冬から春ごろにかけては比較的安定した天気が続いてきました。
でもこれから夏にかけては、梅雨の時期や台風・真夏時の急な雷雨など、天候の急激な変化が多くなります。
ストレスを感じやすい繊細な体質の方は、そんな天候に体調がものすごく左右されます。
すでに天候が原因で何かしらの症状が出ているという人も多いのではないでしょうか?
かくゆう私も夏が嫌いなのですが、その理由の1つが偏頭痛を起こしやすいから。
実はこれにはきちんとした科学的根拠があったのです。
今回は、そんな天候の影響を受ける病気や症状「気象病」の天気痛などの症状、対処の仕方についてご紹介します。
目次
天気が悪いと感じる体調不良
あなたは、天気が悪い日、身体の不調が出るタイプでしょうか。
私はもろに食らってしまう体質です。
この後、具体的な症状あげますが、一般的によく言われる体調不良は割とずらっと全て当てはまるほど。
気圧が少し低くなると耳に感じる圧が敏感に変わって頭痛もひどくて、外の天気を確かめる前に「今日の天気はよくないかんじ」と、気象予報いらずの正確さ。
ひどい日は頭痛薬を服用しますが、眠くなってしまうのが嫌なので、毎年この時期はじっと耐え忍ぶしかないと腹をくくっています。
似たような症状の方、多いのではないでしょうか。
具体的な症状
では、さらに皆さんの共感を得るために、天候に左右されやすい体調の変化を列挙してみます。
- なんだかだるい
- 身体が重い
- 疲れがとれない
- 寝ても眠たい
- 腰痛が出やすい
- 神経性の疾患が悪化しやすい(痛みが出やすい)
- 古傷が痛む
- 頭が痛い
- 気分が落ちる
- 電車で立ってるのがしんどい
- 乗り物酔いしやすい
- 食欲が落ちる
- 胃の調子が良くない
- 肩こりがひどい
一般的によく言われるのがこれらですね。
すべてが科学的根拠があるわけではありませんが、天候が影響する体調不良のメカニズムに関して、「これも関係あるだろう!」と考えられているものたちです。
いかがでしょう、当てはまりますか?
これらの症状にはちゃんと名前がついていて、歴とした病気です。
気象病・天気痛・5月病
まず前提に、天候は体調に影響を与えます。
天候の影響を受ける病気や症状をまとめて「気象病」と呼びます。
そして、気象病の1つに、天気が悪くなると痛みが悪化する「天気痛」があります。
この呼び名は、日本の研究者で世界で先陣を切って気象と体調の関係を追究している佐藤純先生から広まったもの。
佐藤先生はとっても有名で、多くのメディアで取り上げられ、2015年にNHKの「ためしてガッテン」にも出演されています。
ちなみに、なんかやる気が起きない「5月病」も、同じく季節の変わり目・天候に左右される症状で、気象病の1つといえるでしょう。
もちろん「5月病」は病名ではありませんよ。
天気痛の疾患の代表は片頭痛
天気痛の代表的な疾患は片頭痛。
片頭痛とは感じ表記で偏頭痛とも書きますが、厚生労働省は「片頭痛」で統一されています。
片頭痛は頭痛の一種です。
頭の片側だけ(両側のケースもあります)が突然ズキンズキンと脈打つような痛みがでます。
私自身が片頭痛持ちなので、そのつらさがよーくわかりますが、どんな頭痛なのかというと、
- 痛みはじめは突発的なことが多い
- 「ズキンズキン」・「ガンガン」と脈打つような痛みが何時間も続く
- ひどいと吐き気や嘔吐を伴う
- 痛すぎて動けなくなる
- 仕事・勉強・家事なんて痛くて無理
- ひどいと寝込む
- 動くと痛みが増すのでじっとしているしかない
- 姿勢を変えたり、頭をちょっとでも傾けようものなら痛みが増す
- 胃の調子も悪くムカムカする
- いつもはなんでもない光がまぶしく感じて、暗いところに避難したくなる
