皆さん、日々忙しい毎日を送っていることと思いますが、前向きな気持ちで過ごしていますか?
笑いが免疫力アップに影響があることは証明されていますが、同じく、ポジティブな感情も健康に良いことがわかっています。
一方、ネガティブのほうがいいぞ!という主張もあります。
今回は、ポジティブ・ネガティブの健康に対しての影響についてお話しします。
参考にしてみてください。
目次
健康の定義と感情の学問の歴史
現代でいう「健康」とは、ただ単に「体の健康」だけでなく「心の健康」も、つまり「心身の健康」が達成できてはじめて「健康」といえるようになりました。
これは、WHOによる健康の定義が起源になりますが、徐々に「メンタルヘルス」の考え方が流行り出すようになりました。
はじめは心理学の分野ではありましたが、心理学と掛け合わせて、
- ポジティブヘルス
- ポジティブサイコロジー
- ウェルビーイング
- 認知行動療法
このような学問も出てきて、1990年代より、ポジティブ感情を科学することがこの分野の流行りになってきています。
その多くが、ポジティブ感情が体にも良い影響を与えるというもの。
なんとなく想像できることとは思いますが、それが科学的に証明されるようになったのです。
一方で近年は、ネガティブ感情こそ人の健康に良い影響を与える!と豪語する研究者も現れ、ポジティブ派・ネガティブ派でそれぞれ研究が発展しています。
ポジティブとは?ネガティブとは?
ということは結局どっちなの?と思いますよね。
それをお話しする前に、まず押さえておくべきなのは、ポジティブとは?ネガティブとは?それぞれの特性についてです。
それぞれの定義は文献によってさまざまではありますが、ここでは、
- ポジティブ=楽観主義
- ネガティブ=悲観主義
で統一することにしましょう。
物事をネガティブにとらえる、つまり悲観的であるということは、
「五分五分のことでも悪い方向に考える」ということ。
よくある例えが、コップ半分の水に対して、「半分もある」と感じる人が楽観的。
逆に「半分しかない」と感じる人が悲観的な人です。
また、テストで80点とったことに対しては、「80点もとれた」と感じる人が楽観的。
取れなかった20点にこだわる人が悲観的な人です。
悲観的つまりネガティブに考えると、その後のことが良いイメージにつながりません。
良いイメージが湧かないということは、未来に希望を抱けないということです。
人は何かしらの“達成できる(=希望の持てる)”目標に向かってがんばるものです。
だから、ポジティブな人は、
- リスクを負って未来に投資してみる
- 思い切って大胆な行動を取ってみる
傾向が強く、反対にネガティブな人は、
- 過去のことにいつまでもすがる(過去の武勇伝をいつまでも語る)
- 結果が計算できることにだけ挑戦する
- 未来ではなく今楽しむことが優先
といったように、目の前のことに流されがちになります。
一言でいうと“ディフェンシブ”な生き方ですよね。
ネガティブ傾向の強い日本人
日本人はこのタイプが非常に多いように感じます。
毎日同じルーティンなら傷つかずに済むため、そのルーティンの中で小さな楽しみを取り入れる。
公の場に出たり、イレギュラーなことに対して先陣をきれないのは、叩かれるのが怖いから。
「みんなと一緒」がこんなに正義なのは日本特有ではないでしょうか。
特に「イレギュラー」に対してとても厳しいと思います。
少しでも列を乱す人に対してとても冷たいですよね。
それは自分の大事にしているルーティンが侵されるからで、よく言うと「堅実」です。
もちろん、「ネガティブ」も必要なことですし、ポジティブな人ばかり集まっても良い成果にはつながらないと思います。
ネガティブの悪い未来を予測する能力は、リスク回避という点においては最大の武器です。
つまりどちらも特性の違いなだけで、どっちがいいとか悪いとかいうことはありません。
ネガティブな人の恋愛傾向
ネガティブな人の恋愛で典型的なのが次のような傾向です。
あくまで傾向ですので、マイナスな要素が多いのはご勘弁ください。
- がんばってアプローチしても無駄だと思えてしまう(最初から諦めている)
- 失恋で心が折れてしまう(これで自殺してしまう例もあるほど)
- 早く結果を出そうと焦りすぎる(過剰なアプローチ)
- 好きな人に対して依存しすぎる(束縛しすぎる)
- 相手の気持ちを悪いふうにとらえたり疑う
基本的にネガティブな心理は悪いほうへ作用して、悪循環を繰り返します。
もちろん相手によっては、このような性格の人を好む方もいます。
念をおしますが、ネガティブが一概に悪いというわけではありません。
このように、ポジティブ・ネガティブとそれぞれ特性が異なるということです。
そしてそれは健康とも関連があることがわかっています。
前置きが長くなりましたが、ここからポジティブ・ネガティブの代表的な研究をご紹介します。
まずは最新の研究から、「ネガティブ派」の研究結果をご紹介しましょう。
ネガティブ派の研究
ネガティブ派の研究は、前述しましたとおり近年増えてきました。
代表的なものがこちらです。
- ネガティブな人の行動はそれが必ずしも悪い結果となって現れるわけではない
