春に注意すべき食中毒は自然毒!気をつけたい食材と、食べる際の注意点

東京で桜が咲き始めたというニュースがありましたが、すっかり暖かくなり、お花見も楽しい季節ですね。

お花見のほかにも、行楽には山菜採りなどもありますが、毎年のように「山菜と間違えて毒のある植物を食べてしまった」というニュースが流れます。

みなさまも、一度や二度は聞いたことがあるのではないでしょうか。

山菜や食用の野草の中には、見た目がよく似た有毒植物が存在するものもあります。

楽しいイベントで食中毒の被害にあわないためには、どういった注意が必要なのでしょうか?

今回は、これからの季節に注意すべき食中毒をピックアップして紹介します。

2017年春に起きた食中毒

今回のテーマは「食中毒」ですが、春は他の時期と比べると、食中毒が少ない季節です。

気温と湿度が高くなる夏に食中毒が多くなるのは、みなさまがイメージされる通りですし、冬にはノロウイルスによる食中毒が多くなるため、春と秋は発生件数が少なめの傾向にあります。

以下は、2015年と2016年の食中毒発生件数のグラフです。夏と冬に増えているのがお分かりいただけると思います。

【出典】厚生労働2017年5月号 厚生労働 案内|厚生労働省

とはいえ、春にも食中毒には注意が必要です。

2017年の4月から5月に実際にあった食中毒の中から、特に多かったものについて説明します。

カンピロバクターによる食中毒

「カンピロバクター」は、鳥や牛、豚などの動物の腸内に存在する細菌です。

加熱が不十分な肉料理、特に鶏肉や、レバーなどのホルモンが原因になることが多いと言われています。

また、お家で飼っているペットの世話なども、カンピロバクターによる食中毒の原因です。

毎年4~5月から多くなる食中毒で、8月の夏のシーズンまで流行します。

症状は腹痛、下痢、発熱という「よくある症状」なのですが、菌の潜伏期間が2日から7日とやや長く、原因を判断しにくいのが厄介です。

たとえばお腹が痛くなった時に「昨夜の刺身が悪かったかな?」とは思えても「一週間前に食べた鳥のたたきが原因かも?」とはなかなか思えませんよね。

単にお腹の調子が悪いだけだと思って下痢止めなどを使うと、菌が体内にとどまってしまい、余計に症状が悪化することもあります。これからの時期は、十分に注意したいですね。

カンピロバクターは熱に弱い菌ですので、肉や内臓はしっかりと火を通すことが大切です。

また、肉を調理した器具や手はしっかり洗うこと。料理だけではなく、ペットの世話をした後にも、きちんと手を洗いましょう。

自然毒による食中毒

自然毒による食中毒は、細菌やウイルスを原因とする食中毒とは異なり、春と秋に多くなることで知られています。

春には毒のある野草、秋には毒キノコを、食べられる種類と間違えて食べてしまったという例が多いのです。

自然毒に対しては、一般的に知られている食中毒予防の「加熱」や「清潔」はほとんど意味がありません。

自然毒の中には加熱調理によって分解されて無害になるものもありますが、食中毒の原因になる自然毒は、加熱しても壊れないものが多いです。

たとえば、年間を通して見られるフグの毒による食中毒。「テトロドトキシン」という名前は、一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。

テトロドトキシンは、300℃にまで加熱しても分解されず、毒性を保ったままです。

「よく火を通す」というレベルでは予防できないということがお分かりいただけるかと思います。

食中毒の原因となる主な自然毒

※画像はトリカブト

食中毒の原因になる自然毒は、大きく「動物性」「植物性」に大別できます。

たとえば、先に例として挙げたフグは「動物性」、野草は「植物性」です。

キノコは厳密には菌類なのですが、一般的には野菜などの仲間として認識されており、厚生労働省でも「植物性」として分類しているため、当サイトでもそれにならいます。

動物性自然毒の例

動物性の自然毒で食中毒の原因になるものは、ほとんどが魚介類です。

陸上の生物でも毒を持った動物は多くいますが、サソリや毒ヘビなどは食材として使われることがほとんどありませんので、動物性自然毒の食中毒といえば魚や貝類の毒といっても過言ではありません。

代表的なものは、以下の通りです。

フグ毒

毎年20件から30件前後の食中毒を引き起こす原因です。

フグは前述の通りテトロドトキシンという毒を持つため、フグの調理のためには、調理者と調理施設に、都道府県が定める免許や資格が必要です。

シガテラ毒

近年ではイシガキダイによる食中毒が発生しています。

パリトキシンおよび関連毒

発生件数は少ないですが、アオブダイやハコフグによる食中毒が発生しています。

ビタミンA

意外に思われるかもしれませんが、ビタミンAは食中毒の原因としても挙げられています。

魚の種類によっては、肝臓にビタミンAを高濃度で含んでいるため、過剰摂取を招く危険性があるのです。

肝臓が食用禁止に指定されているイシナギの場合は、肝臓を5gから10g食べると中毒の恐れがあります。

二枚貝の毒

貝類の毒では「麻痺性貝毒」と「下痢性貝毒」が比較的多いです。

いずれも貝が元々毒を持つのではなく、貝のえさになるプランクトンの中に有毒なものが混じってしまった場合に起きます。

国内で一般流通される貝の場合、有毒なプランクトンの発生と、主な貝類の毒性値が調べられています。

規制値を超えたものは出荷規制されますので、市販の貝類は安全です。

ツブガイの毒

いわゆる「ツブガイ」には有毒な部分があるため、調理の時に取り除く必要があります。

「ツブの脂を食べると酔う」という言われ方をしますが、正確には唾液腺にテトラミンという毒が含まれているのです。

毒性は高くありませんが、注意が必要です。

巻貝が持つフグ毒

近年ではキンシバイ(※植物ではなく貝のキンシバイ)による食中毒が起きています。

植物性自然毒の例

植物性の自然毒は、キノコ類と高等植物に分けられます。(※ここで言う「高等植物」とは生物学的な分類です)

