はやり目というのをご存じでしょうか。
感染力が非常~に強い結膜炎の一つで、子供は特にかかりやすい病気です。
完治するまでだいたい2週間かかるともいわれていて、診断されてしまったらそこから最低2週間は大変な事態に。
でも診断が微妙なことも多く、幼稚園・保育園などでは集団感染につながりやすいのが問題の1つ。
今回は、はやり目についての基本知識と、微妙な診断について紹介しましょう。
目次
はやり目とは
正式には「流行性角結膜炎(りゅうこうせいかくけつまくえん)」といって、いくつかある結膜炎のうちの1つです。
結膜炎とは、細菌やウイルス・アレルギーなどが原因で目が炎症を起こして、充血したりコロコロ痛くなったり目ヤニが出たりする病気です。
結膜炎はアレルギー性のものを除いて基本的には人に感染します。
このような症状が出ていたら、または出ている人がいたら要注意です。
はやり目の原因
アデノウイルスのうち、いろんな型がある中の8型、19型、37型が原因となります。
この〇型というのは、人でいうところの血液型と似ていて、ウイルスや細菌の種類を分ける基準となるもの。
同じウイルスでも、この型が違うだけで違う症状や病気になるのです。
たとえば、このアデノウイルス、今回ははやり目の原因として取り上げましたが、その他にも
- プール熱(咽頭結膜炎):3型
- 呼吸器感染症:3型・7型
- 流行性角結膜炎(はやり目):8型・19型・37型、53型・54型、56型等の新型アデノウイルス
- 出血性膀胱炎:11型
- 胃腸炎:31型、40型、41型
このように、病気の種類は型によってさまざまです。
ちなみに、アデノウイルスの型は現時点で51種類の型があることがわかっています。
つまり、「アデノウイルス1型」「アデノウイルス2型」…と続いて「アデノウイルス51型」まであるということ。
それ以降の型は「新型」となります。
基本的に、感染症は一度かかれば体の中に抗体ができて、2回目以降かかることはありません。
でもやっかいなのは、型がたくさんあるため、同じ型にしかつうじないこと。
つまり、何度もかかる場合もあるということ。
ちなみに、東京都感染症研究所によると、日本の子供の8型に対する抗体保有率は20%未満、19型および37型に対しては10%程度です。
はやり目の症状
細かい症状はいろいろありますが、主にこれ。
- 充血
- めやに
- まぶたの裏側のブツブツ
- ゴロゴロ感
片目だけに症状がでることが多いです。
わかりにくいよ!ってことはなく、朝起きたら目が真っ赤、目やにびっしりで目が開かないほど、
素通りできる症状ではないのですぐわかります。
なお、専門用語でいうとこんな症状がでるそうですよ。
- 耳前リンパ節のはれ
- 圧痛
- 結膜に小さなぶつぶつができる急性濾胞(ろほう)性結膜炎
- 眼瞼(がんけん)の浮腫(まぶたの腫れ)
- 流涙(なみだ目)
- めやに
- 眼の充血
感染力がとっても強いので、片目が発症した後、2日から3日以内に他方の目にもうつります。
治るまでにかかる期間は2週間から4週間。
重度の場合だと、しつこいくらい症状がおさまるのに時間がかかります。
軽度でも、まだ目がモヤっとするといったいつもと違う感じが長く続きます。
こんな状態になったらすぐに眼科に行きましょう。
市販の目薬で十分と考えず、即刻眼科です。
なぜかというと、前述しましたがアレルギーが原因の結膜炎を除いて、基本的に人にうつるから。
はやり目だった場合は、その感染力の高さは恐怖レベル。
仕事は休みにくいとは思いますが、半休をとるなり仕事終わりでも良いので必ず受診しましょう。
こどもの場合は、はやり目なら保育園・幼稚園、学校は出席制限がかかります。
それほど気を付けなければならない感染症というわけです。
病院ではただの結膜炎かはやり目かを検査して調べますが、症状を伝えただけで「うつる可能性が高い」とされ、他の人もいる待合室でなく、診察の順番が来るまで個室で隔離となります。
また、はやり目だった場合は、「この病院ではやり目が出ました」という報告を保健所して、集まった感染情報は地域全体の感染対策のための貴重な情報になります。
本当は製薬会社さんのように、なんでもかんでも病院へ行きましょうとは言いたくないのですが、感染の疑いがあるものについては別。
即刻眼科に行きましょう。
その際、事前に電話をしてこんな症状で受診したいという旨を伝えると病院側に親切かもしれません。
感染症の可能性がある患者さんは別の部屋で待機というケースがほとんどですからね。
はやり目の潜伏期間
感染者からうつったら、8日から14日のなかでじーっと潜伏してやっと症状として現れます。
この、症状には現れていないけど体内にウイルスや細菌がいる期間をその名のとおり「潜伏期間」と呼びます。
