睡眠不足は大病のもと。
ついつい疎かになりがちな毎日の睡眠ですが、皆さんは十分な休息がとれていますか。
日本人は眠れない・眠りが浅いなどの睡眠に関する問題を軽くみる傾向があります。
でも睡眠の問題は「睡眠障害」、れっきとした病気。
そして睡眠障害は、認知症やうつ病・便秘・循環器疾患など、生活習慣病のリスクを高めるのです。
今回は、睡眠障害がどんな危険信号につながるのかをまとめました。
目次
睡眠障害とは
まずは、そもそも睡眠障害とは何かについて。
睡眠障害とは、睡眠に関して何らかの問題がある状態のことをまとめて呼びます。
そして睡眠障害は最近よく話題になるメンタルヘルスの不調の1つでもあります。
睡眠障害の症状例
睡眠障害の状態でよくいわれているのがこちらです。
- 不眠
- 過眠
- 就寝時の異常感覚
- 睡眠・覚醒リズムの問題
- いびき・無呼吸
- 睡眠中の異常行動
具体的には、
- 寝つきが悪い
- 途中で起きてしまい眠れなくなる
- 朝早く起きてしまう
- 熟睡できない
- 日中の眠気がひどい
- 日中居眠りをしてしまう
- 就寝中や夕方以降などに脚がむずむず・火照る・脚をじっとさせていられない
- 決まった時間に入眠できず、好きな時間に起きられない
- いびきがひどい
- 就寝中呼吸が止まる(いびきが途切れる)
- 寝ぼけ行動する
- 寝言を言う
- 睡眠中に大声・叫び声をあげる
このような症状が頻繁に、または慢性的に続いているようでしたら要注意かもしれません。
睡眠障害の自覚症状は、ざっくりいうと「眠いだけ」で「その程度」と軽視しがちです。
でも、睡眠障害がその後の病気のリスクになるとわかったら、少し考えを改めていただけたらと思います。
睡眠の重要性
いうまでもなく、睡眠は生きるうえでとっても大事です。
睡眠の3大役割はこちら。
- 疲労の回復
- 免疫機能の強化
- 記憶の定着
単に疲れをとるために睡眠が重要なのではないわけです。
人は寝ている間に記憶を定着させる仕事をしています。
日中に学習したり経験して得たことを忘れないように脳に定着させているのです。
つまり、ちゃんと寝ないと覚えたことが定着しないということ。
勉強したことをその後定着させた記憶から呼び起こすためにも、睡眠がとっても重要なのです。
ここで効果的な勉強と睡眠について語りたいところですが、それはまたの機会にします。
睡眠障害による悪影響
では本題。
これらの睡眠障害が引き起こす可能性のある悪い影響はこちら。
- 脳機能の低下
- 循環器機能の低下
- 免疫機能の低下
- 脂質代謝機能の異常
- アルツハイマー型認知症の発症リスクが高まる
- うつ病のリスクが高まる
それぞれ見ていきましょう。
脳機能の低下
詳しいメカニズムは割愛しますが、具体的には、
- 集中力の低下
- 注意力の低下
- 記憶・学習障害
- 感情抑制機能の低下
- 認知・判断機能の低下
- 創造性・論理的思考力の低下
- 意欲の低下
- 自己評価の低下
- 精神性ストレスの蓄積
このような症状や病気につながります。
寝不足での運転が危険だという理由は脳機能の低下が原因になるからです。
また、感情抑制機能の低下は、ちょっとしたことでイライラしやすい状態になったりということがあります。
また、頭がぼーっとして後ろ向きな気持ちが強く出がちで、何もする気が起きなかったり、ネガティブな気持ちにもなりやすい状態になります。
循環器機能の低下
こちらはまさしく、最新の研究結果からも続々と明らかになってる「生活習慣病のリスク」です。
循環器機能とは、血液を身体に送るための血管や臓器などの機能のことです。
具体的には、
- 血圧の上昇
- 虚血性心疾患のリスクが高まる
- 心不全のリスクが高まる
- 脳血管障害のリスクが高まる
このような症状や病気のリスクにつながります。
特に、睡眠時無呼吸症候群の患者さんの場合は、睡眠中に呼吸が止まってしまいます。
そのため、一定の量の酸素がリズムよく脳に送られません。
それが積もり積もって5~10年後に循環器系の病気につながる可能性が高くなるのです。
免疫機能の低下