- いつもはなんでもない音がうるさく感じて、静かなところ避難したくなる
- においにも敏感になり、夏の雨天時の電車内などは本当に無理
こんなかんじでしょうか。
ひどい時はこの症状全部出ますから…
ただの頭痛でしょうと、片頭痛に全く悩まされない頃は思っていましたが、とんでもない。
天気痛のテーマゆえに、急な天気の変化で片頭痛が出ている方、きっと心の底から共感できることと思います。
ちなみに、片頭痛は前兆がある時とそうでない時があります。
目の前にチカチカとしたフラッシュのような光やギザギザした光があらわれます。
視野の一部が見えにくくなる閃輝暗点(せんきあんてん)が出ることもあります。
私はチカチカが出る時もあれば、出ない時もあります。
だいたい20~30%の人が前兆ありだそうです。
そういうわけで、天候に影響されて症状が出やすい代表は片頭痛ですが、その他にも、関節の痛みや肩が凝るなどの症状が出ている人が大勢います。
関連文献・研究結果
気象の変化と体調・病気についての調査が公開されています。
天候と体調に関するアンケート調査
これはちょっと古いデータになってしまいますが、2004年に実施されたアンケート調査です。
それによると、
- 回答者のうち81%が「天候と体調に関係がある」と回答
- 73%が「天候の体調への影響を経験している」と回答
- 天候との関係があるとした症状は、「寒くなると肩がこる」「乾燥すると全身がかゆくなる」「天気が悪い日が続くと憂鬱な気分になる」「天候が悪くなると古傷が痛み出す」「天候が変化すると関節が痛くなる」
- 心疾患を患っている人は天候が悪くなると、胸が締め付けられる人が多い
- 疾病者は健常者に比べて、気温が激しく変化するとき、頭痛や目まいの経験を持つ人が多い
- リウマチ患者の9割近くの人が天候が変化すると関節がいたくなる経験がある
- 暑い日に運動すると極端に喉が渇くのは、やはり糖尿病の人
- 「天候や季節の変化と体調との関係」について情報提供されることについては、78%の層が役に立つと回答。
- 特に頻繁に経験している層の92%が役に立つと回答
- 「天候や季節の変化と体調との関係」についての研究が進められていることについて、82%の人々が重要なことであると回答
大事なところだけ言い直しますと、
- 8割の人が天候と体調に関係があると考えていて
- 7割を超える人が実際に体調への影響を経験している
- 特に体調に変化が出るのは、疾病を持っている人に多い
ということ。
天候の影響を経験している人に回答してもらった、症状の集計結果がこちらです。
出典:テルモ株式会社「天候や季節の変化と体調との関係についての意識・経験」
「憂鬱な気分になる」が第2位で、精神的なダメージも大きいことが分かると思います。
でも実は、気象病に関する過去の研究では、気象と痛みの関係には肯定的なものと否定的なもの両方の報告があります。
研究の結果から、関連が見いだせなかったケースと関連が見いだせたケースと、両方あったからです。
天気と痛みの関係を調べるのは難しい
佐藤先生はご自身の研究結果より、天候と痛みは関連があるんだ!ご豪語されています。
でも実際は、そのメカニズムの解明はまだ途中段階です。
このメカニズムの解明は、最初はラットを使った動物実験で調べられていました。
人の症状について調べるのは、例えば他の症状が併発している場合や、本人の感覚的な症状の捉え方に左右されがちともあり、なかなかに難関でした。
が、最近はそれらをクリアし、人を対象とした研究も進んでいます。
天気痛のメカニズム
佐藤先生は、一連の研究より、天気痛のメカニズムをこんなふうに考えています。
気圧や温度といった環境の変化が自律神経のストレス反応をひき起こすのではないか?
