを考えることが、その後の生活を負担を最小限に送るコツだと私は思います。
転倒のリスクを減らす方法としては、例えばこれまでなかった手すりを付けるとか、風呂場に椅子を設置するとか、環境面の整備も可能です。
そしてそれらは、介護認定さえ受けていれば給付の範囲でサポートしてくれます。
中には、家族に世話をしてほしいと考える方もいらっしゃるし、家族の世話は自分たちでと考える方もいると思います。
一方で、家族になるべく負担をかけたくないと思う方も多いと思います。
現実は、介護を理由に仕事から離れなくてはならないケースも多く、介護疲れによるメンタルヘルスの不調も問題となっています。
介護が仕事へ及ぼす影響
2017年、団塊の世代が初めて65歳以上の”高齢者”の仲間入りをし、団塊ジュニアとよばれる今の43歳~45歳の働き盛りの世代に”親の介護”の可能性が増えてきています。
今年2017年は、介護を理由とした離職が一気に増えると考えられており「2017年問題」などとも言われ、介護施設の整備等対策が急がれています。
介護を理由に退職せざるを得ない人は年間約10万人以上。
実際に、介護を機に離職した理由を見てみると、「両立が難しい」が最も多く、「自分の心身の健康状態が悪化」が続きました。
介護とメンタルヘルスの問題はとても深刻です。
介護も仕事も”自分がやらなければならない”と、1人で責任を背負ってしまい、職場へも”迷惑をかけてしまう”と十分な相談もできないままがんばり続け、自身の体調へ支障をきたしてしまう…
そんな悪循環が現実では少なくありません。
利用できる介護サービスも、知らない人が生活に割り込んでくるようで、気も使うし煙たがる高齢者もいます。
でもそんな状況が同居者や家族の時間の多くを介護に費やさせてしまっているのです。
介護度別にみてみても、「ほとんど終日」介護に時間を使っている同居者が多いことがわかります。
もちろん、同じ介護度でも、サポートの度合いは人それぞれですが、要介護5を見てみると、2~3時間程度、必要な時に手を貸す程度で済んでいるケースもあります。
この方たちは、外部の介護サービスを上手に活用していると考えられます。
でも問題はその割合が実に少ないということ。
終日介護に時間を使うなら、当然仕事なんてできませんよね。
プライベートも当然ありませんよね。
介護にあたっている人の年齢構成をみてみると、男女によって割合は異なりますが、50~69歳までの層が全体で最も高い割合となっています。
40代なんて、企業の役職者クラス。
次期会社を背負っていく立場にある方たちが多い年代です。
つまり、今後日本の経済を担っていく世代が次々と介護を理由に職から離れなくてはならない状況になっているのです。
これは大変由々しき事態。
一刻も早く、介護と仕事を両立できる職場環境の整備が急がれます。
なお、こちらはここまでの話でご想像いただけることと思いますが、介護する人の続柄は、配偶者・子が最も多いですね。
この図で私がとても気になったのが「子の配偶者」。
義両親の介護を担っている嫁さんが世の中には非常に多いということ。
結婚している女性は避けてはとおれないこの問題。
特に、夫が年上の場合やすでに義両親が疾病を抱えている場合は、30代・40代と若くして介護が現実味を帯びます。
今回統計は出しませんが、義両親の介護が原因でメンタルヘルスの不調に追い込まれた、それが原因で離婚、というケースも実は多いのです。
解決方法はとにかく家族で話あうより他はありません。
トラブルを避けたかったら、外部のサービスを利用しましょう。
日本は、外部のサービス・他人に頼るといったことを嫌がる人が多い文化がなぜだか形成されており、なかなか当たり前のように、”地域の人々で暮らしを支え合う”ということが実現しません。
この問題は最近はやりのソーシャルキャピタルといった議論になってきますので、それはまた次回に。
そんなわけで、介護と仕事の両立について、今後必ず考えなくてはならなくなる親の介護について、少しご自身のこととして受け止めていただけましたでしょうか。
最期に、介護認定について、審査の内容も少しお伝えしようと思います。
ご興味ない方はここまでで。
要介護認定の概要
これまで、家族の介護負担が大きいよという統計とともに、外部のサービスを利用する手段について少し触れてきました。
国の介護給付を受け、介護サービスを受けるためには、まず要介護認定が必要です。
介護度は自己申告ではなく、国の調査員が実際に生活環境の聞き取りや四肢の動作などをチェックして決められます。
介護度を審査してもらい、「要介護」と判定されることを「介護認定を受ける」と言い、必要な方は介護度に応じて介護サービスを受けるための給付金が出るのです。
でも実際は、介護を必要としているのに介護認定を受けていない方がいらっしゃる。
では、どの程度なら介護認定を受けることができるのかをご紹介しましょう。
要介護認定の流れ
前述しましたが、要介護認定とは、どの程度の介護が必要かというものを審査してレベル判定を行うことです。
要介護認定の流れはこちら。
- 市町村の認定調査員による心身の状況調査(認定調査)及び主治医意見書に基づくコンピュータ判定(一次判定)を行う
- 保健・医療・福祉の学識経験者により構成される介護認定審査会により、一次判定結果、主治医意見書等に基づき審査判定(二次判定)を行う
申請自体は市町村の窓口で「要介護認定審査を受けたい」とでも申し出ればOK。
申請から判定が出るまでの流れはこちらです。
調査員の方は自宅もしくは入院中なら病院に来てくれます。
調査の内容
調査員は、次のような身体機能について本人や家族から日常生活のことを聞き取ったり、実際に動作をしてもらった内容を記録します。
- 麻痺や関節の動き
- 寝返り・起き上がり・歩行
- 入浴・排泄・食事
- 衣服の着脱
- 金銭管理
- 視力・聴力
- 物忘れ・徘徊などの行動
- 14日以内に受けた医療
調査の日は、生活の状況をより正確に聞き取るために、家族の同席も求められますが、受け答えがしっかりできるならばお1人でも全く問題ありません。
入院中でしたら、病院の相談員などが代わりに同席してくれるケースもありますので、どうしても都合がつかない場合は相談してみてください。
調査はだいたい1時間くらい。
ありのままを受け答えすればいいだけなので、特に構える必要はありません。
ただ、稀に見栄を張って、あれもこれもできます!と答えてしまう方もいらっしゃる…
それは本人の体の状態に反して低い判定が出てしまうことにつながりかねないため、ちゃんと”ありのまま”を答えることが大事です。
調査の項目はたくさんあるので、こちらに転記しませんが、調査員はこちらの調査票をもって質問するのでご参考まで。
全体版はこちらをどうぞ。
ちなみにこの調査票はオープンに見れます。
市町村のホームページや、高齢者関連の団体のホームページなどにも掲載されていると思います。
おわりに
いかがでしたでしょうか。
今は元気でも必ず迎える高齢期。
特に今後は介護する側も高齢になるケースが多いです。
介護は社会全体で支えるのがワールドスタンダード。
無理せずぜひ国のサポートを正当に受けて、介護される側もする側も、お互いが気持ちよく、生活を続けられると良いなと思います。
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