潜伏期間が短いということは感染してからの症状が早くでるため、次に感染するまでにすぐ対処できます。
でも潜伏期間が長ければ長いほど、感染しているのに症状が出ないから気づかない状態が続くことになります。
本当は感染しているから気を付けなければならないのに、知らず知らずのうちにまた他の人へ感染させてしまっていることも多いのです。
ちなみに、ふつうののど風邪などはだいたい5日か6日くらい。
インフルエンザは短くて1日~3日。
ノロウイルスは1日~2日。
麻しん(はしか)は10日~12日と比較的長期です。
アデノウイルスは比較的長いほうだといえるでしょう。
豆知識:潜伏期間と感染症の特徴と予防接種
感染対策をする時に潜伏期間はとても大事な情報です。
例えば、麻しんのように長く症状が出ない期間がある感染症の場合は、発症してから感染拡大を阻止するという方法では感染を防ぐことができていないことが多い。
だから、そもそも感染しないように予防接種の徹底が必要です。
麻しんの予防接種はこどもの頃に受けているはずのもので、受けてさえいればほぼ100%予防ができます。
現在、麻しんは風疹との混合ワクチンで予防接種ができます。
「MR」と呼ばれるものが麻しん・風疹の混合ワクチンのこと。
麻しんの予防接種率は95%を達成しているものの、まだ100%には満たない状況です。
オリンピックが日本で開催されるため、政府は集団感染を防ぐため感染予防へ力をいれています。
取り組み目標の1つが「風疹対策」。
麻しん・風疹対策推進会議を設置して予防接種への啓発活動を強めて、2020年には風疹撲滅を目指しています。
風疹は、障害を持つこどもを生んでしまうリスクがあります。
でも予防接種で100%完全に予防ができる。
ということで、キャンペーンは風疹を主眼に置いていますが、同時接種の麻しんも同様に予防接種率を高めるのがねらいです。
予防接種については別の記事で詳しくご説明しております。
下記からぜひご参考に。
さてでは、潜伏期間と感染のしやすさと対策について、もう一つ例をあげましょう。
みなさんおなじみのインフルエンザ。
インフルエンザは感染力が強く、うつりやすい感染症です。
ご紹介したとおり、潜伏期間は1日~3日。
感染したら割とすぐに高熱などの症状が出て、どんどん感染を広げていくイメージですよね。
インフルエンザのうつり方はほとんどが「飛沫感染」。
飛沫感染とは、咳やくしゃみからウイルスが他の人の口から体内に入って感染すること。
逆にいうと、咳やくしゃみから防御できればうつらないということです。
感染してから発症まで数日のため、最初の発症者が出た時点で本人を含めたマスクの徹底と患者の隔離が拡大防止の鍵となります。
とはいっても、インフルエンザと診断が出る前の、インフルエンザかどうかわからない体調を崩した人の咳やくしゃみを防ぐのはとても難しいことです。
もうかかってしまったらしかたがない…
せめて重症化を防ぐことができればOK。
インフルエンザの予防接種は感染予防に100%効果があるわけではなく、「かかりにくい」「かかっても重症化しにくい」というもの。
高齢の方や小さい子供は体が強くないため、インフルエンザに一度かかると悪化しやすく、ひどい場合は別の病気も起こしてしまったり、インフルエンザがきっかけで肺炎になり死亡するケースも稀ですがあります。
そんなケースを少しでも減らそうというのが予防接種の目的です。
このように、感染症の種類によって潜伏期間も異なれば症状の出かたも異なります。
そのため感染対策の方法や予防接種の目的が少しずつ違ってくるのです。
はやり目の感染経路
感染経路とは、感染の方法。
感染経路とはなに?という方はこちらの記事に詳しく紹介していますのでご参考に。
はやり目は接触感染です。
感染した人は、結膜炎や目の充血や目ヤニが鬼のように出たりという症状が特徴です。
その目に触れた手や、その目に触れた本人が知らず知らずに触れたものを介して、ウイルスがついた手で自分の目に触れたりこすったり。
これがほとんどの感染ルートです。
はやり目は主に夏から秋にかけて流行しやすい特徴があります。
そして、秋は花粉症持ちの方が目が痒くなる時期。
目の異常を”花粉症”だと勘違いして、うっかりなんの対処もしないことや病院へ行くのが遅れることも。
こどもにかかりやすい病気ですが、こどもがいるご家庭では、当然大人もうつるリスク大。
十分に対策の知識を持つことが大事です。
病院を受診しても診断がつかないケースも
はやり目は診断がつかないケースが多いです。
どういうことかというと、今多くの病院で使われているはやり目かどうかを検査する診断キットが、6割か7割くらいしか当たらないものだから。