ここで急に表れた自律神経とは何か。
ストレスと自律神経
自律神経は、体温調節のために汗を出す汗腺、尿を溜めて排泄する膀胱、心臓の拍動といった、人間の身体の働きをコントロールする神経です。
自律神経には交感神経と副交感神経の2種類あって、お互いが働く役割と時間を上手に折半しています。
交感神経は、興奮や緊張状態の時に心臓の鼓動を速くしたりする働きをする一方、副交感神経は、落ち着いてリラックスしている状態で働きが強くなります。
そして自律神経の働きに大きな影響を与えるのがストレス。
自律神経のバランス
詳しいメカニズムは難しい話しになりますので割愛します。
簡単にいうと、特に精神的なストレスは自律神経を乱します。
頭痛や肩こりが起こったり、慢性痛がより悪化させるのです。
ストレス反応時には交感神経が過剰に働きます。
交感神経とは、活動状態の身体をコントロールする神経ですね。
反対に、休息モードをコントロールする副交感神経が働かなくなってしまいます。
つまり覚醒モード状態。
交感神経が優位な状態ですと、アドレナリンがたくさん分泌されるため、がんばろうと思えばがんばれてしまいます。
試験前日・納期直前の追い込まれた時にがんばれるのはこの働きのおかげです。
でも、副交感神経が働いていない、つまり本来は休息して回復時間が必要なのにそれができない状態です。
この状態を続けていると、緊張状態時はいいものの、それが終わった時が問題。
一気に疲れがでて寝込んだり、頭痛をはじめ身体のいろんなところに症状がでます。
ひどい時はエネルギーが空っぽになってしまってもうがんばれなくなったり。
この状態が”うつ状態”です。
つまり、私達の健康状態と 自律神経のバランスはとっても重要だということです。
天気痛に関連する要素と疾患
実際、天候の変化を感じ取る「気圧センサー」は、身体の機能の何にあたるのかは、まだわかっていません。
気圧センサーがあると考えるとつじつまが合うことが多いため、そう仮説が立てられているのです。
佐藤先生は天気痛研究の先駆者の1人ですが、他の国の研究者からも天気痛に関連する要素が次々と明らかになっています。
天気痛を引き起こす要素
これまでに明らかにされてきた研究では、天気痛を引き起こしたり悪化させたりする要素は、
- 気圧
- 気温
- 湿度の変化
- 雨
- 雷
- 風
です。
天気が悪い時の条件はほとんど列挙されていますね。
悪天候の日はたいていが、これらのいくつかが合併しているケースがほとんどだと思いますが。
季節の変わり目で体調を崩す人が多いのも、気温や気圧・湿度の変化などによるものということです。
ちなみに私は、割と雨天時よりも曇りの日や風が強い日に「なんか今日調子変だな」と感じることが多いです。
イマイチピンとこない方は、身近な例でいうと、例えば新幹線や飛行機・エレベーター。
耳の鼓膜に圧力がかかる感じがおわかりなるでしょうか。
この圧力が不快に感じたり、頭が圧迫されているような感覚で、身体のいずれかに痛みが出たら、それはもう立派な天気痛。
天気痛の代表的な疾患
では次に、実際にどんな病気が天気の影響を受けやすいのかをまとめました。
具体的な病名でいうと、
- 腰痛
- 頚部痛
- 外傷治癒後の疼痛(骨折痛,瘢痕痛)
- 片頭痛
- 三叉神経痛
- ヘルペス後神経痛
- 神経絞扼症候群
- 関節リウマチ
- 変形性関節症
- 線維筋痛症
これらがあげられます。
特に、先に取り上げた片頭痛や関節リウマチ、変形性関節症、線維筋痛症などは文献が多くあります。
生活上の環境の変化
基本的に、天気痛は気圧の変化が大きくに影響していることが分かっていただけていると思います。
私達の生活では、気圧が変化している場面が割と多くあります。
たとえば、
- 飛行機
- ロープウェイ
- 高層ビル
- 新幹線
- 冷房の効いたオフィスと暑い外
- 暖房の効いたリビングと寒いトイレや浴室の脱衣場
このようなケースが考えられます。
普段の生活の中でも気圧が大きく変化する場面がたくさんあるということです。
つまり、私たちの身体の中では、普段から割と強い自律神経反応が起こっているということなのです。
なんだか不調だなという日やタイミングがありましたら、気圧の変化に注意を払ってみると原因が予想できるかもしれません。
これからの気象病対策
天気痛の1番の予防策は、「ストレス」をなくすこと。
これが1番、本当にこれが1番です。
それが例えば人間関係なのであれば、ストレスになるその関係はいっそ断ち切っていいと思います。