- ポジティブよりもネガティブの方が長生き
- ネガティブの死亡リスクが高まる傾向は65歳以上
- 励ましはネガティブ派のやる気をそいでしまう
- 不安を感じる時間がネガティブな人のやる気を引き起こす
- ポジティブな創造は何かを達成しようとする場合の妨げになる
このようにネガティブな感情はプラスに働く場合も多いことがわかってきました。
ネガティブな人の行動はそれが必ずしも悪い結果となって現れるわけではない
ネガティブな人は、確かに不安を抱え、期待を低くして作業をする傾向があるが、それが必ずしも悪い結果となって現れるわけではないというもの。
早い段階で悲観的な見方をするからこそ、それが良い結果につながることがわかってきたのです。
マイナス思考は、不安な感情を上手く行動に転化していたという考察です。
ネガティブな人は、日頃から最悪のシナリオを思い描いている事で、準備を怠らず、より奮起してがんばることが多いのだそうです。
ポジティブよりもネガティブの方が長生き
ネガティブなほうがより注意深く生きるようになり、健康や安全面に対する注意が高まるとの見解です。
また、ネガティブな感情は高血圧に直結します。
例えば悲しいとき・怒ったときに感情を表に出さない人よりも、すぐに表現する短気な人のほうが寿命が長いこともわかっています。
負の感情は発散したほうが良いということですね。
ネガティブの死亡リスクが高まる傾向は65歳以上
研究によると、年齢によっても、ポジティブ・ネガティブが身体に与える影響は変わるとのこと。
また、給料が高い人の方がより身体に障害が生じるリスクが高いこともわかりました。
励ましはネガティブ派のやる気をそいでしまう
試験前に励ましの言葉をかけられることで、ポジティブグループの試験結果は14%向上しました。
一方、ネガティブグループは励ましの言葉がプレッシャーとなり、29%も得点が下がってしまったのです。
一見ポジティブな行動のように思える「励まし」もマイナスに働く場合があるという研究結果でした。
不安を感じる時間がネガティブな人のやる気を引き起こす
不安ごとの前に気を紛らわす行動は一見ポジティブに見えます。
でも、テスト(不安ごと)に挑むにあたり、気を紛らわす目的で関係のないアンケートを実施したところ、ネガティブグループはテストの結果が約25%も悪い結果となってしまいました。
「○○のテストを受ける」というような決まっている不安ごとなら、それが不安なことでも、気を紛らわさないほうがやる気を引き起こすことがわかったのです。
ちなみにポジティブグループでは特に良い結果を得ることはなありませんでした。
ポジティブな創造は何かを達成しようとする場合の妨げになる
人が「絶対成し遂げる!」とポジティブに断言したことは、上手くいかないことの方が多いそうです。
逆に「やれるかな?」とネガティブに不安を抱え悩みながら決断する時のほうが上手くいく傾向が強いとのことです。
わかりやすい例が、ダイエットとかわかりきっている片思いとか、「理念」止まりの企業目標とか。。。
断言するのは恰好良く見えますし本人も気分が良いものです。
でも、断言するだけで簡単に願いごとが叶うものではないということですね。
もちろんそこに、大きな援助とち密な戦略があれば別ですが。
このように、ネガティブ研究は「不安」がプラスに働く場合について強調している印象です。
では、ポジティブ派の研究もみてみましょう。
ポジティブ派の研究
ポジティブ感情がプラスに働くという研究は、前述のとおり、この分野における主流でした。
近年はこどもの教育方法へも言及されるようになり、例えば最近は「なんでも褒めて伸ばす」ことが当たり前ですよね。
こちらは、さんざん研究され尽くされていて、詳しいご説明は「想像どおり」というものがほとんどですので、詳しい実験結果は割愛しますね。
- ポジティブ感情を経験することが創造的な思考活動や学習機会を増加させる
- 人々の思考や行動の幅を広げ、さまざまなポジティブな資源手に入れることを可能にする
- ポジティブな資源は、さらにポジティブ感情や出来事につながるというように上向きの螺旋を生み出し、結果ウェル・ビーイングや健康増進につながる
- ネガティブ感情による嫌な気分や上がった心拍・血圧などを素早く元通りにする効果がある
- たとえば笑いや楽観的な気持ちが免疫力を高め、ガンの再発のリスクを減らす
- 不登校の子どもが吉本新喜劇を見に行ったのをきっかけに登校するようになった
- 日記にプラスの記述が多い人ほど長生きをしている傾向があった
- 考え方をポジティブに切り替えることで、やる気が出て、パフォーマンスを上げることができる
笑いの健康効果でも取り上げましたが、ポジティブ感情の代表である「笑い」が免疫力を高め、疾患リスクを減らすことはよく知られています。
ポジティブ感情はネガティブ感情と反対で、基本的に良い循環を生み出す場合が多いです。
このようにみていると悪いことはなさそうなポジティブ感情ですが、それも「程度」があると思います。
そして、人間は生きていれば必ずポジティブ感情もあるしネガティブ感情にも遭遇します。