私の子供が通う保育園でも、はやり目がぽつぽつ出た時期がありました。
最初の1人はけっこう重症だったみたいで、「はやり目です」と診断が出て出席停止に。
でもその後、うちの子を含む同じクラスの子供たちが次々に目やに・充血の症状がでるようになりました。
どの子も病院を受診しましたが、結局診断がついたのが最初の子を含めて2人だけ。
同じクラスで同じ時期に同じ症状が出ていて、明らかに「はやり目がうつってる」状況でしたが、まあ診断がつかないと登園できちゃいます。
はやり目は、典型的な症状が揃っていて診断キットでも陽性が出れば「はやり目ですね」と診断できます。
でも問題は軽度な場合。
診断キットで陰性、玄人の医師でも判断がつかない軽い結膜炎の場合。
軽い場合の多くははやり目ではないそうですが、「はやり目ではありません」と断言はできないのです。
症状が最初は軽いけれども、だんだんはやり目の症状になってくることがあるからです。
診断キットの当たり率も高くないことから、疑わしい場合は、眼科医さんは「はやり目ではありません」とは宣言しないと思います。
はやり目ではないとうっかり診断すると、その間に感染を広げてしまう危険があるのです。
疑わしい場合は、対処療法的に結膜炎の薬は出してくれますが、
- 症状が重くなってきたらまた受診してください
- 5日後くらいにまた来てください
そんなふうに言われるはずです。
はやり目の診断がつかなかったら「よかった!」と安心して通勤してしまいますし、こどもも登園・登校させてしまいますが、本当は油断してはいけないのです。
だから、こどもの場合の理想は、はやり目が疑われるときは一応登園・登校は中止し、その後の症状をみてから再開するということ。
大人でしたら、感染経路を十分に理解できて気を付けることができるので通勤するのは問題ありませんが、感染拡大防止のため、病院の受診はマストです。
なお、はやり目の診断がついたら大変ですよ。
まずこどもの登園・登校は禁止。
2週間ほどお休みして、また病院にかかって検査して”陰性”が出てやっと登園・登校ができるようになります。
だから、とにかく疑わしかった場合は早めに眼科を受診することと、診断がつかなかったからといって安心するには早いということ。
飛沫感染する風邪やインフルエンザは、マスクで咳を抑えることができますが、目はどうにもなりません。
目やには気になるし異物感やゴロゴロする感じも、ついつい手で触ってしまいますよね。
接触感染は、その手が触れたものを媒介にうつっていくので、感染者の近くにいればうつるリスクは非常に高くなります。
家族が感染したら
繰り返しになりますが、はやり目は接触感染します。
感染を拡げないために
東京都感染症情報センターでは、感染拡大させないように次のことに気を付けましょうと言っています。
- できるだけ他人との接触を避けるようにしましょう。
- 眼をさわったらすぐに石鹸と流水で手洗いをしましょう。
- 家族内で、タオル、枕、その他眼やにや涙で汚れそうな物の共用は避けるようにしましょう。
- 入浴は家族内で最後にするか、シャワーのみにしましょう。
インフルエンザ同様、家族に感染者が出たら隔離するレベルで接触を避けるようにしないと、ホイホイうつります。
目が気になって思わず触ってしまうこともあるでしょう。
その時はすぐに石鹸でよく手洗いをすること。
こどもが感染者だったら、いちいち手洗いしていられないほど目をいじくるので大変ですが、できる限りで良いので洗う、または拭き取る等してあげてください。
そして、感染しているこどものお世話でべったりしなくてはならないこともあると思いますが、自分の目に触れることには十分注意して、子どもに触れた後はよく手洗いしましょう。
あと大変なのがタオルや布団など。
タオルは共用しないようにして、感染者の子どもが使ったら煮沸消毒か乾燥機で殺菌が必須です。
タオル・布団の殺菌方法
ウイルスは56度以上の熱で死滅させるという方法で殺菌できます。
タオルの場合、私だったら大きな鍋にお湯を沸かしてタオルを突っ込みグラグラやります。
3分くらいで消毒おわり。
でも問題は布団。
うつ伏せ寝すると目やにや涙がべっとり布団についてしまうと思います。
添い寝していたらもう大変。
でもこれは私の場合ですが、布団ばかりはどうしようもなかった…
一緒に寝ている間にうつっちゃうんですよね。
添い寝しなくても良い家族はぜひ別の布団か別のお部屋で。
添い寝が必須な家族は、なるべく仰向けに寝て、顔を布団につけないようにするくらいしか思いつきません。
我が家では、せめて何もしないよりはいいと思って、子どもが寝るエリアには布団の上にタオルをひいて寝かせました。
そのタオルは翌日消毒。