もちろん、断ち切れない状況が多いからこそストレスになるのだとは思いますが…
そして2番目の予防策としては、気圧の変化を受けにくい生活空間を模索することが大事です。
体内からの改善方法の1つが、自律神経系の反応をより健康的にする対策。
今後、気象変化は今後ますます激しくなります。
冬と夏の寒暖差は大きくなり、台風の規模、爆弾低気圧の発生も増えていますよね。
地球温暖化の問題もあります。
近年は特に環境の変化が大きいため、天気痛ではなかった人も新しく発症しています。
そんなケースを乗り越えるため、例えば旅行などで体調が万全の状態で!とお考えの際は、旅行日程の天気予報に気を配って、天気痛に効くといわれている酔い止め薬を携帯するなど、このような事前の準備が大事です。
また、突如あらわれた頭痛などの症状で、もう動けないひどい状態でしたら、迷わず医療機関に行きましょう。
ちなみに、片頭痛でしたら服薬で一瞬でおさまります。
よくいわれる頭痛解消法
その他、頭痛に関して申し上げると、根拠のないものも含めてその場でできる解消法がたくさんウェブサイトで紹介されています。
代表的なものを拾うとこのようなかんじです。
- 首の後ろのツボを押す
- 首の後ろを冷やす(慢性疾患からくる痛みの場合は温める)
- 人込み・騒音を避ける
- 首のストレッチをする
- コーヒーやお茶などカフェインを摂る
- 部屋を暗くする
ただ、頭痛には種類があり、痛みの出方や場所によって対処法を間違えると悪化する恐れもあります。
どれかは効くと思って試してみてもいいとは思いますが、ひどい時は病院へ。
安静にするのが一番ではありますけれども。
その他に、よくあるパターンですが、悪天候時の満員電車がめまいがするという方は少なくないと思います。
天気の悪い日に限って「車内で体調を崩されたお客様の救護にあたって~」というアナウンスでダイヤが乱れることがありますよね。
忙しい時間に遠回りはしたくないと、ついついがんばってしまう気持ちもわかります。
でも少し時間をかけて体調を整えていいと思うのです。
例えば、
- 無理して立たずに座れる経路に替える
- 優先席に堂々と座る
- 始発駅が近いならそこまで行ってから座る
- 途中下車しまくりながらゆっくり移動する
など、体調不良時のちょっとした「手間」は惜しまず「楽」するようにしたらいかがでしょうか。
おわりに
実際、天気が悪かろうと良かろうと、その日にこなさなければならない仕事や家事などは変わりません。
でも、天候と体調が関連していることを知って、これまで天気の悪い日はなんだか不調だと感じている方が、「天気痛だ」と確信できれば、その場を服薬やいる場所を変えるなどで改善の見込みがあります。
慢性疾患を持っている方でしたら、天気予報をみて、悪天候の日にはなるべくゆっくり過ごせるよう、無理なスケジュールを組まないようにするなど対策がとれます。
といっても、急な天気の変化で「今日きついな」となる日がほとんどだと思います。
そんな日は「お天気悪いから天気痛の症状がでてる」と半ば諦め、焦らずに堂々と「今日は体調が悪いから無理しない!」と決めて行動するようにしましょう。
少なくとも、私はそうしています。
せっかく沢山書いて頂いていますので、お願いがあります。
記載されている情報が、佐藤の古い書籍等に基づいているため、最新のものをお調べになって、修正して頂きたいと思います。すでに人を対象とした実験においても、メカニズムの解明は進んでおります。修正後の文書をアップされる際には、必ず出典先を明記して下さい。佐藤の写真を無許可で利用するのは肖像権に関わりますのでお控え下さい。
日本気圧メディカル協会 佐藤
日本気圧メディカル協会 佐藤さま
ご返信が遅くなり申し訳ございませんでした。
まずはご丁寧に該当領域についてのご指導いただきましたこと、誠にありがとうございます。
さっそくご指摘いただきました箇所を修正いたしました。
修正後の記事は、基本的な知識レベルまでの内容といたしました。
この時期は特に体調不良でお悩みの方が多い中、少しでもエビデンスの高い研究をわかりやすい読み物にしたいと考え、貴方のご研究にたどり着きました。
気象と疾患の関連につきましては、当方まだまだ勉強不足でございましたことを反省し、お詫び申し上げます。
また何かございましたらご意見お願いいたします。
重ね重ね、ご多忙の折、当方の記事へのご指導誠にありがとうございました。