身体の免疫機能は、身近なことでいうと、風邪をひきにくいとか、病気になりにくいとかいういわば体の強さをさします。
免疫機能が低下するということは、
- ガンになるリスクが高まる
- 感染症にかかるリスクが高まる
- アレルギー性疾患の発症リスクが高まる
と、このように、免疫機能に直接関わりがある病気のリスクが一気にあがってしまいます。
そもそも、本邦でいうヘルスケアの軸は「予防医学」に基づく「免疫力維持・向上」です。
睡眠障害はダイレクトに免疫機能に悪影響を及ぼし、いろいろな病気の原因になってしまうのです。
脂質代謝機能異常
いわゆる肥満のこと。
脂質代謝機能異常は、脂質異常症・高脂血症ともよばれている病気の総称です。
高脂血症はちょっと古い呼び方で、脂質異常症が現在の正式な呼び方。
こちらも生活習慣病の1つで、いわゆるコレステロールと中性脂肪の値が良くない場合に診断される病名です。
わかりやすくいうと、脂質異常症とは、
- 悪玉のLDLコレステロール・中性脂肪が必要以上に増える
- 善玉のHDLコレステロールが減る
このような状態で、健康診断などで血液検査をした時の数値で、基準がこちらの場合は脂質異常ですねといわれます。
出典:日本動脈硬化学会(編):動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012年版 2012日本動脈硬化学会:14,2012よりファイザーが作図
睡眠障害は肥満になりがち。
逆に肥満でお困りの方は睡眠の質を高めることを考えると、自律神経のバランスが良くなって日中の活動力が高まり、身体の不調が改善され、肥満を解消しやすい身体に一歩近づくと思います。
アルツハイマー型認知症発症リスクが高まる
認知症の中でも一番患者が多いのがアルツハイマー型認知症。
- ちょっと前の出来事を忘れてしまう
- 居場所や今日の日付がわからなくなる
- 料理や掃除などの要領が悪くなる
- 言葉につまったりスムーズに話せなくなる
- 怒りっぽくなる
- 被害妄想が強くなる
こういった症状が特徴的です。
睡眠不足の人は、アルツハイマー型認知症の発症リスクが5倍も高くなることがわかっています。
また国立精神神経医療センターの研究では、30分程度の昼寝をすると発症リスクを5分の1にできることも明らかになっています。
2つの研究結果は同時に行われたものではないため、このようなまとめ方は間違っていますが、
睡眠不足続きならば、せめてお昼休みなどに30分寝ると良いかもしれないということでしょうか。
うつ病のリスクが高まる
睡眠障害がうつ病発症のリスクととても深い関係があることはよく知られています。
研究結果からは、
- 睡眠時間が「7時間以上8時間未満」の人はうつの割合が最も低い
- 睡眠時間が「7時間より短く8時間以上」の人はうつの割合が高い
ことがわかっています。
また、質の高い睡眠をとるためには、「早寝早起き」のリズムも重要です。
これは自律神経のバランスをよくするためですが、メカニズムはごちゃごちゃとやかましいので割愛しましょう。
睡眠をしっかりとれている人はうつ病になりにくいということで、逆もまたしかり。
うつ病の治療には睡眠薬を併用する場合が多いですが、睡眠障害を改善することがうつ病の改善にもつながるのです。
どのくらい睡眠をとればいいのか
というわけで、睡眠障害と病気との関連について、睡眠が大事なんだよということをお話ししてきました。
では、具体的には良いといわれている睡眠とは何時間のことで、睡眠に関して気をつけることはあるのでしょうか。
日本人はどのくらい寝ているか
ぶっちゃけ日本人は世界的にも睡眠時間が短い国です。
睡眠が短い国です。
大事なので2回いいました。笑
平成23年の日本人の平均睡眠時間は全年齢で7時間42分。
男女のうちわけは、
- 男性が7時間49分
- 女性が7時間36分
男女ともに45歳~49歳が最も短くなっています。
就労者はもっと寝てない
日本の労働生産性が低いのはここらへんにも起因しているのではないかといっても過言ではないでしょう。
国際比較するとこのようなかんじ。
