2015年、昨年の12月、会社におけるス従業員に対するトレスチェックが義務化されました。
職場において、悩みを抱えていたり強いストレスを感じている人の数が顕在化してきて問題となっているためです。
メンタルヘルスの不調は、体の不調に直結し、仕事の効率を低下させるのみでなく、その人のその後の人生を悪い方向に向かせてしまうことにもつながりかねません。
今回は、日本の産業の労働現場におけるメンタルヘルスに関連する現状の問題点と、この事態に対する国の対策について取り上げます。
目次
日本の労働者の5割はストレスを感じている
厚生労働省による平成26年に実施された調査では、現在の仕事や職業生活に関することで、強いストレスとなっていると感じる事柄がある労働者の割合は 55.7%。
なんと5割以上の労働者が、仕事で強いストレスを感じているという結果でています。
強いストレスの理由の上位3つはこちら。
- 仕事の 質・量:57.5%
- 対人関係(セクハラ・パワハラを含む): 36.4%
- 仕事の失敗、責任の発生等: 33.2%
第1位であった「仕事の質・量」に関しては、なるほどなるほどと合点がいく方も多いのではないでしょうか?
日本は働く時間が世界一長いことで知られ、「日本人は真面目」とか「勤勉」とか表現されることが多いです。
その実態は、「残業時間が多すぎる」ということ。
人件費削減のために、サービス残業を強いられている会社も多いことと思います。
しかし一方で、労働生産性が低く、2014年の調査ではOECD加盟国中なんと21位という情けない順位に。
勤勉な日本人だからこそといえば聞こえはいいですが、文字通り身を粉にして働いて、でも生産性は低く、さらに心身の健康も害してしまっては良いことなしですね。
20代の死因のうち5割が自殺によるもの
内閣府の平成26年自殺対策白書では、20代の死因のうち、その約50%が自殺によるものと報告しています。
そして年間の自殺者数は約2,800人、その自殺者の6割~9割の人が、メンタルヘルスに何らかの不調を抱えていたといわれています。
単純な計算から、20代で自殺につながる原因がメンタルヘルスの不調である人数は、
- 1日に5~7名
- 年間で1,700~2,500名
いることになります。
若い人がメンタルヘルスの不調で命を絶っている現状は、何とか減らしたいものですね。
精神疾患とは「こころの病」
メンタルヘルスの不調は精神疾患に直結します。
精神疾患とは、簡単にいうと脳の働きが不調になる病気のことをいいます。
現代では「こころの病」と呼ぶことが多いですね。
人間の脳は、「情報を認識する」、「考える」、「感情を出す」といった働きをして、それらを行動に変換します。
それらのコントロールが上手にできなくなるのが「こころの病」の特徴で、下記のような症状になって現れます。
- 強い不安
- 落ち込み
- 不可解な行動
- 幻想・妄想
- 動けない・起きられない
- 考えが整理できない
- 強迫(手洗いなどが止まらない)
- 肩こり・頭痛
- 食べられない
- 眠れない
- 感情をコントロールできない(すぐキレる・熱くなる)
精神疾患は「感情」というイメージが先行しがちで、上記の症状をみても一見「なまけているだけ」とか「やる気がないだけ」とか思われがちです。
でも実際は、このような症状になるのは脳の働きが悪くなっているのが原因。
女性の方は経験があるかたも多いかもしれませんが、月経の前などは自律神経の乱れから、イライラしたりだるい気持ちになったりしますよね。
その症状をとても重たくしたイメージといえば伝わりやすいでしょうか。
精神疾患は今や現代病ともいえ、社会全体で取り組むべき課題です。
メンタルヘルスの不調による精神疾患の経済的損失は8兆円
また、精神疾患を社会的損失という側面からみたときに、総合失調症・うつ病性障害・不安障害による社会的損失は8兆円以上と試算されるほど大きい損失になります。
8兆円とは日本の国家予算の10%程度でしょうか。
8兆円あればたいていの社会問題は解決すると思います。
待機児童問題は解決して「保育園落ちた〇ね!」問題は起こりませんし、疾病や障害などによる生活困窮者をなくせば、それに伴って生じる様々な問題も防ぐことができるはず。
損失の内約をみてみると、
- 患者の治療・サポートのための医療・社会サービスなどの費用
- 患者本人の家庭・職場での生産性低下による損失
- 精神疾患が原因での死亡により実現されなかった期待収入の損失
などがあるとされ、社会が成長するための資本に大きな悪影響を与えることがわかります。
出典:学校法人慶応義塾『平成22年度厚生労働省障害者福祉総合推進事業補助金「精神疾患の社会的コストの推計」事業実績報告書』
上記の図を見てもわかるように、メンタルヘルスの不調が招く経済的損失は規模がとても大きく、解消に向けた取り組みは必須であると言えます。
そんな背景とともに、厚生労働省はメンタルヘルス対策を推進しており、昨年12月から会社におけるストレスチェックを義務化するなどの取り組みを進めています。
国のメンタルヘルス対策
メンタルヘルスの問題は、実は平成14年の調査時点で、労働者の6割以上がストレスを抱えている実態がわかっていました。
これをきっかけに厚生労働省では、平成12年と18年に心の健康のための指針を策定してきました。
平成18年度の指針では、
- セルフケア
- ラインによるケア
- 産業保健スタッフによるケア
- 事業場外資源によるケア
この4つのケアを継続的かつ計画的に推進することとしていて、
- 教育研修・情報提供
- 職場環境などの把握と改善
- メンタルヘルス不調への気づきと対応
- 職場における支援
このような取り組みについて、関係者が連携して積極的に推進することなどを示しています。
また、産業医のメンタルヘルス対策に関する研修や、専門家による指導・助言の実施、相談機関の登録・紹介等の支援事業等を実施しています。
そして、記憶に新しいのがストレスチェックの義務化。
ストレスチェックの制度
平成27年12月より、労働者にストレスチェックを行う制度が始まりました。
この制度は
- 労働者のメンタルヘルス不調の未然防止
- 労働者自身のストレスへの気づきを促す
- ストレスの原因となる職場環境の改善
などを目的としています。
ストレスチェックテストは、正確には「職業性ストレス簡易調査票」と呼ばれるアンケート調査です。
設問の内容は、
- 仕事について
- 最近1か月の体の状態
- 周りの人
に関する項目で構成されています。
仕事については、その仕事の量や、その仕事に対してどれだけ集中力や緊張が必要かなどについて。
最近1か月の体の状態は、感情についての「イライラする」や、「憂鬱だ」といったことと、身体の自覚症状として「食欲がない」「頭痛がする」といったことについて。
周りの人については、悩みを打ち明ける周囲のサポートの状況について。
それぞれ満足~不満足の4択で回答するようになっています。
詳しくはこちらからチェックすることができます。→厚生労働省版ストレスチェック
厚生労働省の案内しているストレスチェック票はすべて無料でダウンロードできるようになっています。
まだ受けていないかた、ぜひ1度回答してみてはいかがでしょうか。
おわりに
ストレスチェック、さっそく回答したみた方はいらっしゃるでしょうか。
このストレスチェック、ほかにも専門家の相談つきで、独自でオリジナルの尺度を用いた製品を出している企業などもたくさんあります。
その製品はもちろん有料ですが、専門家によるフィードバックを売りにできるほど、メンタルヘルス関連の悩みは現場で深刻であることがわかりますよね。
「ストレスチェック」をとおして、労働者がメンタルヘルスの重要性を知ったり、本人の自覚につながったりすることで、心身の不調の抑制につながれば良いなと思います。
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