ちなみにその割合はネガティブ感情のほうが多く、実に7:3。
多くがネガティブ感情なのです。
ここで大事なのが、ポジティブとネガティブを上手に両立することです。
ポジティブとネガティブと両立することが大事
現代を生きる私達が常に直面するのが、さまざまな「ストレス」です。
それは職場や生活の中での人間関係が多くを占めるのではないでしょうか。
一般に、「ストレスには強いほうが良い」とされています。
ストレスは、そのケースによって、ポジティブに考えて切り抜けるかネガティブに考えて切り抜けるかを使い分ける必要があります。
バランスを誤ると、精神的なバランスが崩れてうつになったり、胃腸炎を起こしたりするなど、心身の健康を害してしまいます。
ここまで、ポジティブ派・ネガティブ派双方の研究結果をご紹介してきましたが、「両立が良い」とするものもあります。
それが、「ポジティブ思考だけでなくネガティブ思考も抱く人のほうが健康的」というもの。
ほかにも両者のバランスについて下記のように論じられています。
- ポジティブとネガティブのバランスは半々ぐらいがちょうど良い
- 良い経営者は、世の中を一望するようなポジティブ的視野を持ちながら、目の前の状況を良く把握するネガティブ的視点を併せ持つことが大事
ちなみに、アメリカではポジティブな人のほうが好まれる傾向にあります。
アメリカの経営トップも構造
面白い調査結果があります。
アメリカの大企業の最高経営責任者CEOは、80%もの人々が「かなりポジティブである」ということがわかったというのです。
一方で、最高財務責任者CFOは、ポジティブな人が極端に少なくネガティブな人の方が多いそうです。
CEOのコメントでこんなものもあります。
「我々は悲観論者の人々がいてくれるおかげで最悪の状況を予測してそれに備えることができるのです」
つまり、組織にはポジティブ・ネガティブ両方の特性を持った人が居たほうが良いということですね。
もちろん、個人がバランスよくそれらを使いわけることが一番です。
ネガティブ・ポジティブのコントロール
ネガティブ感情をポジティブに変化させるコツは、ネガティブ感情を正しく認識して、どんな行動の変化がその感情を軽減できるか突き止めることです。
ネガティブ感情を認識する代表的な方法が、よく学校でやったことがあるかもしれません。
自分(や友達)の欠点を書き出してそれを長所に書き直すというもの。
例えば、
- 頑固→意志が強い
- 飽きっぽい→興味の幅が広い
- 緊張感がない→リラックスしている
- 八方美人→誰に対してもフレンドリー
- 無鉄砲→行動力がある
- 不愛想→媚びを売らない
- 変わっている→個性的
このように、ネガティブな要素はプラスに変えることが容易です。
ぜひ試してみましょう。
では最後に、ネガティブ感情で気を付けたいことを付け加えます。
ネガティブ感情で気を付けたいこと
バランスが大事と申し上げましたが、極端なネガティブはいいことが全くありません。
「悲しみ」や「怒り」や「不安」な気持ちは、この状態が長く続くのは良くありません。
負の感情は体の不調につながる場合が多く、いわゆる“こころの病”の疑いが出てきます。
ちなみに、ネガティブ感情は2週間続いたら危険信号。
そのような場合は、心療内科などの専門家の受診をおすすめします。
また、「悲しみ」「怒り」「不安」などのネガティブ感情は、血圧を上げたり心拍数を増加させます。
こちらは特に説明が不要かとは思いますが、負の感情は「頭に血がのぼる」と比喩されるほど、血流量が増えます。
このメカニズムは自律神経系の作用のことです。
例えば、「怒る」ということは脳が興奮状態にあるということで、交感神経が働きます。
そうすると、脳に酸素を供給するために心拍を増やし、心臓が送り出す血液量が増え、血管が収縮することで血圧が上昇するのです。
「イライラしていると血管が切れちゃう」というのも、そういうことです。
このような負の感情が引き金となって脳出血を起こす人も後を絶ちません。
おわりに
ここまで長く読んでいただきありがとうございました。
ポジティブ・ネガティブ論争はまだまだ序の口ですが、双方どんな研究があるか、またバランスが大事ですよねということ、ご理解いただけましたでしょうか。
私は割とポジティブ傾向が強く、「皆と同じ」よりも、自分への将来の投資をどーんとしてしまうタイプです。
コツコツ身に着けた学は、あとからついてくるもんだと楽観的に思っている傾向にあります。
でもきっと、同時にもっと緻密に計画を立てながら生きてきたらもっと違う人生だったのだろうとも最近思います。
それが最後にお伝えした「バランス」というやつですね。
自分の中に両方の感情や思考を身に着ける訓練もできますが、でもそれがなくとも、ポジティブなら近くにネガティブな人がいたらバランスが良く物事を決められると思いますし、逆もそうだと思います。
何か目標を達成しようと思ったら、自分とは真逆の性格の人を相棒にするのが成功のカギかもしれませんね。
結局どっちがいいとかいう結論には至りませんでしたが、今回の記事も「楽しく」読んでいただけたのならそれでいいかなと思います。
では。
コメントを残す