少子高齢化の日本は将来への不安がたくさん。
インフラの問題や人材不足など、それはそれはいろんな課題がありますが、一番危惧されているのが社会保障の問題です。
今回は、社会保障制度とはどういうものか、今少子高齢化だけどどんな影響が出ているか、今後どうなっているのか、改善策はあるのか…こんなこととお話ししようと思います。
目次
社会保障制度とは
私たちは皆、国の社会保障制度の下で生きています。
社会保障制度は、国民の「安心」や生活の「安定」を支える、いわばセーフティネット。
具体的にどんな制度かというと
具体的には、
- 高齢になって働けなくなってからも自動的にお金が入る年金制度
- 病気やケガをした時の医療費を補助してくれる医療保険制度
- 貧困で生活がままならない場合の生活保護制度
などなど…
このような制度を全て社会保障制度と呼び、病気・ケガ、失業、加齢による身体の衰えなどのせいで、最低限の生活すらできない状態にならないように支える制度ことで、私達の生活はそれらの制度でガッチリと守られています。
また、社会保障制度は、社会全体への影響を考えると、さまざまな事情でハンディキャップのある人を手助けすることで、
- 貧富の差を縮める
- 低所得者の生活の安定
- 「自立した個人」だけでは対応できない事態に社会全体で備える
こんなことが実現できるわけです。
社会保障の機能
実現できる3つが、社会保障の主な3つの機能。
先ほどのを言い換えると、
- 生活安定・向上機能
- 所得再分配機能
- 経済安定機能
このようになります。
生活安定・向上機能とは、私達国民の生活を安定させ、かつ向上させる機能を意味します。
具体的には、
- 病気・ケガの時、生活に支障が出ない程度の自己負担で医療を受けられる(医療保険)
- 高齢期には、職がなくとも安定した生活を送ることができる(老齢年金・介護保険)
- 失業した時は、失業手当を受けることができる(雇用保険)
- 仕事でケガや病気になった時は、自己負担ゼロで医療を受けられる(労災保険)
- 子育てや家族が介護を必要としている時に、離職せず職を継続できる(職業と家庭の両立支援策等)
このような制度があります。
日本で生活していたら当たり前のようにあるこれらの制度、そのほかにも、民間の保険会社による医療保険とか、がん保険とか、学資保険とか、まあいろんなリスクを想定した積立金の制度があります。
これらの制度はすべて「安心」して生活するためのもの。
社会保障制度がないと費用は自己負担
これがないと…もしも病気をした時に医療費が高くて治療を受けられないとか、出産のたびに仕事を辞めなくてはならなくなるとか、老後の年金がゼロになるとか…
いろんなリスクとともに生活しなくてはならなくなります。
一般の会社員からフリーランスに転身する時や、新たに夫の扶養に入る時、結婚を機に姓が変わる際の手続きの時など、覚えがある方もいらっしゃるかもしれませんが、
新たに国民健康保険に加入するにあたって、「保険に入っていない期間が1日たりともないように注意する」ことに神経を使ったことはありませんか?
無保険の期間中は、何か起きたら費用は全て自己負担になります。
誰も助けてくれないわけです…
あな恐ろしや…
社会的な影響と考えると、将来の生活への不安から、お金を使わないで貯める、という行動をとります。
すなわち、消費の抑制ということですが、これを皆がやってしまうと、物が売れない・売れないと次の物を作れない・生活も厳しくなる・生活が厳しくなるとまた抑制する…
悪循環です。
社会保障が機能しなくなった例
社会保障が機能しなくなった例としては、ソ連崩壊による社会保障のストップがわかりやすいでしょう。
ソ連は、長い冷戦の後にできた国で、がんばって国を回そうとしてきたものの、いろいろあって持たなくなり崩壊。
崩壊=ソ連がなくなったということで、それまでが維持してきた(かのようにみえた)社会保障制度がなくなったわけです。
するとどんな影響があったかというと…
- 年間で推定約320万人の死者が増えた(通常は170万人前後)
- 男性の平均寿命が、1986年から1994年までで64.8歳から57.6歳まで短くなった
- 腎臓を患い人工透析が必須の患者は、社会保障の不調後2ヶ月前後でほぼ全員が亡くなった
- 高血圧や糖尿病など、きちんと管理すれば健康な状態を保てる慢性疾患患者も、多くが若くして亡くなった
- 結核や急性腸炎など、適切な処置をすれば死なない感染症でも死者が出た
- 8歳以下への小児医療が行き届かず、小児の死亡が増えた
こんな悲惨な状況になったのです。
非常にクリアなのが、出生数と死亡数の逆転。
出典:みんなの介護ウェブページ内/ロシアの人口動態最高サーベイ:雲和広
慢性疾患は一生向き合わなくてはならないものも多いものですが、現代の医療技術があれば、健康に生活することができます。
結核や急性腸炎なんかも、現代では死ぬ病ではないのです。
衛生環境が整っていれば子供の死亡も増えません。
このように、社会保障の機能がストップして、保健衛生が行き届かなくなると、一番に被害が及ぶのは子供や疾患を抱える人など、いわゆる社会的弱者です。
ソ連の数値を日本に当てはめると
ソ連を例にあげましたが、日本で同じことが起こるとどうなるでしょうか。
こんな計算もされていまそた。
- 急性期医療や慢性疾患への医療が行き届かなくなり、110万人前後が亡くなる
- 生活が困窮し、年金生活者が毎年20万人から35万人ほどのペースで死亡数を増やす
ソ連と同様、糖尿妙や高血圧などの慢性疾患の患者さんは、医薬品が届かなくなることは死を意味します。
高額な人工透析も、保健医療制度があったから自己負担できる範囲内で治療ができました。
でも保健医療制度が麻痺する、つまり高額の医療費を自費で支払わなくてはならないとなると、それは同じく死を意味しますよね。
