2016年今シーズン、インフルエンザ、マイコプラズマ肺炎と並んで流行が顕著なのがRSウイルス感染症。
お子さんが保育園や幼稚園に通われている方は、特に今年耳にすることが多い感染症ではないでしょうか。
国立感染症研究所でも、「注意すべき感染症」情報に、今月RSウイルスが取り上げられました。
ここでは、そんなRSウイルス感染症の基本知識と予防・対処法について紹介していきます。
RSウイルス感染症とは
RSウイルス感染症とは、「Respiratory syncytial virus(RSV)」が病原体である急性呼吸器感染症のことです。
年齢を問わず感染しますが、特に乳幼児に多くみられる特徴があります。
乳幼児は、生後数週間から生後数週から数か月の期間発症すると症状が重症化しやすく注意したい感染症です。
潜伏期は2〜8日で、だいたい1~2週間で回復していきます。
そしてRSウイルス感染症の特徴は、生後1歳までに50%以上、2歳までにほぼ100%の人が感染する病気だということです。
100%とは驚いてしまいますよね。
でも、感染しても、RSウイルス感染症とは気づかないくらい軽い場合もあり、症状の出方は人それぞれです。
主な症状の特徴は4つ
症状の出方の特徴はこのような場合が多いです。
- 初めて感染したときは、発熱・鼻水の症状からはじまります。
- 熱は、乳幼児の場合38~39度くらいまで上がり、咳が続きます。
- そのうち約20〜30%の人が気管支炎や肺炎などの症状が出てきます。
- 急性細気管支炎に発展している場合、呼吸困難の症状もでます。
急性細気管支炎では、ゼイゼイ・ヒューヒューといった呼吸状態が特徴です。
この時は、チアノーゼ(唇が黒っぽい・顔色がわるい)と、呼吸数(通常1分間に60回近く)に注意しましょう。
重症化した時の症状と合併症の危険
また、呼吸状態から、病院にかかっても喘息と間違われることもあります。
RSウイルス感染症は、そのものによる症状よりも、重症化したときの症状・合併症が怖い感染症です。
知っていてほしい特徴がこのとおり。
- 乳幼児の肺炎の約50%、細気管支炎の約50〜90%はRSウイルス感染症が原因
- 新生児・生後6か月以内、月齢24か月以内の免疫不全児、血流異常を伴う先天性心疾患をもつ・ダウン症児は重症化しやすい
- 慢性呼吸器疾患をもつ高齢者がRSウイルス感染症にかかった場合、肺炎の合併が認められる
- 年長の児・成人の再感染は重症にはなりにくい
- 1 歳以下では、中耳炎の合併がよくみられる
- 生後4週未満の感染は少ないが、罹患した場合、突然死につながる無呼吸が起きやすい
- 高齢者でも、特に長期療養施設内での集団発生が問題になっているのが、RSウイルス感染症が原因の急性の下気道疾患で、重症化する場合もしばしば。
どの年代においても、診断がつきにくいことが問題となっていますが、
特に乳幼児・高齢の特に免疫不全者においては、疑わしい症状が出た場合は重症化しないうちに早めに対処することが重要です。
今年の感染状況
RSウイルス感染症は、季節性のインフルエンザの流行よりも一歩早く、夏頃から始まります。
秋には患者数が急増して、年末をピークに春まで流行が続くことが多いです。
こちらが、国立感染症研究所で発表している10月17日の週までのRSウイルス感染症の報告数の推移です。
感染症の報告数の推移はしばしば「週」であらわされますが、これは「その年の1月からスタートして〇週」という意味。
グラフ中の一番左の点が第1週、つまり1月1日~1月7日までの報告数。
2016年は赤線で一番太い線です。
今年も8月中旬から報告数が増え始めて、9月に入って急増しています。
第42週の報告数を地域別にみると
- 大阪府(579件)
- 東京都(436件)
- 愛知県(330件)
- 埼玉県(310件)
- 福岡県(258件
となっています。
感染経路は飛沫・接触の二種類
感染経路は、感染者の咳・くしゃみによる飛沫感染と、ウイルスがついた手や物を介した接触感染の二種類です。
保育園・幼稚園に通う子供は飛沫感染・接触感染を防ぐのはなかなか難しいため、必然的に報告数が多くなる傾向があります。
また、家族内での感染も多いため、特に家族に上述したハイリスク者(乳幼児・慢性呼吸器疾患をもつ高齢者)がいる場合は念入りな予防が大切です。
感染経路別予防方法
予防方法は、感染経路を断絶するほかありません。
飛沫感染対策は、マスクを着用する・咳エチケットなどで防ぎましょう。
また、感染している人も、ほかの人にうつさないよう人一倍の注意が必要です。
つぎに接触感染対策としては、手洗いや手指衛生の徹底が重要です。
特にRSウイルスは消毒薬に弱い特徴があります。
消毒薬の代表は次亜塩素酸ナトリウム。
乳幼児専用の製品は「ミルトン」が有名ですが、手洗い後の消毒はもちろん、よく触れるおもちゃなども消毒すると良いでしょう。
治療方法は対処療法のみ
RSウイルス感染症に治療方法はありません。
重症化した場合には、酸素投与や輸液・呼吸器管理といった対症療法で、ひどい場合は入院して症状が回復していくのを待ちます。
ワクチンの研究も進められてはいますが、未だ有効を認めたものはありません。
おわりに
RSウイルス感染症は、予防もなかなかしにくい感染症として問題視されています。
こうなったら、かかっても重症化しにくい高い免疫をつくることが重要ですね。
今回は、RSウイルス感染症の特徴と、感染に気をつけなければならないハイリスク者をお伝えしました。
少しでも今シーズンの注意喚起につながればと思います。
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