まあそれでもうつりましたが…
なお、布団の殺菌方法もは、サイズが大きいので、私がおススメする方法はアイロン。
よく通販番組で紹介があるような、熱い蒸気が出る万能クリーナーなんかも使えますが、案外準備が面倒だったりして、我が家ではアイロンが一番融通が利きます。
布団は湿気があるとダニやカビの原因になるので、蒸気が出るスチームモードでなく通常のモードで、布団を全面ゆっくりジュ―っとやってやれば終わり。
さらに外に干しておけばフワフワ~っと飛んで行ってくれるでしょう。
お風呂も要注意
夏場のプールが感染媒介になりやすいリスク環境であることは別の記事でも紹介しました。
でも、公共のお風呂やプールは塩素消毒がしてあるので、感染の心配はありません。
問題は家庭内。
当然いつも入るお風呂や家で遊ぶプールのお湯・水は塩素消毒なんてしませんよね。
ウイルスは水の中でも死なないで、一緒に入っている他の人へ移動する絶好の媒介環境です。
だから、感染者は湯船の中には入らないでシャワーだけにするか、入るなら一番最後にしましょう。
まあそんなの無理なご家庭が多いと思いますので、せめて湯船から出る際はよく体を洗ってから出るようにしましょう。
なお、家族がはやり目の時は、銭湯に行ったりプールに遊びに行ったりも控えるようにしましょう。
おわりに
いろいろとご紹介しましたが、我が家はこどもが軽い結膜炎(診断つかず)になったあと、すぐに私もうつりました。
朝起きたら本当に瞼が開かないほどの目やにで目がゴロゴロ、洗っても洗っても曇った状態なんです。
日中瞬きをたくさんして瞼が潤った状態なら症状はだいぶ寝起きよりはよくなりますが、まぁあの目の嫌な感じはもうストレス以外のなにものでもない。
同じ保育園でも、かかったこどもから家族にまでうつったというお家はたくさんいたみたいでした。
なお、徹底して感染しないように指導した我が家のパパだけは免れました。
つまり、ご紹介した予防方法を徹底すれば感染しないんですよね!
でもそれがなかなかハードルが高い。
そして保育園での「軽い結膜炎」時点での予防意識がどうも低すぎる点については、感染教育の甘さだなと感じます。
麻疹で4年の潜伏期間てSSPEの話ですか?
10〜12日で一般的な麻疹の発症はしますし、ワクチンから獲得した抗体は10年で減少し消えるといわれています。
結膜炎のおはなしは興味深く、アイロンを利用するなどは思いつかなかったのでぜひ友人などに記事を紹介したいですが、麻疹が流行っているいまだからこそ麻疹の一件は書き直された方がよいかと思います。
ご指摘いただき誠にありがとうございます。
SSPEの潜伏期間をうっかり転記しておりました。
さっそく修正させていただきました。
また何かございましたらご意見いただけますと嬉しいです。
そして保育園での「軽い結膜炎」時点での予防意識がどうも低すぎる点については、感染教育の甘さだなと感じます。
⇒まさに同じ様な状況で悩んでいる保育園看護師です。ただし予防意識が低いと言われましても、園児の目が充血しているのでお迎えと眼科受診を依頼→感染しないので登園OK と言われ登園してくる。でもなかなかよくならず。そのうち感染が広まる。再度の受診をお願いしても「伝染らないと言われた」の一点張り。さらに感染が広まるという悪循環。その期間、おもちゃの消毒や保護者啓発を行っても追いつかず。私の感想としては勉強不足の医師の責任はどうなんだ?と腹立たしい思いでいっぱいです。ちなみに近隣の眼科3軒とも、当初の対応が同じなのには開いた口が塞がらなかったです。
コメントをいただきありがとうございます。
保育園の看護師さんの仕事ぶりは、私の園でもとてもよく伝わっております。お話しいただいたようなジレンマがあるだろうことも、可能な限りの啓発は行っていても感染しちゃってるという現状から、予想はできております。言葉足らずでしたが、感染教育が浸透しきれていないなと感じているのは看護師さん以外の職員に対してです。ただこれについて現行の職員さんに落ち度はなく、そもそも国内の保育所をはじめとする福祉施設の、公衆衛生全般への意識が低い点の問題ではないかと…。例えば、専門職の資格取得の過程または入職以降の感染教育の機会を増やしたり、看護師さんに任せきりにせず公衆衛生専門の職員の配置を考えるなど、何らかの改善が必要だろうと個人的には思っております。また、ご指摘いただいたとおり、保護者の認識の甘さも問題ですよね。そもそも公衆衛生教育自体が大学の専門課程でしか詳しく学べないことが良くないなぁと感じます。
医師に対してお感じのことも、なるほど納得いたしました。なにか良い打開策はないものですかね…人材・金・資材等の問題がなければ、理想は各園内に病児保育室を作るとかでしょうか??