その状況は日本でも容易に想定されるわけです。
日本の少子高齢化と社会保障
今が絶頂の少子高齢化である日本。
先40年ほどはこの人口構図が続くため、それによるいろんな問題と向き合う必要があります。
1.3人で1人を支える未来
2017年の4月、NHKの解説記事でこんなのがありました。
出典:NHK 解説委員室「超少子高齢化 求められる社会保障は」(時論公論)
2015年は2.3人の働き手で1人の高齢者を支える構図。
それが、このままいくと2065年には、1.3人で1人の高齢者を支えなくてはならなくなる。
支えるとは具体的にどういうことでしょうか。
日本の社会保障制度の1つに公的年金制度があります。
年金には、厚生年金、国民年金、共済年金と、働き方によって3種類の年金があります。
20歳を過ぎると必ずいずれかの年金に加入し、国に決まった額のお金(保険料)を定期的に支払わなくてはなりません。
それらの働く人から集めた年金を、受け取ることで、引退した世代の人達が生活しているのです。
よく勘違いしがちなのが、納めた(国に支払った)年金は、将来自分の元に返ってくるいわば積立金との思い込み。
繰り返しますが、年金制度は、現役世代が収めた保険料をその時の受給者への支払いにあてる制度です。
先ほどの、現役の負担という話しに戻ると、2015年は、1人の高齢者が働かずに生活するためには、働く人2.3人分の年金が必要ということ。
2065年になると、1人の高齢者の生活のためには、働く人1.3人がその生活分の年金を負担しなくてはならないということです。
これが、現役世代の負担が大きくなるということ。
単純な解決策は、
- 現役世代の年金を増やす
- 受け取る年金の額を減らす
これしかありませんよね。
つまり、今現在現役で働いている人たちは、納める年金も増えるわ、将来自分が年金を受け取る側になれば、果たして受け取れるのか?!という疑問すら湧く事態なのです。
現在行われている解決策
正直なところ、現時点で「これしかない!」という革命的な解決策は見いだせていません。
現在までに進めていることといえば、医療・介護の分野ではたとえば、
- 都市部での医療・介護の需要が増えるものの受け皿が不足しているため、在宅医療・在宅介護を強く推す
- 在宅医療・在宅介護ができる医師・看護師を増やす
こんなかんじで、いわゆる「在宅への移行」をゴリ押ししています。
具体的にどんなゴリ押しがあるかというと、たとえば終末期の患者さんを入院させない、病院で看取らないということです。
病院の体制が、「単なる療養のための入院はやってません」「治療をせず看取りのためだけの入院はお断り」となっているのです。
受け入れますよ~との表面上のWelcomeはあっても、実際はいろんな条件をクリアしないとダメだったりします。
また、そもそも、がんの終末期に対応している緩和ケア病棟がある病院が少ない点も難点です。
介護施設についても、民間の施設は除き、これ以上数を増やさない方針になっています。
そんなわけで、在宅への移行というのが表面上政府のゴリ押しで進んではいます。
でも、在宅療養をしっかりとサポートできる技術を持つ医師や看護師が少なく、在宅医療・在宅介護が、家族や本人の負担が少なく実現できているケースというのは、まだまだ多くないのが現状です。
そのほか、高齢者の病院での医療費の負担額を増やすとか、高齢化による影響も地域差があるため、都道府県ごとに病院の体制や介護の計画などの対応ができるように、これまで国が行っていた一部財源の管理を都道府県に移そうとか、こういった策が議論され、あるいは実行されています。
「高齢期に夫婦2人で持ち家で暮らす」時代は終わった
そもそも、今の社会保障制度自体が古いものなのです。
「高齢期には夫婦2人で持ち家で暮らす世帯」が多かった時代に作られたものですからね!
でも今は、持ち家がない・未婚率も高い時代。
このままこの制度を放置すると、
- 年金が減る
- 持家のない人が年金から家賃を負担するだけの余裕なし
- 一人暮らしの増加で家族の支えもない人が増える
流れが目に見えていて、生活保護を受けないと生活できない人が大勢うまれてしまいます。
だからこそ、早々に「抜本的な改革」が必要なのですが、もう今更なのにまだ議論が続いている状態…
もう自分のことは自分で、社会保障などあてにしない生き方をしている人が一番の勝ち組なんじゃないかと私は思います。
こんなかんじなのが、今の日本の社会保障の現状です。
2025年問題は序の口
団塊の世代がみんな75歳以上になる2025年問題が第一波的に騒がれていますが、全然序の口。
団塊ジュニア世代(今の40代)が高齢期に入る2030年代後半からがもっと厳しくなります。
高齢者の数は2042年にピークを迎え、その後減っていきますが、団塊ジュニアが引退したら、働く世代が一気に少なくなるのです。
ちょうど今の10代・20代・30代がドンピシャでしょうか。
特に、就職氷河期のころ社会人になった今の30代は、やむを得ず非正規で働き始めた人も多いですよね。
非正規雇用の場合は、収入が少ないため、将来の総所得が低くなってしまいがちです。
そんな人の見込み人数が上の世代より多くいると言われているのです。
そんな状態の労働者が、引退した人たちを支えるなんて、もう無理ですよね。
まあ間違いなく、このままいくと日本の社会保障制度は崩壊でしょう…
おわりに
今回は、日本の社会保障制度について、いまいちピーンときていない若い世代に向けて、なるべくシンプルに、どんな制度になっていてどんな問題があるのかをお話ししてみました。
私もどん底の30代。
自分で生きる力を今のうちに養う必要がありそうです。
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