それぞれの代表的なものは、以下の通りです。

キノコ類

ツキヨタケ

国内におけるキノコの食中毒で最も多いのがツキヨタケです。

その名の通り、暗闇ではかすかに光る性質があります。ムキタケ、ヒラタケ、シイタケとよく似ているため、間違えられることが多いです。

クサウラベニタケ

ツキヨタケに次いで食中毒の件数が多いキノコです。

イッポンシメジ科のキノコで、地域によっては「いっぽんしめじ」とも呼びますが、ホンシメジやハタケシメジに間違われることがあります。

スギヒラタケ

毒キノコの一種ですが、2004年以前は食用キノコとして東北地方や北陸地方で食べられていました。

しかし2004年の秋に、腎機能障害を持つ方が食べて急性脳症を発症するという事例が複数件報告され、調べたところスギヒラタケが原因という疑いが強くなったのです。

同年中、腎機能障害を持たない方も含めて59名の発症が確認され、うち17名が死亡。

現在でも原因となる成分などについては研究中ですが、農林水産省ではスギヒラタケを食べないよう呼びかけています。

【出典】スギヒラタケは食べないで!:農林水産省

高等植物

ジャガイモ

普段の食事でもよく見かけるジャガイモですが、ジャガイモの芽や、光が当たって緑色になった皮などには「ソラニン」という毒が発生します。

小学校などで、育てたジャガイモが集団食中毒の原因になることがあるため、件数に対する被害者の数が多いです。

トリカブト

推理小説やドラマなどで見聞きしたことがある方も多い有毒植物ではないでしょうか。

アコニチン」という毒を含んでおり、重篤になりやすい危険な植物として知られています。

食用のニリンソウやモミジガサに似ており、特にニリンソウは葉だけで区別するのは難しいです。

山菜採りの際に間違えて採集して食べてしまうという事例があります。

スイセン

スイセンの花は観賞用として育てられることもよくありますが、実は「リコリン」という毒を含む有毒植物のひとつ。

スイセンの場合は葉がニラとよく似ているため、間違えて食べてしまうという事例があります。

ベニバナインゲン

一般的に「白インゲン豆」として流通している豆で、通常の調理方法では加熱によって有毒成分の「レクチン」が分解されるため、食用として用いられます。

しかし、2006年5月にテレビ番組で「白インゲン豆ダイエット法」として紹介した際、十分な加熱ができない可能性がある調理法を紹介したことで、全国で健康被害が発生しました。

厚生労働省が発表した被害者数は158人ですが、番組には650件以上の苦情が殺到したとのことです。

白インゲン豆は、水に十分漬けてから沸騰状態まで煮ることで、有毒成分を分解できます。上手に調理して、美味しくいただきましょう。

春に注意すべき植物性自然毒

※画像はスイセン

春に起きる自然毒による食中毒は、山菜や野菜などと間違われて食べられるものが多いです。

先ほど紹介した、ニリンソウやモミジガサとトリカブトを間違えた事例は、山菜採りが行われる時期に多い食中毒です。

他にも、セリと有毒なドクゼリ(オオゼリ)を間違えて採取したり、フキノトウと有毒なハシリドコロを間違えたりする事例があります。

野菜に似た植物では、ニラとスイセンを間違えるのは、植物性自然毒の中でも発生件数が比較的多い事例です。

【出典】自然毒のリスクプロファイル |厚生労働省

食中毒を防ぐには、食べないことが第一

 

自然毒の中には、白インゲン豆のように「加熱すれば問題ない」というものもありますが、食中毒の原因となる自然毒は、加熱しても分解されないものが多いです。

そのため、調理の方法によって食中毒を防げるのはごく一部に限られています。

つまり、食中毒を防ぐためには「食べない」ことが何よりも大切です。

たとえば山菜採りなら、間違えて採ってしまわないように、植物に詳しい方と一緒に行くこと。

ニラと間違われることがあるスイセンの葉の場合、においで違いが分かります。

ニラはニンニクと同じような独特のにおいがありますが、スイセンの葉にはそれがありませんので区別ができるのです。

そして、一番安全なのは「買った物を食べること」……当然と言えば当然の話です。

買ってきたものなら100%安全というわけではありませんが、流通させるためには基準がありますし、プロの目で判断されたものでもありますからね。

家庭菜園や畑の場合、そこに植えたはずのないものが育っていたら、別の場所から種がまぎれていることがありますので、注意しましょう。

まとめ

今回は、春に注意すべき食中毒として、自然毒について説明しました。

まとめると、以下のようになります。

  • 春は食中毒が比較的少ない季節ですが、カンピロバクターや自然毒による食中毒には注意が必要です。
  • 自然毒は「動物性」と「植物性」に分かれます。春は山菜や野菜と間違えて有毒植物を食べるケースが多いです。
  • 食中毒を防ぐには、間違えて食べないことが大切です。山菜は知識のある人と採りに行く、野菜は買った物を食べるなどで予防できます。

食用の山菜や野菜であるという判断ができない場合は、食べないことが何より確実な予防です。

厚生労働省の注意喚起ページも、ぜひ参考にしてみてください。

【参考サイト】有毒植物による食中毒に注意しましょう |厚生労働省

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