出典:厚生労働省e-ヘルスネット「睡眠と生活習慣病との深い関係」
特に日本の働く女性は、男性と比べて家事や育児に割く時間が長く、それは睡眠時間を削るほど。
まさに年間をとおして慢性的な寝不足状態にあるといえます。
私も出産後から平日・休日関係なくエンドレス寝不足です。
全年齢をとおして、働き盛りの世代で寝不足が目立ちます。
でもその後身体も衰えてきて、高齢になるほど睡眠障害になりやすくなる。
睡眠障害の予防は、働き盛りほど気を付けなくてはならないということです。
6時間~8時間が理想
睡眠障害は生活習慣病の危険因子です。
睡眠に関する専門家は、研究結果より、「健康に良いのは1晩に6~8時間眠ること」と述べています。
その根拠となる研究の概要がこちらです。
英国・米国・欧州・東アジアの諸国で実施された16の前向きコホート研究から、約138万人の10年間にわたるデータを解析。
11万人以上の死亡と睡眠時間との関連を分析しました。
その結果、
- 睡眠時間が1日6時間に満たない人は早死する確率が12%高くなる
- 睡眠時間が6~8時間の人は早死にするリスクはなかった
ということが明らかになったのです。
また別の研究では、睡眠時間が短い人では肥満・高血圧・高コレステロール・2型糖尿病が多い傾向があることもわかっています。
専門家の見解では、睡眠が直接死亡の原因になるわけではなく、その背後に潜んでいる病気が原因である場合が多いとされています。
その代表が生活習慣病というわけでしょう。
質の高い睡眠のために気を付けること
そして、質の高い睡眠をとるために気を付けることとして、米国睡眠医学会では、下記のチェック項目を推奨しています。
- 起床・就寝時刻を決めて習慣化する
- 日中起きている時間は寝室に近づかないようにする
- 睡眠を妨げるカフェイン・アルコール・煙草を控える
- 休日のまとめ寝は逆効果
- 入眠直前の入浴・軽食・読書などの習慣を見直す
- 寝室を暗く・静かに・少し涼しくして眠りやすい環境を作る
- 寝室に心配事や悩み事をもちこまないようにする
すでによく言われていることですので、今更な方もいらっしゃるかもしれませんが、疎かになっている方はぜひこの機会に見直してみてはいかがでしょうか。
おわりに
今回は睡眠障害と病気の関係について、睡眠の重要性と睡眠障害の基本・どんな病気のリスクがあるかということをまとめました。
育児などで一時的な寝不足はやむを得ないとくくりつつも、慢性的になってしまっている方、高年齢の方は特に睡眠障害になっていないか要チェックです。
睡眠に関わる症状が1か月以上も続いている方は、睡眠障害の可能性があるといわれていますので、他の病気のリスクを高めないためにも、睡眠の状態を改善することが大事です。
近年は睡眠外来も増えてきていて、私はかかったことがありませんが人気のクリニックは予約待ちが1年にもなるほどだとか。
それだけ睡眠で困っている人が多いということですね。
この機会にぜひ睡眠の質を考えてみてはいかがでしょうか。
参考文献
Sleep deprivation directly affects blood sugar levels A Single Night of Partial Sleep Deprivation Induces Insulin Resistance in Multiple Metabolic Pathways in Healthy Subjects Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism
Short sleep increases risk of death and over-long sleep can indicate serious illness Sleep Duration and All-Cause Mortality: A Systematic Review and Meta-Analysis of Prospective Studies SLEEP Volume 33 Issue 05, May 01, 2010, 585-592
コメントを残す